緩和ケアで行こう

へなちょこ緩和ケアナース?!のネガティブ傾向な日記です。

乾杯

2009-09-21 18:26:52 | 緩和ケア病棟

 普通の病棟…なら、許されなくても、緩和ケア病棟だからこそ許されることがあります。

 私は、緩和ケア科外来を担当していています。緩和ケア科外来を受診されたご家族には必ず、緩和ケア病棟の見学をしていただいております。その案内をするのが私の役割のひとつです。

 病棟を歩きながら、説明をする内容のひとつが、「一般の病棟と違うところ」です。
 
 「一般病棟と違うところ」の特徴的なところは、『動物の面会がOK』(施設によっては、動物の面会はだめなところがあります)、『飲酒はOK』(勿論、病状が許す限り、そして、他の患者さんに迷惑がかからない限り、ということです)、であります。
 これらは、緩和ケア病棟の「良さ」です。
 でも、緩和ケアについての認識がネガティブな方もたくさんいらっしゃいます。
 

 「命が限られているから、本来、許されないことが許されるのだ。」
  
 私は、この考え方に対しては、慎重であらねば、と思っています。

 
 確かに、緩和ケア病棟には、がんの終末期の患者さんが多く入院されています。
 自分の人生の時間に限りがあると認識せざるを得ないときが来た時、人は、それまでの在り方以上に、その時々の過ごし方を大切にしようとされます。
 その人が、自分の人生の時間に限りがあると認識していない場合(いろんな状況があってのことです)、私たち、医療者の方が、その人の人生をその人にとっての「その人なりの過ごし方」をご家族と模索することになります。


 それにしても、緩和ケア病棟に入院される患者さんは、多くが余命が限られている方です。
 そんな方だから、緩和ケア病棟なりの過ごし方があると、そう考えるのはあまりにもさみしいことだと思っています。

 多くの施設では許されないことですが、少しでもその人らしく生活できる環境が、病院にあるということは療養をする上では大切なことだと思います。

 あくまでも、余命が限られているので環境がいい、というのではなく、その人の生活を大切にするということで、その環境があるのだと思います。


 前置きが長くなりましたが…。



 先日の夜勤のことです。
 夜の業務が落ち着いたところで、患者さんと「乾杯」したんです。



 その方は、とてもお酒が好きな人で、毎日、ワンカップの瓶に1杯だけ、寝る前に飲むのを楽しみにしておられます。
 鹿児島から焼酎を取り寄せているくらい、お酒が好きな方です。

 先日まで、腸閉塞でお酒を飲むことが許されなかったのですが、治療の効果があって、お酒が飲めるようになりました。
 とても喜ばれていたので、私が冗談で、「乾杯せなあきませんな。」と言ったところ、「ほんまやなー。」と言ってにっこりされ…。
 夜にお部屋に伺うたびに、「一杯、やってくか?」と声をかけて下さっていました。

 さすがに、日勤ではほんのちょっとでも、飲むことができません。車で通勤していますから。

 そこで、「乾杯」を決行したのが、夜勤の時でした。

 病棟にあったお猪口をふたつ、お部屋に持って行き、焼酎をお猪口に半分ほど注ぎ、二人で乾杯しました。


 そりゃー、美味しかったです。芋焼酎の香りもよくて…。本音は、「もっと、飲みたーーーいっ!」でした。

 その患者さんのご家族は、誰もお酒を飲まないそうです。だから、私と乾杯できることをとても喜んでくださいました。ご家族も、患者さんが喜んでいる姿を見て、とても喜んでくださいました。

 「また、来てよ…。」と。


 ほんの数分の「乾杯」でしたが、あの場面は忘れることができない思い出になりそうです。

 緩和ケア病棟で過ごしていらっしゃる患者さんは、いつも病気のことを考えながらすごされているわけではありません。
 いつも、病気のことばかり考えて過ごさなくてもいいように、ちょっとした楽しみを作って差し上げることも私たちの役割だと思っています。

 


 
 


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