獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』Ⅰ章 その3

2023-02-03 01:41:00 | 東村山女性市議転落死事件

長井秀和が西東京市市議会議員選挙で当選を果たしました。
その選挙戦の中で、長井秀和は東村山市議転落事件に言及し、それを創価学会は誹謗中傷ととらえ、告訴に踏み切るというきな臭い争いも起きているようです。
私は、長井秀和自身はどうでもいいですが、東村山市議転落事件については真相解明を望むものです。
そのためには、何が問題になっているかを、今一度冷静になって考えるべきだと思います。
基本的な情報を共有するために、いくつかの資料を提示したいと思います。

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』(教育史料出版会1996年5月)
より、引用しました。
著作権上、問題があればすぐに削除する用意がありますが、できるだけ多くの人に読んでいただく価値がある本だと思いますので、本の内容を忠実に再現しています。
なお、漢数字などは読みやすいように算用数字に直しました。

(目次)
□まえがき
■Ⅰ章 怪死のミステリー
□Ⅱ章 疑惑への道のり
□Ⅲ章 対立の構図
□Ⅳ章 たたかいの軌跡
□Ⅴ章 真相を明らかにすることは民主主義を守ること
□あとがき


事件を検証する

◆遺体と対面できず
東村山署の玄関には、朝木さんの長女直子さんが一人でたたずんでいた。95年4月に実施された統一地方選東村山市議会議員選挙に、「草の根」からの出馬を予定していた男性候補が、病気を理由に、突然、出馬を辞退したため、急きょ、立候補して堂々四位当選を果たしたお嬢さんである。
その直子さんが、私を見るなり次のように訴えてきた。
「乙骨さん、警察は自殺だというんです。そんな馬鹿な。母が自殺するなんて絶対にありえません。他殺に決まっています」
東村山署の廊下にはすでに十数人の近親者や支持者が駆けつけており、廊下の一番奥、霊安室の前で朝木さんの夫大統さんと長男巌さん、そして矢野氏がジッと霊安室の方を凝視していた。
遺族、そして関係者に弔意を伝えた後、私は、矢野氏に「遺体との対面は可能ですか」と尋ねた。朝木さんの遺体をこの眼で確認したいとの思いが強かったからだ。すると矢野氏は、苦衷に満ちた顔でこう語った。
「検察官が来て検視をするので、遺体との対面はしばらく待てということです」
以下、矢野氏は、私の問いかけに答えて、
①遺体との対面時に、鶴見刑事課長が遺族に「自殺」と告げるなど、警察は当初から自殺と判断している。
②しかし、履いていた靴がなく、所持していたはずの鍵も見つからないなど不自然かつ疑問点が多い。
③もちろん遺書などなく、事務所の電気はつけっぱなし、ワープロも打ちかけになっており、仕事の途中でちょっと出たという雰囲気だった。
④東村山署では、午前1時すぎには身元を確認していたにもかかわらず、朝木さんが行方不明状態だと、再三、問い合わせていた遺族や関係者に連絡してきたのは2時50分だった。
⑤3時には東村山署に駆けつけ、一刻も早く遺体と対面したいと申し入れたにもかかわらず、本来、即座に実施されるべき遺族による身元確認よりも「検視」を優先し、5時頃まで遺体との対面ができなかった。
⑥遺族、関係者が、マスコミや報道関係者にはまだいっさい連絡していない5時半の段階で、駆けつけてきた朝日新聞立川支局の女性記者か、開口一番、「矢野さん、遺書は」と述べたように、東村山署はマスコミに対し「自殺」としてリークしている。
など、事件の経過と東村山署の対応をかいつまんで説明した。

◆「自殺説」への疑問
蒸し暑い、そして重苦しい雰囲気のなかで、私は東村山署の不自然かつ不誠実な対応の理由や、厳しく対立する朝木さんと創価学会との関係など、事件の背景についてさまざまに思いをめぐらせていた。
「なぜ、東村山署は、のっけから自殺説に立つのか……。朝木さんには敵が多かった。その意味では、まずは他殺を疑うべきだ。一昨日、反創価学会活動を続ける龍年光元公明党都議の事務所を、バールを持った学会の青年部員が襲撃している。朝木さんも厳しく創価学会と対立している。当然、はねあがりの輩が襲撃する危険性も高い。7月以来、『草の根』周辺で異常な嫌がらせも続いている。他殺を疑わせるに十分な背景があるにもかかわらず、どうして東村山署は早々と自殺と判断するのか……」
ひときわ残暑の厳しかった夏の名残を思わせる熱気が体にまとわりつく。
「部外者の自分でさえ、遺体と対面したいと思う。まして、遺族や関係者であれば、一刻も早く会いたいのが人情。そうした遺族の感情を、どうして東村山署はないがしろにし、逆撫でするような対応に終始するのか……。また、身元確認は遺族に行わせるのが原則のはず。にもかかわらず、遺族への連絡が異常に遅れたのは、なぜなのか……」
一時間も待っただろうか。ようやく対面が許可された。短い対面を終え、霊安室を出た私の耳に、葬儀屋の意外な言葉が飛び込んできた。
「そろそろ御遺体を自宅へお運びしたいんですが」
死因を特定し、死の真相を糾明するために、当然、解剖するものと思っていた私は、驚いて矢野氏に質問した。
「解剖しないんですか?」
すると、「いま、遺族が警察と交渉中」だという。
東村山署の検視直後に始まった解剖の有無をめぐっての遺族と東村山署の対立は、検察官の検視後も続き、激しいやりとりが、2時間近く続いた。
というのも、朝木さんの死を自殺と“判断”した東村山署は、当初、解剖の必要を認めず、さっさと遺体を引き取れという態度で遺族に接した。これに対し、他殺を疑う遺族は猛反発。任意での病理解剖を申し出たところ、慌てた東村山署は、検察官の検視を要請。併せて本部鑑識による捜査を行うとともに、その後、急きょ、解剖はしないという態度を変更し、行政解剖を行う旨、通告してきた。だが、遺族は、あくまでも任意での病理解剖を希望。行政解剖は、遺族指定の病院で行う場合のみ同意すると回答したため、それはできないとする東村山署との間で話し合いが難航したからだ。
「母の死因を正確につきとめたいので、病理解剖を要求したのです。警察は、当初から自殺との判断を示していましたので、警察の指定医に任せてしまうことに不安と疑問があったのです。
また、母は、創価学会とも激しく対立していましたから、病院関係者に創価学会員がいるところだと、データを改ざんされる恐れもある。そこでカトリック系の病院で病理解剖しようと考え、その希望を伝えたのです」(直子さん)
今回の朝木さんの死をめぐる最大の謎は、自殺なのか、他殺なのかという一点にある。死の真相を糾明するためには、解剖は不可欠の条件。遺族が愛する肉親の体を解剖するという辛い決断を、あえて選んだのは、不可解な死の真相をあやふやにされたくないとの強い意志が働いたからにほかならない。不誠実を対応に加え、事件を簡単に自殺で処理しようとする東村山署の姿勢に不信を抱く遺族とすれば、自分たちの手で、納得いくまで死因を調べたいと思うのは、当然のことだった。
この解剖をめぐる対立は、警察側が検察官と打ち合わせた結果、捜査の一環として行う強制力を伴った司法解剖を行うことで決着。同日午後、東京・狛江市にある慈恵医大第三病院で司法解剖が実施された。
その結果、死因は出血性ショック死、多発性肋骨骨折肺損傷、すなわち折れた肋骨が多数肺に刺さり、そこからの出血が直接の死因との所見が、2日夕刻示された。

◆東村山署に取材
遺族と警察が、解剖の有無について交渉している間に、私は、顔見知りの週刊誌記者I氏とともに、東村山署広報担当の千葉英司副署長に取材を申し入れ、事件についての説明を聞いている。
広報担当として、恒常的に新聞社の地元記者に対応しているからだろう、千葉副署長は、手慣れた感じで取材に応じ、事件発生から死亡確認までの経過、そして現場の概要などを淀みなく説明。警察としては「事件性は薄く、自殺の可能性が高い」と判断しているとして、その根拠を二点ほど挙げた。
1、ビルの壁からわずか数十センチメートルの空間、すなわち真下に落ちている。突き飛ばすなどの強制力が加わった場合、放物線を描くから少なくとも2~3メートルはビルから離れる。したがって強制力が加わっていない。
2、第二発見者の「モスバーガー」店長が「大丈夫ですか」と質問したところ「大丈夫」と答え、次いで「救急車を呼びましょうか」と聞いたら「いいです」と断っている。生きたいと思っている人が救急車を断ることはありえない。
これに対し、私が、
1、靴が見つかっていないことの不自然さ
2、自殺とすれば動機はいったい何なのか
の二点を質したところ、千葉副署長は次のように答えている。
「靴が見つからないことは、たしかに不自然であり、捜査の対象になる。だから慎重に捜査はするが、あくまで事件性は薄いと判断している」
「(自殺の動機は)万引き事件の被疑者だということです」
私が、動機について再度念押しすると、千葉副署長はさも意味ありげなようすで次のように水を向けてきた。
「ヒントを一つあげましょう。それは検察官の動きです」
後述するが、95年7月、朝木さんは東村山駅前のブティックから1900円のTシャツを万引きしたという容疑で、東村山署から東京地検八王子支部に書類送検されている。千葉副署長は、朝木さんがこの万引き事件の被疑者であること、そして万引き事件をめぐる検察の動きが動機だというのである。万引き事件に関する検察官の動きといえば、起訴、不起訴の判断しかない。そこで、私は、次のように反問した。
「検察が、近々、万引き事件について起訴、不起訴の結論を出す。しかもその結論は、朝木さんにとって不利な起訴が予想される。その動きを察知した朝木さんが悲観したのが自殺の動機。そういうことですね」
たたみかけるように質問した私に、千葉副署長は、自信たっぷりにこう答えている。
「検察の判断については検察に聞いてください。ただ、私どもは自信をもって捜査したということです」

 

 

 


解説
なぜ、東村山署は、のっけから自殺説に立つのか……。朝木さんには敵が多かった。その意味では、まずは他殺を疑うべきだ。一昨日、反創価学会活動を続ける龍年光元公明党都議の事務所を、バールを持った学会の青年部員が襲撃している。朝木さんも厳しく創価学会と対立している。当然、はねあがりの輩が襲撃する危険性も高い。7月以来、『草の根』周辺で異常な嫌がらせも続いている。他殺を疑わせるに十分な背景があるにもかかわらず、どうして東村山署は早々と自殺と判断するのか……

乙骨氏のこの疑問は当然のことです。

「(自殺の動機は)万引き事件の被疑者だということです」

こう説明する、東村山署の千葉副署長、怪しさ満開です。
顔を見てみたいものです。

 

獅子風蓮