素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

長田弘さんの詩「嘘のバラード」

2014年07月03日 | 日記
 Amazonに注文していた長田弘さんの本が2冊届けられた。文庫本と新書本の2冊なのに相も変らぬたいそうな梱包である。19時のニュースを見ながらビリビリと箱を破いて本を取り出す。この瞬間のワクワク感も好き。

 岩波新書の『なつかしい時間』とハルキ文庫の『長田弘詩集』である。

『なつかしい時間』にはNHKテレビ「視点・論点」で17年にわたって(1995年8月28日~2012年7月16日)48回、長田さんの目を通して語った放送のための元原稿と同じ時期に話した別の原稿三篇が収められている。あとがきで、長田さんは「なつかしい時間」とは?ということを次のように述べている。

 《自然が日々につくりだすのは、なつかしい時間です。なつかしい時間とは、日々に親しい時間、日常というものを成り立たせ、ささえる時間のことです。『なつかしい時間』は、この国で大切にされてこなかった。しかし未来にむかってけっして失われていってはいけない、誰にも見えているが、誰も見ていない、感受性の問題をめぐるものです。》

 自然の美しさの有り難さを忘れないためにも、ゆっくりと読んでいく。

『長田弘詩集』は初の自選詩集である。詩集を購入するきっかけは「最初の質問」という詩を新聞で知ったことからである。この詩が巻頭におかれているのも「なつかしい時間」についての話しと符合すればよくわかる。

 詩集を手にした時は、とりあえず最初から最後までサァーっと目を通すことにしている。すると今の自分の心の中にあるものに共鳴する詩が見つかるのである。同じ詩集であってもその時々の自分の有り様で共鳴するものは異なる。詩集を読む楽しさはそんなところにある。自分自身が言葉にできないでいる心模様を綴る詩に出会った時のうれしさははひとしおである。

 ちょうど集団的自衛権の閣議決定関連や北朝鮮の拉致問題の動きのニュースが流れているせいもあって、初めて手にした詩集の中で一番心に留まったのは『嘘のバラード』であった。

本当のことをいうよ、
そういって嘘をついた。
嘘じゃない、
本当みたいな嘘だった。
ほんとの嘘だ。
口にだしたら、
ただの嘘さ、
どんな本当も。
ほんとは嘘だ。
まことは嘘からでて
嘘にかえる。
ほんとだってば。
その嘘、ほんと?
ほんとは嘘だ。
嘘は嘘、
嘘じゃない。
ほんとに嘘だ。
嘘なんかいわない。
ほんとさ。
本当でも嘘でもないことを
ぼくはいうのだ。


折々に楽しむ詩集がまた一つ加わった。

 
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