思惟石

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【読書メモ】2016年6月 ②今月のアーチャー

2022-07-19 18:52:27 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年6月 ②>


『十二の意外な結末』ジェフリー・アーチャー
短編集。
作者の、いくらでも書くよ、長編も短編も好きだよ、という
軽やかな感じがする。
アシモフみたいな?
どれもそれなりにおもしろい。
作家の好みも良くわかる。
『掘り出し物』とか『本物じゃない』みたいな、
真贋を見極める力とか、それにまつわるコミカルな人間模様。
あと『クリスティーナ・ローゼンタール』的な一代純愛モノも
アーチャーはお好きですよね。
トリックが軽いとかの評価もあるらしいけれど、
アーチャーという作家が好きなら面白がれる短編ばかり。
私は好きだし、面白かった。
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『一路』浅田次郎的な胸熱ワールド

2022-07-15 14:03:52 | 日記
『一路』
浅田次郎

江戸時代末期の参勤交代の物語です。

主人公の小野寺一路は、架空の里・田無部(たなぶ)の御供頭。
江戸への参勤を差配する役職を、父の不慮の死で突然引き継ぐ。
というところから物語は始まるのだけれど、
単なる主人公・一路の成長物語でもない。

いや〜、浅田次郎は良い!良いよね!!

出発するまでもハラハラしたり、
ニヤッとしたりするのだけれど
やはり、参勤交代の行列が出発するところからがおもしろい。

出発後は、御殿様・蒔坂左京大夫(まいさかさきょうのだいぶ)に
焦点があたります。
無役の旗本で、石高は7500石。決して多くないけれど
大名と同等に扱われる交代寄合表御礼衆という、なんとも絶妙な設定。
偉いの?偉くないの?というごちゃついた格付けにより、
宿場町での他家とのはちあわせ(差し合いと言う)なども起きて
おもしろい。

江戸時代末期、平和が長らく続いた時代の、
「家臣たちにとっての神秘」としての御殿様のつらさが、
なんとも切ない。

後見役による御家騒動の企みもあり、
道中ならではのトラブルや出会いやら、上下巻ずーっとおもしろい。
浅田次郎は、良い!良いね!!!


そして、何よりも素晴らしいのが表紙です。
山口晃画伯の描き下ろし!!!
中山道の宿場町のあちこちで起きた
道中のアレコレが、美しい線とチャーミングな表現で描かれています。
小説を読んでから表紙を見ると、最高に楽しいじゃん!!
すごいサービス!!!

ちなみに文庫版になると、上下と、右端が、結構
トリミングされちゃってます。
フチなし左端合わせで使いたかったんでしょうね
しょうがないですね、
いや、しょうがなくないだろ!!!
下仁田ネギが切れてるじゃん!
母上も切れてるじゃん!!!
星空も見えないじゃん!!!
なんじゃそりゃあ!!!!ふざけんな!!!!
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【読書メモ】2016年6月 ①『星を継ぐ者』名作!

2022-07-14 18:20:24 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年6月 ①>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『星を継ぐ者』ジェイムズ・P・ホーガン
ハードSFの代表作と言われている作品。
1977年に上梓されたデビュー作。すごい。
デビュー作でこんなにも宇宙技術をそれっぽく書けているのも
すごいよなあ。かっこいい。
読んでおいて良かった。
しかしコリエルを「巨人」と表現したのはいただけない。
原書では「タフネス」とかの単語だったらしい。
ミステリではないので、ここはダブルミーニングを
がんばらなくても良かったと思う。


(めちゃくちゃ好きです。
 私は特にSF愛好家でもなく、濫読するタイプなんですが
 「すごく好き!!!」という作品に名作SFで有名なものが多くて。
 自覚ないだけでSF好きなのかなあ、と思ったりもしますが、
 読んだSFの好き嫌いを整理したところ
 特に「SF好き」というわけでもなさそうだった。
 いまだに自分の好みがよくわからなくて
 次に何を読んだら良いのかわからなくなります笑)


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『日本海ものがたり 世界地図からの旅』

2022-07-11 18:47:47 | 日記
『日本海ものがたり 世界地図からの旅』
中野美代子

中国文学が専門の先生による、なぜか地図にまつわるお話しです。

というわけで冒頭は西遊記のエピソードでもある
「女だけの国」の話から始まる。
この国に漂着した人は、果たしてどこに流れ着いたのか、的な導入で
中国古典から地理学的なアプローチへ。
いきなりおもしろいじゃないですか〜。

日本海の潮流を踏まえて、大陸側から漂着するとしたら?
秋田のナマハゲも漂着した異人だったのでは?
朝鮮半島からは潮流的に無理がある?
等々。

徒然なるままに書かれている雰囲気もあって、
読んでいて飽きません。
うんちくもたっぷりである。

日本人で初めての世界一周航海は、漂流船の乗組員で、
1793年に石巻から江戸を目指した若宮丸とか。

大航海時代に海図が発達したことで、
「ロビンソン・クルーソー」「ガリバー旅行記」などの
世界地図に基づいた冒険物語が生まれたという話しも
おもしろかったです。なるほど!

ついでに、「ロビンソン・クルーソー」のフルタイトルは
「ヨークの船乗りたるロビンソン・クルーソーの生涯と、奇怪にして驚嘆すべき冒険―かれは、大河オリノコの河口近くのアメリカ海岸にある無人島にて、28年ものあいだひとりぼっちで暮らした。座礁により遭難、かれを除く全員が死亡。また海賊によって救出された経緯をも付す。かれみずからによる執筆」
めっぽう長いというトリビア笑
おもしろい。

18世紀のヨーロッパの地図で、日本海、朝鮮海が混在し始める。
欧米では宗谷海峡がラペルーズ海峡と記されていたとか。

さらに、ロシアの航海事情。
黒海からボスポラス海峡を越えダーダネルス海峡を越えて
ようやくエーゲ海で、さらに地中海を抜けて
ジブラルタル海峡を通らないと外洋に出られないって、
地図を紐解きながら丁寧に書かれていて、なるほどなあ〜と思った。
大戦の歴史で東方で不凍港に執着していたのは勉強していたけど、
西方も閉じてるんだなあ。と。
勉強になった。

ラ・ペルーズの冒険もおもしろかった。

多方面での学びがありました。
良書!
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『心は孤独な狩人』村上翻訳文庫ラストです

2022-07-07 14:07:05 | 日記
『心は孤独な狩人』
カーソン・マッカラーズ
村上春樹:訳

村上春樹氏若かりし頃の愛読書の中で、
いつか翻訳したいと考えていた小説たちの
「最後の一冊」だそうです。

そして著者は、若干23歳でこの小説を書いたのだとか。

どちらにもビックリだ!

舞台は1930年代のアメリカ南部の貧しい街。
聾者の男性(シンガーさん)を中心に、
よそ者のアル中労働者、カフェのマスター、
下宿屋の娘、黒人医師たちの群像劇のような、ある日の点描のような、
彼らの「今日」が紡がれていく。

村上春樹は訳者あとがきで
「マッカラーズの小説世界は、言うなれば個人的に閉じた世界でもある」
と書いており、
作家本人も、自作についてのエッセイで
「精神の孤独は、私が扱う大半のテーマのもとになっている」
と語っている通り、
登場人物たちは他者からの意見や理解を拒むような雰囲気がある。

順繰りに描かれる4人の物語は、
家族や友人や仕事に囲まれているけれど、とにかく精神的に孤独だ。

なにしろ、読者である私が「拒否られてる〜」と感じるくらい
ヤツらは殻に閉じこもっている笑

そして唯一、ろう者のシンガーさん「だけ」が、
理解してくれていると、登場人物たちは信じ込んでいる。


読みながら、「シンガーさんになんでもかんでも
押し付けんじゃありません!」と思いますね笑

そして中盤、シンガーさん主観パートにて、
彼の戸惑いが吐露される手紙が登場します。
その戸惑っている感は、唯一、私が「わかる〜!!」と
ほっこり共感したパートでした。
シンガーさんと握手したい。

そんなシンガーさんが唯一、心の拠り所にしているのは、
もちろん登場人物の4人ではない。
冒頭の「町には二人の啞が住んでいた」という一行も素晴らしいけれど、
その二人の物語(主要パートではないし、大して描かれない)に
私は心を揺さぶられる。

いや、主人公的な4人に魅力がないわけじゃないんです。
とはいえ彼らの孤独や悩みは、どこからどう見ても
自らが答えを出さなきゃいけないものなので、
私は一緒に考えたり悩んだりできないんだな。
彼らには、がんばって生きろよ!としか言えない。

でもシンガーさんとは、握手したい。

この作品、総じて、村上春樹を感じない文章でして。
チャンドラーを読んで「村上作品に繋がってるな〜」と感じたのとは、
ちょっと違いますね。
まあ、村上ルーツを探らなくても良いんだけど。
ファンだから、すみませんね。

ページ数がかなりあるのですが、
複数いる登場人物の「ある日」が積み重なる印象なので、
少しずつ読み進めるのでも良いかも。
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