金曜、AM大学に出て雑務、いや本務をして、広島に入り、翌日の理学療法基礎系研究部会の打ち合わせ兼懇親会に入る。
部会長の木村先生、主催された弓削先生らとお話しする。脳科学の知見を導入し、理学療法の理論を真剣に議論する時期に来ているという点で共通の理解を得る。
生理研の柿木先生にはじめてお会いする。痛みの認知研究のみならず、感覚認知機構に関する世界でトップクラスの研究者である。気さくな先生で、雑学の豊富さに話を聞いていていろんな視野を持つことが大事だと感じる。翌日、自分の講演以外は研究室の英文投稿論文に常に目を通していた。1秒も無駄は過ごしていない。
生理研のHPを久しぶりに見たら、椛先生が客員だった。椛先生は博士論文の副査であった。学位を3つももっている超人的かつ温厚な先生であった。nature、science当たり前の世界だった。
翌日、研修会スタート。自分の講義は、「脳イメージング研究に基づいた理学療法」というテーマで、1時間ほど話す。他の講師はMD,Prof.でPTは自分だけなので、荷が重かったが、それも責任と考え、はなした。「脳のなかの身体」「運動学習の神経機構」そして、私の研究室のイメージング研究成果などについて触れた。まだまだ、他人の研究成果が多く、自験で勝負できない自分に相当反省するとともに、講義の着地もあれでよかったのかな、と思ったが、生理学を勉強しているNrsや学生たちから質問をいただき、それでよかったのかなとも思ったが、自分としては・・・ 最近、迷う。終わって弓削先生から現実主義でフランス人的な講演だったとお言葉をいただき、内容をほめられるよりも、パリ大好き人間としてはうれしかった。
現象学、哲学、思想学、そして科学哲学が生きているパリである。
弓削先生はパスツール研究所に留学されていたらしい。パスツール駅でメトロを乗り換えサンタンヌに研修に行っていた10年前が懐かしい。
柿木先生の講演。圧倒的な研究力であった。すべての疑問を解決する、それが研究者だといわんばかりのデータであり、とっても聴いていてうれしかった。研究領域こそ違うが、先日のイメージング学会の十一先生にもそれを感じた。
Aδ線維のみに刺激を与え、C線維にはフィルタをかける装置を開発したことに興味をいだいた。
他者の痛みの認知機構における大脳皮質の役割について質問させていただいた。insula、SⅡ、前部帯状回の時間差による活性化は痛みが情動と深く関与しているという意味を与えてくれた。Singerらのデータとの兼ね合いを質問し、SⅠが高速な処理を行っている一方、痛みに対しての活動が小さいことがわかった。これに関しては、自分の仮説を少し変えないといけないと思った。いずれにしても、痛みの情動・認知機構については皮質レベルで学部生と研究する予定であり、近々データを示したいと思う。いまの理学療法の環境(銭湯のような)を変えるべきと提言したい。
あ、それとinsulaの前部は触覚対応、後部は痛覚対応らしく、一次運動野の機能にも似ていると思った。中脳における下降性の抑制機構などまだまだ勉強すべきことは多い。
いずれにしても、痛みは大脳皮質(旧も含めて)で認知されることから、早くゲートコントロール理論の呪縛から抜け出ないといけないと思った。柿木先生たちの研究成果がそれを証明している。いつまでたっても、ゲートコントロールだけでないでしょ。脊髄と大脳を考えてもそれは一目瞭然だ。
常識を作り変えないといけないことは多々ある。教授する方々(私も含めて)がそうした新しい科学に出来るだけ早くに触れ(あるいは研究し)、解釈し、セラピストの卵たちに「仮説」といして、教えてないといけない。それが未来の患者さんの治療の道だ。その道は遅い手続きかもしれないが、一人(自分ひとり)よりも10人が新しい科学知識に基づいて治療を展開すれば、10名の患者さんでなく、100名の患者さんのためになる。教育というのは奥が深く、意義深い。それが毎年続くのだ。
そうした知見を導入(思考)できなくなれば(つまり、私の脳が科学のスピードについていけなくなれば)この世界から手を引く。そのときには少なからずとも自分の教え子が教鞭をとり、常識を作り変える険しい道(教育・研究)に入ってくれているだろう。それが未来だ。10年先は確実に今よりよい世の中になっていないといけない。人間はいつか死ぬ。いつも引き際を考えて仕事をしているつもりだ。
なんで研究が必要なのでしょう。それがわかってなく、自分の今までの体験のみに固執し教壇に立っている人たちもいっぱいいるようだ。
いずれにしても、教科書、教科書かな。正直言って・・・それはないでしょうってのが増えてきた。総説論文もしかり。
またいろんなプロジェクトを想像していかないといけない。
本当は原著論文を書き続けたい(研究し続けたい)、が、この時期に生きている以上、セラピストの教育に脳の知識の必要性を説く啓蒙のために、本を書かないといけないと思っている。
メールをチェックした。
現代思想の栗原さんから新たな企画構想を聞く。その企画も未来の社会、子供のためにだ。
平ちゃんからも、基礎系部会とは同時期に開催された神経部会のⅢstep会議の動向を聞かせてもらった。ひとつの理論として、エーデルマンの神経細胞集団選択理論が重要な概念となって取り上げられていたようだ。脳の多様性と選択性を考える意味でも意義深いがそのほかの内容を聞くと閉口してしまうのもあった。アメリカ的である。なんでも入れるという。インターナショナルな仕事をする(取り戻す)こともこれからの自分のテーマになるのかな・・・いずれにしても、もう1回、自分自身に越境しないといけないと思っている。40歳までには少し時間が足りなくなってきた。
明日は小倉ですよね?