思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『ポースケ』最高に良い、なんそれ!感

2022-07-04 17:08:59 | 日記
『ポースケ』
津村記久子

『ポトスライムの舟』の5年後の世界。
前作の主人公ナガセはちょっと出てくるけれど、
今作の主人公というか舞台となるのはヨシカが開いた
カフェ・ハタナカ。

カフェの常連さんや従業員、その娘など、
ちょっと関係のある人々の物語。

相変わらず、それなりにまっすぐ生きて、それなりに働いて
(いや、だいぶ真面目に働いてると思うよ!それなりなのは
給料だと思う!誰かなんとかしてくれ!)、
それなりに疲れちゃってる人々。

ディテールが最高にうまい。
胸にぐさぐさくる。

あと小ネタも良いよね!
語学が趣味の竹井さんがエスペラント語を学んでて、
いつかパスポルタ・セルボに行きたいと。
世界中のエスペランティスト(って単語があるのか)による
宿泊可能な家らしい。
なんだそれ笑

ついでに、竹井さんは前職のトラウマに悩まされていて、
すぐ思い出して辛くなっちゃうから、
頭なんかいらない、「首から下だけで生活したい」と考える。
なんだそれ!
彼女たちのつらつらと考える思考の表現が、最高に良い。

『ポトスライムの舟』の姉妹作品ではあるけれど、
『現代生活独習ノート』『この世にたやすい仕事はない』の方が近いイメージ。

タイトルの「ポースケ」もなんだそれ笑と思ったら、
ちゃんと意味もあるし、意義もあった。
素晴らしいよね!
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『龍の耳を君に』第一作に続いて、良い!

2022-07-01 17:48:54 | 日記
『龍の耳を君に』
丸山正樹

<デフ・ヴォイス>シリーズ第2弾。
主人公であるおじさん荒井は、
ろう者の親から生まれた聴こえる子、コーダ。
手話通訳士としていろんな事件や人と関わる物語。

第二作は連作短編風で、3つの事件が描かれています。

「弁護側の証人」はろう者の被告が「しゃべれる」かどうかが争点。
喉から音を出せても、それを「言葉」とは思えないという
被告の葛藤が印象的です。
「発話」ができるかどうか、それを「しゃべれる」と捉えるかどうか。
そして、その判断は、周囲が押し付けているものでは?という問い。
深い。

「風の記憶」は加害者も被害者もろう者という詐欺事件のお話し。
加害者である新開の心の変化とか今後とか、
もうちょっと書いても良かったんではなかろうか。
というか、気になるんですけど…!

で、表題作 「龍の耳を君に」に収束します。
タイトルは「聾」という漢字の由来から。
龍には耳がなくツノで音を感知するという。
(いらなくなった耳は海に落ちてタツノオトシゴになったとか)
場面緘黙症の少年が「自分の言葉」を与えられる話しでもある。
元気に育てよ!と母心が芽生えました笑

どれも良い話だし、とても勉強になる。
すごく良い小説!
広く読まれるべき!
(すでに広く読まれてます)

唯一のハラハラポイントは、荒井とみゆきの関係だな。
あなたたち相性悪くない?
同居しちゃって大丈夫?
まあ、余計なお世話である。
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