公用文には私文書などと異なり一定の決まりごとがある。
表記の仕方も「静岡県文書規程」第10条や「常用漢字表の実施に伴う公用文における漢字使用等について」(静岡県総務部長通知)などで細かく規準が示されており、これによることは、いわば法令遵守の一つともいい得る。
今日久々に見た県のホームページのトップ画面の最上位に重要情報として「静岡県内に交通死亡事故多発警報を発令」とのお知らせがあった。
内容は6月に入ってから交通死亡事故者が1週間で10人も増え、1月からの累計でも95人と全国ワースト2位になってしまったとのことで注意を呼びかけるものとなっている。
問題は、その表記だ。
文中に「常に交通安全を意識して、ひとり一人が交通ルールとマナーを守り、思いやりの心を持って、交通事故防止に取り組んでいきましょう。」
と書いているかと思えば、
「みなさん一人ひとりの思いやりと心鰍ッが、交通事故防止の第一歩です」 と締めている。
「ひとりひとり」は公用文では「一人一人」と漢字で書くのが正しい。
「新聞用語集」などでは「一人ひとり」と表記されるが、公用文と新聞界では表記法が異なる例は意外と多い。新聞業界内でも異なるものまである。
「箇所」「箇条」を新聞では「個所」「個条」と表記するのも同様だ。昭和29年当時「箇」の字を「個」に置き換える国語審議会の案の段階のものを先取りした結果であるが、異なる理由は様々ある。
今回の例のように同じ文中で異なる表記というのはめずらしいくあってはならないものであるが、同じ主体内で異なるというのも、本来あってはならない。ゆえに、表記のルールがあるといってもよい。
これまでにも、何度かここで指摘してきたが、最近の県の文書の表記の乱れは著しい。
見出しの「1」「2」「3」・・・といった数字の後に「1.」と「.」を打つものまで出てきた。
文書事務の手引など読まずに書いて、またそういう知識もない者が決裁の印を押すという負の再生産構造ができている。
一つが万事に通じるというか、組織としてチェック機能不全、実に情けない状況だ。
このブログの読書の中には他の自治体関係の方もおられることと思うが、昨年筆者が取りまとめ最近一部改定したばかりの「公用文 用字・用語・送り仮名 例集」を提供するので参考にしていただければと思う。また、一般県民にあっても、公務員の質向上のため、役所から来た公用文などの指導・監督に用いられることを期待したい。