松阪工高から城下町の風情を残す町並みをさらに南へ向かい、今回の松阪近代建築探訪の大トリ、白粉町にある松阪地区医師会館を訪れました。古い町並みにひときわ輝きを放つこの建物は、大正初期に松阪水力電気(株)の本社として建設されました。典型的な初期の鉄筋コンクリート建築で、外壁や外周の柱は鉄筋コンクリート、2階床や屋根は木造になっています。
角地に建つ建物はコーナーを丸くし、そこに出入り口を設けたいわゆる隅丸(すみまる)建築で、玄関両脇に2階分の高さの古典様式のオーダーを配してファサードを強調しています。外壁はコンクリートと煉瓦タイルのコントラストが絶妙で、玄関上部のパラペットや2階窓下の逆三角形や方形の装飾、玄関庇の持送りなど細部に大正期ならではのアールデコの影響が感じられます。
江戸の風情が残る古い城下町の片隅に残る大正のアールデコ建築は、歴史を重ねながら今なお西洋館特有の妖しいオーラを放ち、その圧倒的な存在感でわたしたちを魅了してくれます。
■建物正面~隅丸の玄関まわりの装飾が見どころ
■建物側面
■細部に宿るアールデコの装飾
◆松阪地区医師会館/旧松阪水力電気(株)本社(三重県松阪市白粉町363)
竣工:大正2年(1913)頃
構造:RC造2階建
撮影:2015/05/03
築100年以上の近代建築が、なんで今になって・・・
最近は近代建築保存活用の機運が高まってきたと思っていたので、その流れに逆行するかのような今回の取り壊しは非常に残念です。
市に寄付して文化財指定を受け、地域の拠点として再活用するとか、保存の道はなかったものでしょうか。
またひとつその町の歴史を語る風景が消えてしまいましたね・・・
松阪はそういう町なのかと、今さらながら驚いています。何の論議もしないで、つまらない建物を造るようです。
財産を捨てておいて、新しいも何もないもんですが、だれのための新しい建物なのやら、残念でなりません。