早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十二年八月 第二十四巻二号 近詠 俳句

2022-01-08 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十二年八月 第二十四巻二号 近詠 俳句

    近詠
   祝出征
男の子赴くただいさましのなみだしつ

   北摂大家櫻谷鉱山行
道なきへ入るとき夏のひた探し

露にさび鑛山草が夏の山

伐木を往くに空聴く時鳥

   開坑式
茂り山に露の玉串たてまつろ

人の指す銅頭見上ぐに夏の鳥   銅頭 ドト

滴りをおもてに覗く杭の日    杭 シキ

鑛の涼し濡れた肌かな

日盛りや山笹の打つ影しるく

   琵琶湖舟遊 (五句)
竹生島緑陰のぼる羅よ

水涼し稚魚すなやかにすこやかに

夏の湖船の煙を一つ持つ

巌の鳥鷲の外なき白き散る

鳰の湖の夕立するさ船は往く

  堺水族館にて
鯛が舞ふ群れて浮く背を青嵐

河魚に馴染みながめて闇涼し

  萩の寺にて
萩の中かげは裸に寒きかな

冷やしコーヒ氷塊一箇純なりぬ

  桟庭
菊なれば捨て置きたるが茂りかな

赤ければ無気に折らるゝ夾竹桃

濱木綿の蕾の巨筆雨を暢ぶ


  竹の秋
寺も村も棟をあつめて竹の秋

四圍の山竹の秋より高からず

  仙人掌
見怖れしサボテン畑往きにけり

すゝぼけのサボテンの鉢二三持つ

花不思議サボテンに咲く摩訶不思議

サボテンの奇を懌ばず村夫子

   早春社七月本句會
水と野のたひらかありて梅雨の明

風鈴や峡の夜の戸をしめながら

   早春社六月例會
鍛冶の子のいとま青梅を嚙りけり

牧の柵住つて青梅の戸口哉

籠の中蛍とべり梅雨の雷

   無月会二月例會
別霜湖このごろの魞作り

若鮠や礫の波紋脚に來る

水迅く崖のすみれに風見ゆる

  東京早春社五月例會
夜はさすが背の新樹の冷え冷えす

新樹夜や登りて立ちし男坂

山全く新樹の闇の手すり哉

   無月會六月例會
御旅所やざくろの花に落ちつゞく

門内やざくろの花の一切戸

   青鈴句會七月例會
濠水に潮のさし干や行々子

   無門會七月例會
手花火の明りに濠の底干たり