乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』(教育史料出版会1996年5月)
より、引用しました。
できるだけ多くの人に読んでいただく価値がある本だと思いますので、本の内容を忠実に再現しています。
なお、漢数字などは読みやすいように算用数字に直しました。
なお、乙骨さんにはメールで著書を引用している件をご報告したところ、快諾していただきました。
ありがとうございます。
(目次)
□まえがき
□Ⅰ章 怪死のミステリー
■Ⅱ章 疑惑への道のり
□Ⅲ章 対立の構図
□Ⅳ章 たたかいの軌跡
□Ⅴ章 真相を明らかにすることは民主主義を守ること
□あとがき
(つづき)
「草の根」に対する攻撃の数々
◆襲撃
万引き事件以後、朝木さん、矢野氏をはじめとする「草の根」周辺はにわかに騒然としてくる。暴行、脅迫、放火などの違法かつ異常な攻撃が次々と発生したからである。最初に起こったのは矢野氏に対する暴行事件だった。事件は、万引き事件での送検からわずか4日後の7月16日に起こった。
そのときの状況を矢野氏はこう語る。
「7月16日の午前3時すぎ、草の根の事務所から自宅に帰ろうと自転車で市内を走っていたところ、道路に寝ている男を2人連れの男性が介抱し、道路脇に寄せている現場にさしかかった。酩酊しているのかと思い、停車してようすを見てから、行き過ぎようとしたところ、寝ていた男がいきなり起き上がり、襲いかかってきた。最初は、胸ぐらをつかんで挑発するだけ、抵抗しないと分かると、『サツにちくるなよ』などといい、ヘッドロックしたうえで、顔面や頭を激しく殴りつけてきた。50メートルほど引きずりまわされたが、近くの民家の犬が激しく吠え始めたため、犯人は、私の自転車をたたきつけたうえで、自分の自転車ですばやく逃走した。しかたなく自転車を起こして、自宅に向かって走りはじめ、数百メートル行ったところ、再び、後ろから犯人が現れ、襲ってきた。正直、ゾッとし、急いで逃げようとしたが、体当たりされ、再び暴行を加えられた。2度日は前にも増して激しく殴られ、蹴られしたため、“殺される”と思い、『助けてくれ』と何度も声を出したところ、近くの公園にいた若者のグループが駆けつけてきてくれたので、ようやく助かった。一度ならず二度までも執念深く襲ってきている。酩酊を装いながら、素早く動いたことといい、酔っぱらいを装って待ち伏せていたとしか考えられない」
この事件で矢野氏は、前歯を折るなど、頭部・顔面挫傷で全治2週間のケガを負った。事件当夜、東村山署の当直担当は朝木さんの不可解な転落死のときと同じく須田係長だった。
◆威嚇・待ち伏せ
朝木さんの怪死から20日ほどたった9月21日、矢野氏は、偶然、東村山駅前の飲食店で、仲間5人と酒を飲んでいる暴行犯を発見し、東村山署に110番通報。男は、東村山薯に連行され、取り調べを受けるが、なぜか同署はまもなくこの男を釈放している。
翌日、釈放された男は、「草の根」事務所に現れ、矢野氏を威嚇するように睨みつけている。
さらに10月3日には、仲間数人と矢野氏の自宅前で、矢野氏を待ち伏せるなど異常な行動を見せている。
こうした事態を踏まえて、矢野氏は、東村山署に対し、徹底した捜査と男の身元の開示を要求したが、東村山署はかたくなにこれを拒否している。
ちなみに、この男は市内多摩湖町に住む事件当時十八歳の少年I・S。本人は、以前、創価学会員の友人にすすめられて題目を唱えたことは認めるが、創価学会員ではないと否定している。
未成年ではあるが、被害者が暴行事件の犯人と断定する人物を、警察はなぜ拘束しないのか。
また、その後も野放しにしているのはなぜか。万引き事件という軽微な犯罪を「20日もかけて捜査」する一方で、暴行というより悪質を犯罪を捜査しない東村山署の対応は不自然である。
◆脅迫
矢野氏に対する暴行事件のあった7月16日の翌17日朝には、「草の根」事務所の周辺4カ所に、
「こんな議員をトップ当選させたパカな東村山市民よ早く目を覚ませ市の恥『草の根』をこの街から排除しない限り東村山は全国の笑い者になる 議会の進行を妨害するだけで、何の建設的意見も持たづ(ママ)能力もない『草の根』を即刻、追放しよう」
とのビラが張られている。以後、
7月19日:朝木さんの自転車のブレーキが壊されており、知らずに乗った朝木さんがブロック塀に衝突し、手を負傷。
7月22日:「市の恥『草の根』をこの街から排除しない限り東村山は全国の笑い者になる」
というビラがまかれる。
8月2日:市内を自転車で走っていた矢野市議の前後をトラックが挟み、引きずり回し、事故寸前となる。後ろの軽トラックに乗っていた男が幅寄せし、フラッシュを焚いて威嚇。
この男は、朝木さんの葬儀終了後の9月5日にも矢野氏に対し8月2日と同じょうな威嚇を加えたが、控えていた車のナンバーから、市内在住の創価学会男子部S・Hであることが判明。8月30日に出されていた被害届をもとに、東村山署が9月14日に事情聴取を行っている。この
S・Hが学会員であることを、当初、創価学会は未確認としていたが、9月下旬、西口浩広報室長が正式に学会員であることを認めている。
8月10日:市役所で『草の根』を誹謗するビラがまかれる。
8月19日:直子さんのポケベルに、死を意味するのか、「4444……」という脅迫メッセージが、1日12回も入る。
8月20日:朝木さんの自宅の門柱上に、灯油を染み込ませた新聞紙の入ったコンビニエンスストアーの袋が置かれ、火がつけられていた。東村山署のこの日の当直担当も、須田係長だった。
こうした経緯から朝木さんは、須田係長を「創価学会員では」と疑っている(『週刊新潮』の取材に対し、本人は否定)。
8月26日:「草の根」事務所に黒色火薬とともに「ばく死」と書かれた脅迫状が届く。
8月28日:朝木さんが参加する予定だった高知のシンポジウム主催者の連絡先の携帯電話に、「シンポジウムを中止しろ。このままだったらただですむと思うなよ」との男性の声と、「講師が五体満足で来られると思うなよ」との女性の声の脅迫電話が入る。ちなみに8月21日に高知県下で行われた創価学会の地区部長会では、F副県長が、「ヤイロ鳥のシンポジウムを断固粉砕する」と発言していた。
◆「いつ殺されるかわからない」
こうした脅迫は、朝木さんの死後も相変わらず続いており、矢野市議の暴行犯I・Sが東村山署の取り調べを受けた9月21日には、「草の根」の事務所に次のような脅迫ファックスが送信されてきている。
「矢野聴積、朝木を自殺に追いやったのはお前なのは判っている。小細工ばかりしないで正直に白状しろ。
万引事件で自分たちの『草の根』が傷付いたと、朝木を虐めて精神的に追いやったのはお前だ。
(中略)
お前が本当の意味でたった一つ社会に貢献できることは、お前が死ぬことだ。死ね。
何なら、お前の死を手伝ってやってもいいぞ。
死ね矢野。
東村山を近代社会に進化させる会より」
一連の暴行や悪質な嫌がらせを朝木さんはどのように感じていたのだろうか。
「母は、身の危険を強く感じていたようです。『自分はいつ殺されるかわからない』と口癖のように話していました。ですから、もし、自分が死ぬようなことがあったら、葬式は無宗教で、香典ももらわないように」ともいっていました」(直子さん)
いずれも単純ないたずらとは考えにくい。朝木さんをはじめとする「草の根」を恨む組織的背景が感じられる。だが、東村山署は、こうした背景を考慮せず、事件発生直後から一貫して朝木さんの死を、「事件性は薄い」と見る立場に終始しているのである。
【解説】
この事件で矢野氏は、前歯を折るなど、頭部・顔面挫傷で全治2週間のケガを負った。事件当夜、東村山署の当直担当は朝木さんの不可解な転落死のときと同じく須田係長だった。
まったく酷い事態です。
これでは、東村山警察署の一部の人間(須田係長と千葉副署長)が創価学会の組織と連携して、朝木議員や「草の根」を潰すために暗躍していたと思われてもしかたがありませんね。
獅子風蓮