思惟石

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『王妃の離婚』 中世フランスの離婚のしかた

2024-11-19 16:29:45 | 日記
『王妃の離婚』佐藤賢一

私のなかで佐藤賢一氏といえば
講談社現代新書のフランス王朝史。

カペー朝の個人商店奮闘記から、
大企業ブランディングのブルボン朝まで
読みやすい文章でわかりやすく楽しませてくれた
有難いお人である。

そんな佐藤氏、本職は小説家である。
え?そうなの?
すっかり新書の中世フランス担当だと思ってたよ!
(集英社新書『英仏100年戦争』も積読中だ)

では、日頃の感謝(?)を込めて、
小説も読んでおきましょう。

というわけで第121回直木賞受賞作です。

舞台はおなじみ中世フランス(1500年頃)。
ルイ12世が即位直後、王妃に離婚を求める裁判劇。
主人公の田舎弁護士フランソワは、
若かりし頃にカルチェ・ラタンで名を馳せた俊才。
ルイ12世の王妃の父でもあるルイ11世(暴君)の時代に、
鋭すぎる舌鋒のおかげでパリにいられなくなった人。

当時のカトリックにおける結婚やら離婚
(は認められていないので結婚の無効を証明する)やら
「だって聖書ではこう言ってたもん」
「それって解釈違うもん」
「もういい、身体検査(下半身)する!」
みたいな口論を堅苦しい言葉とラテン語を駆使して行います。
勉強になる…、いや、普遍史でもつくってろ、と思う。

とはいえ実はこの離婚騒動がフランス国土問題に
繋がっていたり、
ヴァチカンとの緊張関係が影響したり、
歴史背景込みでだいぶ面白い状態なのです。

一方的に離婚を要求される王妃にとっては
災難でしかないけど。

ルイ12世は、ヴァロワ朝史のなかでは
「優等生」と佐藤氏に評されていますが、
小説の中では優柔不断で責任感ゼロの
「これが国王で大丈夫?」状態。

これならこういう裁判騒動もありそうだなあ、
という絶妙な味付けも良い感じ。

歴史新書も良いけど、
こういう人間物語になっていると
当時の風俗や人間模様の解像度が上がっていいですね。
おもしろかった。
コメント
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