中村伝統建物群~その2
べんがら亭(旧稲本楼)の建つ通りを挟んですぐ南向かいにも、純和風の遊廓建築をデイサービスセンターに転用した建物があります。べんがら亭と同様、当初は遊郭「一徳」として建てられ、戦後は料理旅館として営業を続けてきましたが、2001年に「デイサービスセンター松岡健遊館」という高齢者のための通所介護施設として生まれ変わりました。
どちらの建物も遊廓から料理旅館に転用され、現在は昔の廓のたたずまいを残しながら、地域のお年寄りの憩いの場として活用されています。通所介護施設(デイケア・デイサービス)はお年寄りの集まる大きな広間や入浴施設が不可欠で、どちらも備えた遊廓建築はデイサービス施設としてぴったりだったのでしょう。また地元のお年寄りにとって、若いころからなじみの深い木造の古い建物は、懐かしさと心の安らぎを与えてくれる場所で、そういう意味でも遊廓建築がお年寄りの憩いの場所として活用されるのは、まさに近代建築と地域の理想的な関係と言えるかもしれません。
なかには若いころお世話になり、現在はデイサービスでお世話になっているおじいちゃんもいるかもしれませんね(^_^;)
◆松岡健遊館本店(旧料理旅館松岡・旧一徳)/名古屋市中村区日吉町13
竣工:大正12年頃(1923)
構造:木造2階建
撮影:2012/09/22
※名古屋市都市景観重要建築物
■北側の通りに面したデイサービスセンター玄関
■1階は大広間を改装しデイルームとして活用~部分的に赤色の漆喰を用いた塀や、2階の手摺に廓建築の面影を残します
■南側の通りにも玄関があります