思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『もう生まれたくない』長嶋有

2022-02-04 17:43:00 | 日記
『もう生まれたくない』長嶋有

A大学に勤める人々の偶像劇みたいな小説。
2011年から3年ほどが描かれます。

「有名人の死」があって、それぞれの登場人物が、
それぞれに思うことや、連想する事柄をスケッチしている感じ。

なんだろな、なんか不思議な小説である。

冒頭は、震災後の2011年初夏。
X japanの元メンバーTAIJIが亡くなった頃。

え?Hideじゃなくて?
って思いましたが、登場人物の一人も同じようなこと思ってる。

そういう感じの「つらつらとした」思考が
「つらつらと」綴られるようなお話し。
途中までは、作者が何を書きたいのかわからないなあと
戸惑いながら読んだ。
まあ、結局、よくわからないまま読み切ったのだけど、
長嶋有だし良いか、という感じである。

蕗山フキコという、一人だけ異色な存在が居て、
それがまた良い感じであった。
登場人物全員、平凡な一般人というか、
何かを抱えているわけでも、死と隣り合わせとかでもないんだけど。
なんでフキコだけ、物凄い業を背負わされてるんかーい、みたいな。
(あまりにも不思議な感じだったので調べたら、
 『フキンシンちゃん』という別作品の登場人物らしいです)

しかしまあ、
ZARDとか声優の内海賢二(Dr.スランプの千兵衛さんの声)とか
セガサターンとか、臼井義人(クレヨンしんちゃんの作者)とか、
出てくる固有名詞が絶妙に琴線に触れてきますね。
登場人物と一緒になって、私という個人単位でつらつらと記憶が蘇る。
同世代を生きている作者である笑
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『スワン』呉勝浩

2022-02-03 09:51:08 | 日記
『スワン』呉勝浩

冒頭。
大型ショッピングセンターでの無差別殺人から物語が始まります。
いきなり大事件である。
死者21名、犯人3名はすべて死亡。
というところまでが、プロローグ。

本編は、
無差別殺人という恐怖の時間に巻き込まれた人物たちが、
とある弁護士の差配で定期的に集まることになり…。

最初は物語の設定というか主旨がわからなかったのだけれど、
とにかくぐいぐい読まされる。
1日で読み切ってしまった。

結局、世論は被害者たちのことも責めるし、
被害者たちは自分で自分を責めてしまうし、
他の被害者を責めることもあって。
ぐるぐるしている。つらい。

その中で、主人公の女の子が悲劇を簡単に受け入れない姿勢は、
すごいと思う。
絶対に「ごめんなさい」と言わない、という決心は、
とにかくすごい勇気だと思う。

負けちゃダメだよ。と伝えたい。
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『パリの国連で夢を食う。』川内有緒

2022-02-02 10:56:45 | 日記
『パリの国連で夢を食う。』川内有緒
作者である「アリオ」が5年半住んで働いた
パリ生活を綴ったノンフィクション。

川内有緒さんは、アメリカの大学院を卒業、
大手シンクタンク勤務を経て31歳でパリの国連機関に勤務。

って、経歴だけみると、すごい上昇志向の
バリバリキャリア女子だな〜、遠い人!と思ってしまう。
が。本人も書いている通り、どちらかと言うと「衝動と行動の人」
だということが、読むとわかります。
おもしろい人である笑

バリキャリコンサル女子のワーカホリック生活から一転、
怒涛の勢いで転職してパリに行って
いきなり住んだのが大通り沿いの「店舗」である。
窓が大きいのは良い住まいの条件ではあるけど、
ショーウィンドウは大きすぎでしょう笑
とにかく、その経歴と中身のギャップがおもしろい。

ベースとなる、国連職員としての5年半の記録もおもしろい。
国連のお役所感も、パリのだいぶ適当で理不尽なことが跋扈する文化も、
とにかくおもしろい。
(他人事だから笑えるんだよなあ…ってくらい理不尽です笑)

そんなパリで生きる多国籍な友人たちとのやりとりも良い。
「パスポート(国籍)をひとつしか持ってないの?」
と驚かれるエピソードなどは、
日本と海外の文化や意識の差が感じられて勉強になります。

この時期にパリ在住の日本人を取材した『パリでメシを食う。』も
併せて読んでみたいと思います。
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『喋る馬』 柴田さん楽しそう

2022-02-01 10:49:59 | 日記
『喋る馬』
バーナード・マラマッド
柴田元幸:訳

雑誌Coyoteで連載された「柴田元幸翻訳叢書」の、
単行本化第2弾だそうです。

岸本さんと柴田さんは好きな作家だけ訳して暮らしている感があって、
羨ましいです笑
これとかこれとか『十二月の十日』とか。自由を感じる笑)

もちろん『喋る馬』も面白いし、さすがのセレクト&翻訳です。
ちょっと哀しいけれど、ユーモアもある、不思議な短編たち。

『ユダヤ鳥』と『天使レヴィーン』が好きだなあ。
レヴィーンが最後に泣いちゃうの、良い。

作者は、ユダヤ系ロシア移民の子としてアメリカに生まれたとのことで、
その出自を感じさせる物語が多いですね。

ちなみに「柴田元幸翻訳叢書」の第一弾は
ジャック・ロンドン『火を熾す』だそうで。
これも読んでみようっと。
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