SMILES@LA

シェルターからやってきたミックス犬のニコとデカピンのニヤ。どちらの名前もSMILEの犬姉妹の思い出を綴ります。

ビーグルのでんちゃん 旅立ち

2014-11-02 22:22:13 | 犬のおはなし
縁あってシェアして頂くことになったビーグルのでんちゃんストーリー。

前回までのお話はこちらです。
ビーグルのでんちゃん 出会い1
ビーグルのでんちゃん 出会い2
ビーグルのでんちゃんが走った日1
ビーグルのでんちゃんが走った日2
ビーグルのでんちゃんの新しいお家1
ビーグルのでんちゃんの新しいお家2
ビーグルのでんちゃん 旅立ちまで

保健所に連れて行かれそうだったビーグルのでんちゃんを縁あって迎えられたご夫婦。
関節炎を患ったでんちゃんのためにお家を新築すると決めた矢先に、でんちゃんの腎臓病が発覚。
それでも念願の新居にお引越し。刻々と変化していくでんちゃんの状態とママさんパパさんのお気持ち。
・・・と、いうのが前回までのお話。

そして今日のお話は、でんちゃんがビートママさんのおうちに来るきっかけを作った縁結びの美容師さんご夫妻の再登場から。


闘病生活の中のおだやかなひと時。

八ヶ岳の馬場夫婦も、私達の心のよりどころでした。
でんちゃんの発病を、真っ先に知らせたのは八ヶ岳。
彼らは、ジープを駆って山を下り、
何度も見舞いに来てくれました。
まだ目に力がある、大丈夫!
それより人間の方はちゃんと寝てるのか?
毎度夫婦で、しっかりとパワーを注入してくれました。
彼らは、困った状況の犬を預かるボランティアの果てに、
行き場の無い犬を1匹、引き取っていました。
真っ黒で大きな雑種女子「あじゃら」を引き取ったのです。
彼らは、闘病の最初の頃から、はっきりと言っていました。
でんちゃんに万が一のことがあったら、
すぐに次の犬を飼いな。絶対に飼いな、と。
そしてもうひとつ、延命治療はするな、とも。



新しいおうちのでんちゃんバギー専用スロープ。

彼らは先代のビーグル・ルーシーに、数回の大手術を受けさせています。
乳腺腫瘍、でした。
おっぱいはどっさりあって、だから何度も手術することになっちゃった。
彼らとて、当時は「1日でも長く生きて!」と思えばこそ、
そうやって手術に踏み切ったのです。

しかし、ルーシーを見送った後、彼らは悟ったそうです。
あれは、人間の都合だった。
ルーシーに死なれたら人間が困る、だから永らえて欲しいと、
さんざん手術を受けさせた。
ルーシーには迷惑なことだったろうし、
手術を受けても受けなくても、いずれは死んだ命なのだ。
だとしたら、エリザベスカラーをはめて不便な時間を沢山与えて、
あれはかえって可哀相だったのではないか。
「だからね、今のアタシなら、点滴も受けさせないよ。
それが寿命と、静かに受け入れることができる気がするよ」
馬場さんも、奥さんのアケミさんも、そう言いました。
ただし、それは、ルーシーを見送った自分らが、
今になってようやく言えることなのだ、とも。
「だからあなた達夫婦も、でんちゃんを見送って、
その後でわかることが一杯あると思うんだ。
そこまで体験してみて、初めて犬を飼うことの意味が見えるはず」
そんな風にも言っていました。

それは、今の私には本当によくわかる言葉ばかりです。
だけどそれを聞いた闘病期間中、私はその言葉を受け止められなかった。
何言ってんのよ。できることがある限り、私はやるわよ!ってなもので。

いよいよ、毎日寒くなってきました。
でんちゃんは、時折、ひどく痙攣したり、吠えてみたり。
意識が朦朧としたまま、どこかに走り去ろうとすることも。
いや、走ることはもうできないわけですけれども。
私は夫の叫び声で、2階の風呂場から裸で駆け下り、
咳き込むでんちゃんを縦に抱いて気道確保をしたりして。
落ち着かない毎日でした。
ドキドキする毎日でした。



ママさんに付き添われて;

もう、病院に連れて行くことも難しくなっていました。
私は病院で練習を重ね、自宅で皮下点滴を打つことになりました。
補液を受け取り、自宅でそれを人肌まで温め、
点滴袋を少し高い位置にセットしたら、針を挿す。
袋を手押しのポンプで圧迫しつつ、点滴液を全部皮下に送り込む。
でんちゃんは、「点滴するよー」と言うと、
お決まりの窓の下までゆっくりゆっくり、自分から歩いてくるのでした。



大好きなおうちで点滴を受けるでんちゃん

10月の半ばから、私は階下のソファベッドで眠るようになりました。
でんちゃんの顔は、頭蓋骨の形がわかるほどゴツゴツしてきて。
正直に書きますが、私は「安楽死させたい」と言ったこともあります。
夫が激怒し、「何言ってるんだ!」とテーブルを叩いたけれど、
日中もドキドキしながらでんちゃんを見つめる毎日に、
本当に疲れ果ててしまった日もあったのです。
さんざん夫婦喧嘩をした挙句、2人して涙ぐんで、
「いや、もうひと頑張りしてみよう」と思い直した日もあったのです。
最後まで望みを捨てず、健気に看病したわけではないのです。


11月2日、農業祭の日がやって来ました。
でんちゃんは、あのお祭りが大好きでした。
その日だけは、フランクフルトをちびっと食べさせてもらえるから。
お祭りだからねと、フランクフルトを買ってやるんですよ。
もうねぇ、お店の前で、足踏みして喜んでいました。
院長と相談し、私達はでんちゃんをお祭りに連れて行きました。
もう、バギーの中でお座りすることもできなかった。
クッションをぎうぎう詰め込んで、なんとかお座りの姿勢をキープ。
その状態で、会場の公園までゆっくりと出かけました。



お祭りにおでかけしたでんちゃん。

果たしてフランクフルト売り場まで来ると、
まぁ!でんちゃんはむっくりと立ち上がりました!!!!
さっすがビーグル!
ちょっと待ってて、すぐ買ってくる!
フランクフルトを買って、ベンチに座りました。
でんちゃん、食べな。
どんどん、食べな。
お塩がきつくても、油が多くても、もういいよ。
好きなだけ、好きなだけ、食べちゃいなー。
夫と代わる代わる、フランクフルトをちぎってやりました。
私も夫も、笑いながらぽろぽろと涙がこぼれて困りました。
賑やかなお祭り会場の隅っこで、笑って泣いてフランクフルトをちぎって。


ああ。
これまでいろいろ書いてきたけれど、ずっと泣かずにきたけれど、
今、ここを書いていて、思わず涙が溢れてきました。
楽しくて、そして悲しいあの1日のことを思うと、今でもどうしても泣いてしまう。


それから数日して、いよいよ寒さも厳しくなり、
私は階下のソファベッドで寝ていたせいで、節々が痛くなりました。
一晩だけ、夫に代わってもらうことにしました。
それは土曜日の夜で、「明日会社休みだから大丈夫」と、
夫がソファベッドで寝てくれることになったのです。
でんちゃんのベッドは、周りに段ボール箱などで柱を作り、
そこに毛布を渡した「天蓋ベッド」という様相でした。



でんちゃんの天蓋ベッド。

そうやって保温につとめ、床暖房を最弱で入れて、
冷えることから防いでいたのです。
天蓋の毛布をちょっとめくって、でんちゃんおやすみ、と言いました。
久しぶりに自分の寝室の自分のベッドに横になり、
私は不覚にも熟睡してしまいました。
普段、ちょっとの音にもすぐに目覚めるはずなのに、
その日は横になるなり熟睡。夢も見ずにぐっすり眠りました。
早朝、夫が階段を駆け上がりながら、
「でんちゃんが!でんちゃんが!」と叫ぶまで。

日曜日の早朝、でんちゃんは旅立ちました。
抱き上げた時にはまだ柔らかくて、ぐぅ、と喉が鳴る音がした。
私は、最後のあの時、でんちゃんはまだ生きていた、と思っています。
いや、それももう、どっちでもいいことです。
あの最後の一瞬だけが大切なのではなく、
たったの6年弱だったけれど、でんちゃんと過ごした毎日が、
その1日1日が、事件や笑いに満ちた宝物だったから、
最後の最後、その一瞬に「間に合ったかどうか」というのは、
それほど気にはなりません。
ただ、でんちゃんが、最後に苦しかったかなぁ、
それとも、朦朧としたまま、すーっと旅立ったのかなぁ、とは思う。
いずれにせよ、気持ちの悪さと闘い続け、
関節の痛みにもずーっと耐えてきたわけだから、
ともかく、それらの苦しみ全てから解放されたことにはほっとしました。
ほっとしたけれど、恐ろしいほど悲しかった。
あれほど悲しいとは、想像していませんでした。
なにもかも、終わってしまった、みたいな気持ちになりました。
すぐにトリマーの方に連絡し、早朝にもかかわらず彼女が家に来てくれて、
棺に納めたでんちゃんがまだ生きているような気がしてならなくて、
そんな気持ちに耐え切れなくてその日のうちにお寺さんに運び込んで・・。


でんちゃん、旅立つ前日。

でんちゃんの大好きだったフランクフルトと肉マンを枕元に置き、
あのお守りも、大好きだったぬいぐるみも、
最後まで使っていた可愛い枕も、全部全部一緒に焼きました。
大きな花束も。
私達は終日、食べることも飲むことも忘れて過ごしました。
夜になって、お守りをくださった若い女性が弔問に来てくれて、
遅くまで一緒に思い出話に付き合ってくれて。
こうして、私達とでんちゃんの日々は終わってしまったのです。



「僕の一生、悪くなかったでしょ?サイコーに幸せだったんだよ。」

犬生の前半は苦労犬だったでんちゃんだけど、逆転ホームランで最高の家族に巡り合って
幸せに旅立って行きました。でんちゃんのママさんパパさんのストーリーはまだ終わりじゃありません。

連載ストーリーはあと2週続きます。

続き→ビーグルのでんちゃん さて、それから


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コメント (9)
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