獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』Ⅲ章 その1

2023-02-20 01:59:31 | 東村山女性市議転落死事件

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』(教育史料出版会1996年5月)
より、引用しました。
できるだけ多くの人に読んでいただく価値がある本だと思いますので、本の内容を忠実に再現しています。
なお、漢数字などは読みやすいように算用数字に直しました。

なお、乙骨さんにはメールで著書を引用している件をご報告したところ、快諾していただきました。
ありがとうございます。

(目次)
□まえがき
□Ⅰ章 怪死のミステリー
□Ⅱ章 疑惑への道のり
■Ⅲ章 対立の構図
□Ⅳ章 たたかいの軌跡
□Ⅴ章 真相を明らかにすることは民主主義を守ること
□あとがき


Ⅲ章 対立の構図


朝木明代市議が学会問題に取り組んだ契機と背景


◆女性蔑視の暴言
「なんだ、女のくせに」
朝木さんが創価学会・公明問題に取り組むようになったのは、この女性を蔑視した心ない暴言をきっかけとしている。
1992年(平成4)6月30日、朝木さんは、東京・府中市の自治会館で開かれた「多摩川流域下水道北多摩第一幹線対策協議会」の総会に、理事として出席した。
「多摩川流域下水道北多摩第一幹線対策協議会」とは、多摩川流域の下水道整備を促進するために作られた組織で、東村山をはじめ、立川、国分寺、府中、小金井、小平の近隣6市の市長、議長、議員で構成されている。「対策協議会」と称するものの、実質の協議はなし。実態は、国や都から下水道建設の補助金を獲得するためのトンネル機関として、国会議員秘書や都議会議員に対するいわば「官々接待」「政官接待」の場と化していた。
6月30日の午後3時から開かれた総会も、総会とは名ばかりで、1時間ほど決算や予算についての形式的な審議を行った後は、地下のレストランで、ウイスキーのボトルまで用意した本格的を飲み会が行われる手はずとなっていた。
こうした「対策協議会」のあり方を批判していた朝木さんは、総会の席上、飲み食いに公費の大半を支出する「協議会」の実態を問題にし、公費のムダ使いをやめるよう要求した。その際、公明党の大賀昭彦小金井市議から、「なんだ、女のくせに」との暴言を浴びせられたのである。
そのときの模様を、92年7月15日付『東村山市民新聞』第35号は、
「こんな人物が議員? 発言妨害・女性蔑視はお構いなし そこのけ公明議員だゾ ただ酒、タダメシ、当たり前」
との見出しで、次のように報じている。
「各市から、6万円ずつ出す公費の負担金の大半が、何と、この飲み会と『研修旅行』の一人約6000円の昼食代に消えている。
そこで理事の草の根市民クラブ・朝木明代議員は、この総会で、公費のム夕を徹底的に追及した。
が、ただ酒、タダメシ当たり前の小金井の公明・大賀昭彦議員は、たまらず、円卓式の会議場の出席者約40名の中で、ただ一人、お経で鍛えた大声で、朝木議員の発言を妨害し続けた。
朝木議員が『静かに』と注意したところ、公明・大賀議員は『なんだ、女のくせに』と、会場全体が息を呑む程、大声で暴言。
人権無視や女性差別も平気、公明党議員の戦前以前のレベル。公明支持者も驚き」
不可解な転落死のちょうど2カ月前に当たる95年7月1日、朝木さんは、東京・大田区の区民センターで開かれた、「創価学会による被害者の会」主催の緊急フォーラム「今、宗教法人法を考える」に出席・挨拶したが、その際、創価学会・公明問題に取り組んだ契機と経過について、こう語っている。
「私は、東京の東村山市で市議会議員3期、9年目に入ったところです。8年前、初めて議会に入ってからは、とくにきっかけをつかめなかったことから、創価学会・公明党の問題は議会のなかでは、取り上げにくかったんですが、3年前、ある公の席で、小金井市の市議会議員、大賀議員という議員が、私にむかって『女のくせに、なんだ』と暴言を吐いたことから、創価学会・公明党との全面戦争に入ったわけです。それをきっかけとしまして、東村山市のなかでも、例えば、市民相談係の職員が、創価学会幹部の方であるとか、それから公明党議員の業者癒着の問題であるとか、創価文化会館の池田大作専用施設にまで課税をしないという問題とか、さまざまな観点から創価学会・公明集団の問題を取り上げてきました。議会のなかでそのような活動をする一方で、『東村山市民新聞』という地域のミニコミ紙を通じて、そのような問題を地域の皆さんに知っていただく活動をずっと続けてまいりました」
もっとも、朝木さんは都立武蔵高校を卒業後、創価学会のメインバンクとして知られる三菱銀行に就職していた。それも創価学会の口座を担当する四谷支店に配属されていた。夫の大統さんは、朝木さんの口から、創価学会の金権体質が語られたことを憶えているという。
「外国為替を担当していたということでした。ときどき、『創価学会の口座には考えられないような巨額の金が短期間で入ってくる』とか『海外によく大金を送金していた』『銀行の幹部は創価学会に頭があがらないのよ』などと話していたことを憶えています」
あるいは、メインパンクの創価学会担当セクションで見聞した創価学会の金の流れが、厳しい創価学会認識の原点となっていたのかもしれない。

◆脱会希望者に寄り添う
創価学会・公明に対する「全面戦争」の口火を切ったのは『東村山市民新聞』だった。大賀議員の暴言のあった「多摩川流域下水道北多摩第一幹線対策協議会」の模様を詳報した彙村山市
『東村山市民新聞』第35号で、朝木さんは、創価学会からの脱会を希望する次のような学会員の投書を紹介したのである。
「私は、あることを創価学会関係の人に相談したことがきっかけで、創価学会に入りましたが、3カ月後頃から、紹介者に、やめたいと言ったら、昔、私自身がいじめられっ子だったことをとりあげ、子供も同じ道を歩むぞ! などと言われ3年が過ぎてしまいました。選挙の度に公明党に投票るよう近隣の学会関係の人にいわれ、何度も無理に自宅訪問されたり、集会にでるようしつこく言われ、やめたいと言うと、いやがらせです。育児もあり、髪の毛がぬけてしまいました。学会をやめたいのでぜひ、力を貸して下さい」(連載コラム「議員への手紙から」)
これに対し朝木さんは、
「学会員や公明党議員の中には、平気で人権侵害する人がいます。応接しますので、頑張って!」
とエールを送っている。

同様に、町田市議会の公明党議員が、公費支出の議員旅行で同僚の女性議員と混浴、題となった事件を報じた11月18日付『東村山市民新聞』第38号では、脱会の方法を問い合わせる学会員に対し、朝木さんは次のように呼びかけている。
「学会本部への脱会の手続きは、いくらでもお手伝いします。嫌がらせや人権侵害とは、弁護士と協力して、徹底して闘います。ご心配いりません」
この時期、朝木さんは、脱会を希望する学会員の代理人として、数多くの脱会届を学会本部、秋谷栄之助会長宛に郵送している。脱会を希望するものの、脱会の意思を明らかにすると、地域の学会組織から執拗な嫌がらせや攻撃を受けるため、脱会したくても恐くて脱会できなかった学会員の代理人となって、創価学会との交渉窓口になることを、朝木さんは請け負ったのである。
朝木さんが代理人となって創価学会本部に送った「脱会届」は、次のような文面であった。

「今般、一身上の都合で創価学会を脱会いたします。
以後、接触を希望する場合は、代理人朝木明代に連絡願います。
 〇月〇日          〇×〇夫
 創価学会会長 秋谷栄之助殿」

公称840万世帯、1300万会員という巨大組織のマンパワーが生み出す金と票を武器に、権力を拡大してきた創価学会にとって、もっとも困るのは会員の減少。その会員減少につながる脱会の奨励は、創価学会にとってゆるがせにできない大問題であった。その意味では、当初から、朝木さんは虎の尾を踏んでいたといえよう。

◆「解散勧告書」と「破門通告書」
ではなぜ、朝木さんが脱会を希望する学会員の代理人を務めるようになったのか。そのバックグラウンドには、日蓮正宗と創価学会の深刻な対立抗争があった。
周知のように創価学会は、1991年(平成3)11月7日、日蓮正宗(宗門)から解散を勧告され、同月28日、教義、信仰上の違背と数多くの社会的不正を犯していることを理由に、破門された。
宗教団体や信仰集団において教義違背、すなわち異端信仰は、最大の罪。「カノッサの屈辱」を持ち出すまでもなく、懺悔、悔俊なき場合、破門される例は古今東西を通じて少なくない。その意味では、本尊摸刻(偽造)事件をはじめとするさまざまな教義違背を理由に、日蓮正宗が創価学会を破門したことは決して珍しいことではない。
だが、今回の破門処分で特異なのは、創価学会と公明党が一体となって行った言論出版妨害事件をはじめ、共産党宮本委員長宅盗聴事件、替え玉投票事件などの選挙違反事件、1億7500万円金庫事件やルノワール疑惑など、創価学会が宗教団体にあるまじき違法行為や社会的不正を数多く犯していることを問題視し、創価学会は宗教法人として適格ではないと指摘している点である。
「解散勧告書」ならびに「破門通告書」には、次のようにある。
「創価学会では、かつて言論出版妨害問題や選挙時の替え玉投票事件、また共産党宮本委員長宅盗聴事件や『月刊ペン』事件等、反社会的な行動やスキャンダルなどで、社会から幾多の厳しい指弾を浴びましたが、近年に至っても、なお会員による身代金6億円を要求した本宗住職僧侶誘拐事件、会員である公明党議員たちによるリクルート事件や砂利運搬船汚職事件等の数々の贈収賄事件、1億7000万円入り金庫投棄事件、ルノワールの絵画取引にかかる疑惑、墓地造成にかかる脱税事件や株売買にかかる損失補てん疑惑等、巨額の不正疑惑事件が頻発しております。
創価学会では、これらの疑惑事件等の発覚によって、本宗の信徒団体のあり方から著しくかけ離れた醜い姿を現すとともに、このような金銭問題にまつわる創価学会の実態が、社会から、その公益法人としての資質や責任を、厳しく問われる結果を招いております」(解散勧告書)
「創価学会における、度重なる巨額の金銭不祥事件にまつわる社会的不正・疑惑事件は、創価学会自体が、宗教法人としての資質や責任を厳しく問われる、反社会的実態を露呈したものであります。これは、同時に、本宗の社会的信用に著しく傷を付け、広宣流布への大きな傷害となっております。しかも、毎年行われる財務では、多額の寄付を集めて、実際に本宗信徒の生活を苦しめ、窮地に追いやっている事例も少なくありません。このような創価学会の実態は、本宗信仰の信条はもとより、宗教団体の目的からも著しく逸脱するものであると断じます」(破門通告書)

95年12月8日、宗教法人法改正案が、創価学会の全面支援を受ける新進党を除く与野党の賛成多数で可決成立した。今回の改正の主要なポイントは、以下の3点。
①複数の都道府県で活動する宗教法人の所轄を都道府県知事から文部大臣に移管する。
②財務書類等の提出を義務づけ、信者など利害関係人の閲覧を認める。
③宗教法人法第81条が定める解散事由に該当する疑いのある宗教法人への質問権を所轄庁に与える。
いずれも創価学会にダイレクトに影響する内容だけに、今回の宗教法人法の改正を、創価学会は、“国家権力による宗教弾圧”“創価学会を潰すための自民党の策謀”であるとして、徹底した反対キャンペーンを展開した。
その宗教法人法は、第81条において、宗教法人の法定解散をこう規定している。

「第81条 裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を令ずることができる。
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。
二 第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたってその日的のための行為をしないこと」

95年末に、地下鉄サリン事件をはじめとする凶悪犯罪、違法行為をくり返しでいた宗教法人オウム真理教の法定解散が東京地裁で決定したが、その法的根拠は、この宗教法人法第81条一項の「法令に逮反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」にある。
日蓮正宗が、「解散勧告書」ならびに「破門通告書」で、創価学会の反社会的体質を指弾し、「このような創価学会の実態は、本宗信仰の信条はもとより、宗教団体の目的からも著しく逸脱するものである」と断じたのは、創価学会の法定解散を想定していたからにほかならない。

◆宗教法人資格喪失「通告書」
日蓮正宗は、この破門通告から5カ月後の1992年3月28日、創価学会の宗教法人事務を所轄する東京都の鈴木俊一知事(当時)に対し、創価学会は宗教法人資格を喪失したとの「通知書」を、阿部日顕管長をはじめとする宗教法人日蓮正宗の責任役員名連記のうえで送付している。
当時、東京都知事に対しては、元都議会副議長で都議会公明党の幹事長等を歴任した龍年光氏を中心とする元学会員有志が、創価学会の法定解散を求めて、22万4477人の署名を提出しており、日蓮正宗の「通知書」はその援護射撃の意味をもっていた。「通知書」にはこうある。
「宗教法人『日蓮正宗』といたしまして、宗教法人『創価学会』に関する件について通知いたします。
創価学会は、初め創価教育学会として発足し、その後日蓮正宗の信徒団体となりました。同会は、昭和20年に創価学会として再生し、昭和27年8月27日付をもって、東京都知事より日蓮正宗の信徒団体でありながら宗教法人創価学会として認証され、同年9月8日には宗教法人の設立登記を完了しております。
日蓮正宗は、この創価学会に対し、創価学会が宗教法人設立時に日蓮正宗に約束した、日蓮正宗信徒団体としての必要な三条件を守らず、もはや同会が日蓮正宗の信徒団体として認め難い状況にたちいたりましたので、平成3年11月28日付をもって破門にふしました。この破門により、創価学会は、日蓮正宗とはまったく無関係を団体となりました。
しかも、依然として、創価学会規則第3条には、日蓮正宗の教義に基づき、弘教および儀式行事を行ない」とあります。
これは宗教法人法第2条に定める宗教団体としての構成要件のなかの『ひろめ』るべき『信仰の教義』を欠くこととなり、明らかに宗教法人としての適格性を欠くものでありますから、御承知いただきたく、この点通知いたします。
           以上
平成4年3月28日
    静岡県富士富市上條2057番地
    宗教法人日蓮正宗
     代表役員(管長)阿部日顕
     責任役員(総監)藤本日潤
     責任役員(重役)早瀬日慈
東京都知事 鈴木俊一殿」

この「通知書」に記されているように、創価学会は、認証を受けた宗教法人規則のなかで、宗教法人としての目的を次のように定めている。
「第3条 この法人は、日蓮大聖人御建立の本門戒壇の大御本尊を本尊とし、日蓮正宗の教義に基づき、弘教および儀式行事を行ない、会員の信心の深化、確立をはかり、もってこれを基調とする世界平和の実現と人類文化の向上に貢献することを目的とし、これに必要な公益事業、出版事業および教育文化活動等を行なうものとする」

この規定に明らかなように宗教法人創価学会とは、日蓮正宗の本尊である「本門戒壇の大御本尊」を本尊とし、「日蓮正宗の教義に基づ」いて宗教活動その他を行うことを目的として設立された宗教法人なのである。
だが、破門によって創価学会と日蓮正宗との関係は断絶。創価学会は、日蓮正宗の本尊を拝むことも、日蓮正宗の教義に基づいて活動することもできなくなった。この繕果、創価学会は、宗教法人設立の前提条件を失ったというのが宗門および龍氏らの主張である。
前述のとおり宗教法人法第81条二項は、宗教法人がその規則に定めた「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたってその目的のための行為をしない」場合、法定解散させることができると規定している。破門された創価学会が、この解散事由に当たると見る識者は多い。
「日蓮正宗を護持する信徒団体として、宗教法人資格を得た以上、破門によって宗教法人設立の目的が喪失したと考えるのか妥当。すでに破門から4年以上経過しているのだから、創価学会が、宗教法人法第81条二項の解散事由に該当するのは明白だ」(日大法学部教授北野弘久氏)
こうした事実を背景にして、日蓮正宗は、創価学会の宗教法人事務を所聴する東京都知事に、創価学会は宗教法人としての適格性を欠いたと通知、創価学会の宗教法人資格を早急に見直すべきだと主張したのである。

 


解説
朝木さんは都立武蔵高校を卒業後、創価学会のメインバンクとして知られる三菱銀行に就職していた。それも創価学会の口座を担当する四谷支店に配属されていた。夫の大統さんは、朝木さんの口から、創価学会の金権体質が語られたことを憶えているという。
「外国為替を担当していたということでした。ときどき、『創価学会の口座には考えられないような巨額の金が短期間で入ってくる』とか『海外によく大金を送金していた』『銀行の幹部は創価学会に頭があがらないのよ』などと話していたことを憶えています」
あるいは、メインパンクの創価学会担当セクションで見聞した創価学会の金の流れが、厳しい創価学会認識の原点となっていたのかもしれない。

あるいは、朝木さんがメインパンクの担当セクションで創価学会の金の流れを見聞したことが、「なんとしても『草の根』、朝木を潰せ」ということになった大きな理由の一つかもしれませんね。

私が不思議でならないのは、本来政治浄化を目指して都議選に打って出た公明党だったはずなのに、どうして東村山市の公明党市議たちは、市のだらしない金銭感覚を追及する「草の根」と協力するのではなく、敵対する立場を取ったのかということです。
初期の公明党都議の志から遠く離れて、すでに全国的に公明党議員の与党化が進み、全体的に堕落してしまったということでしょうか。
それとも、「なんとしても『草の根』、朝木を潰せ」という東村山市の特殊な理由があったのでしょうか。
公明党関係者の意見が聞ければうれしいです。
是非、コメントを寄せてください。

獅子風蓮