友岡雅弥さんは、執筆者プロフィールにも書いてあるように、音楽は、ロック、hip-hop、民族音楽など、J-Pop以外は何でも聴かれるとのこと。
上方落語や沖縄民謡にも詳しいようです。
SALT OF THE EARTH というカテゴリーでは、それらの興味深い蘊蓄が語られています。
いくつかかいつまんで、紹介させていただきます。
カテゴリー: SALT OF THE EARTH
「地の塩」という意味で、マタイによる福音書の第5章13節にでてきます。
(中略)
このタイトルのもとに書くエセーは、歴史のなかで、また社会のなかで、多くの人々の記憶に刻まれずにいる、「片隅」の出来事、エピソー ド、人物を紹介しようという、小さな試みです。
2019年4月1日 投稿
友岡雅弥
ほんの20年ほど前まで、日本では「終生絶対強制隔離」政策がとられていたので、ハンセン病が治っても、出てこれませんでした。もちろん、「医学的根拠はない」のですから、医師によっては、退所が「黙認」されたり、例外的にいろんな場合がありますが、「もういいかい?」「(骨になっても)まあだだよ」と言われるように、亡くなっても、遺骨の引き取りを遺族が拒否して、療養所内の納骨堂に納められます。
薬ですぐに治る(無菌)病気なので、治ってから亡くなるまで、60年、70年と療養所で暮らさねばなりません。
これって、ものすごく退屈ですよね。
「贅沢な退屈」ではなく、人間関係も、何十年も同じ人たちですから、「人権侵害」 の「退屈さ」です。
健康なわけですよ。何もすることがない。だから、短歌を作ったり、小説を書いたり。陶芸に打ち込んだり。
作家として、ベストセラーを生んだ人もいます(今も岩波文庫に入ってます)。
でも、10代、20代がほとんど(今は、平均年齢が80歳を超えましたが)なので、やはり体を持て余すわけです。
それで、野球が盛んでした。
僕の知りあいの入所者さんも、投手でした(5年前に亡くなりましたが)。
そのかただけではなく、野球経験者のかたをたくさん知ってます。
そのかたたちから、うかがった話です。
園の職員さんたちと、お昼間に練習試合をするんです。園は、外部とかなり隔絶したところにあるので、園の職員さんたちも、昼間に、家に帰ったり、外食したりはできないので、わりと昼休み時間に「空き」があるのです。
和気あいあいと冗談を言いながら、練習試合をしている。
昼休み時間が終わりました。
ほとんどの職員さんたちは後片づけもせずに、事務棟に戻るんです。
ごく一部の職員さんたちは、入所者(病気は無菌で治っているので、患者ではないのです)の人たちと一緒に、後片づけをしてくれます。
なぜ、こんなことがあるかというと、
「職員は、入所者が触った物品を触ってはいけない」という規則があるからです。
日本の療養所で、ハンセン病になった職員さんは0です。
しかも、感染力微弱であるということは、職員さんたちの暗黙の了解です。
また、もう無菌であることは、周知です。
でも、規則で「職員は、入所者が触った物品を触ってはいけない」のです。
今まで、休み時間は、攻守交代で、同じグローブを使い回し、同じバットを利用してきた人たちが、休み時間が終わると、「職員規則に縛られた職員」に戻るのです。
逆に、そんなの平気で、仲間として、後片づけをしたり、話あったりしてくれたのは、「規則を守らん、エエ加減な人ばっかりやった」
「エエ加減な人が、エエ人やったっちゅう話や」
わりと、真実をついているエピソードだと思います。
【解説】
今まで、休み時間は、攻守交代で、同じグローブを使い回し、同じバットを利用してきた人たちが、休み時間が終わると、「職員規則に縛られた職員」に戻るのです。
逆に、そんなの平気で、仲間として、後片づけをしたり、話あったりしてくれたのは、「規則を守らん、エエ加減な人ばっかりやった」
「エエ加減な人が、エエ人やったっちゅう話や」
わりと、真実をついているエピソードだと思います。
なるほどな、と思いました。
友岡雅弥さんのエッセイが読める「すたぽ」はお勧めです。
獅子風蓮