素晴らしいライブであった。
お世辞ではなく、本当にそう思えた。何年ぶりだろう、声を上げて泣いたのは。悲しみでも、寂しさでも、恐怖でもない、涙。美しいものを見たときにひとりでに流れ出る感情のしずく。彼らのライブはとても美しかった。
RENTRER EN SOI〈THE WAR OF MEGIDDO~自己回帰 最終章~〉
砂月(Voice)・匠(Guitar)・瞬(Guitar)・遼(Bass)・未架(Drums)の5人からなるロック・バンド、RENTRER EN SOIの解散ライブ。忘れもしない2008年9月17日午前0時。OFFICIAL SITEに突如現れた「大切なお知らせ」の文字。RENTRER EN SOIの世界が、終わってしまう……。
だが、不思議なもので、その日からこの日までの約3ヶ月間、解散という実感はまったく沸かなかった。25日の朝になってもまだ。会場に着いてもまだ。ホール内へ入ってもまだ。しかし、ライブが始まった瞬間。その時がきたと感じた。現実を受け入れなければ、と強く思った。メンバーのあまりにもまっすぐな姿。
「LAST SCENE」。イントロの瞬のギターの美しさに息を飲んだ。静かに歌い出す砂月の透き通った声。「JUST MAD PAIN」で、目の前が見えなくなるほど、勢いよく噴き出すスモーク。白い煙から視界が開け、確かにステージに存在している5人のメンバーの姿が映る。
本当にこれはRENTRER EN SOIだろうか。今までとは明らかに違う。いつだかの匠の言葉を思い出す。“25日のライブは「作品」を作る気持ちもある”。この日のためだけの音響、照明、演出。そう、彼らは決して妥協しない男たちだった。最高のライブを見せる。5人がどれだけの気持ちで“解散”という決断を下したのか。それは彼ら自身の姿が物語っていた。全てを出し切れる今だからこそ、全力で、魂を込めて。ひしひしと伝わってくる、その想い。
“自己回帰 最終章へようこそ”
砂月が物語のページをめくる。音が、世界が、溢れていく。ホール入口付近までぎっしり人で埋まった会場。ステージに押し寄せる波は序盤からすさまじいものだった。
未架の力強いドラムから始まる「DAMNATION」では演奏が終わっても歌い続ける砂月がいた。“貴方を…貴方を…離れたくはないのに…”全身を使い、顔を歪ませながらも叫ぶ。もしかしたら、彼もわたしたちと同じ気持ちなのかもしれない。悲しくて寂しくて、どうしようもないのかもしれない。
「太陽の届かない場所」では左胸にマイクを当て、鼓動を、生きている証を刻みつける。このバンドの鼓動もあとわずかで止まってしまう……。ふとそんな考えがよぎってしまう。「神話」では、時折客席からすすり泣く声が聞こえてくる。無情な時に思えた。しかし「MUDER INTENT」では、その涙さえ振り払わなければならないほどの激しさで攻め立てられる。また、本編ラストの「分裂LE+DD人格」では、砂月が客席へとダイブ。なかなかステージへ戻れなくなってしまい、そのまま歌い続けるというカオスっぷりを見せつけた。
こうしてみると、改めてRENTRER EN SOIの楽曲の振り幅の広さに感心してしまう。静と動、希望と絶望、MICHAELとSATAN。2つの極面を描くことで見えてくる世界。だんだんと彼らの伝えたいことが明らかになっていく。
砂月が豹柄のスーツで登場したアンコールでは(アンコール2・3ではメンバー全員バンドTシャツに)、「精神死13度目」を筆頭にとことん暴れさせる。「苺オブラート」ではメンバーが遼コールを始め、客席にも浸透。インストアイベントでは照れていた彼だが、沸き起こる歓声の中、ばっちりお立ち台でベースソロをキメてくれた。フロント陣はステージを端から端まで動き回り、会場を煽る。
“盛り上がらなかったら途中でやめるから”
そんなギリギリの発言に、オーディエンスも“負けていられない”というように、全力でぶつかっていく。
また、OFFICIAL SITEで募っていた楽曲投票からは「水夢見る蝶々」と「into the sky」を披露。RENTRER EN SOIによるRentrer en Soiの再現。砂月の背中に羽が生えてゆく。ギター陣のユニゾンが絡み合う。ただその音に体を預けたくなるような心地よい空間が生まれていた。
“頭振ったら何言おうとしてたか忘れちゃったよ!でもみんなに言いたいことがある。ありがとう。…頭振って最後に残ったのは感謝の言葉だったってね(笑)”
“これから辛いことがあったとしても、RENTRER EN SOIが歩んできた7年半という軌跡は、絶対に消えないから思い出して”
“綺麗事じゃなくて、本当に…目を閉じればみんなの姿が浮かんで、自分がどういう言葉で、どういう姿勢でライブに向かっていけばいいかが見えたんだ”
砂月は、いつものように一言ひとことを考えながら丁寧に話していた。まるで諭すように、そして自分に言い聞かせるように。
“生まれ変わってまた会おう。約束しよう”
最後のアンコール。シャウト曲が流行っていた当時に、自分たちらしさを出すため作ったという「波紋伝う眩暈」を存分に聴かせ、ラストは、誰もがこの曲だろうと予想したに違いない「STAY GOLD」。とてもやさしい歌だった。黄金色のまばゆい照明。コーラス部をいつまでも歌うオーディエンス。それを愛おしそうに見つめる匠、瞬、遼、未架。このまま時が止まってしまえばいい。本当にそう思った。砂月が両手を広げる姿が、まるでここにいる人すべてを抱きしめているように見える。……なんて美しいのだろう。“バンド”と“ファン”を超えた“人”と“人”の絆。これがRENTRER EN SOIの求めていた、愛という名の“光”なのかもしれない。
“「自己回帰」の物語は完結しました”
そう言って、深々と頭を下げる5人がいた。未架が口元を震わせ泣いている。匠と瞬が互いを激励するように熱い抱擁を交わす。放心したようにドラムライザーの前に座り込んでしまった砂月に遼が優しく声をかける。そして、すべてを成し遂げた5人には、いつまでもいつまでもあたたかい拍手が贈られていた。
聖なる夜に刻まれた永遠の物語、RENTRER EN SOI。またいつか、彼らと一緒にその物語をなぞる日まで、そっと胸の奥にしまっておこう。砂月のくれた“約束”という言葉とともに――
ほんとうに心からありがとう
お世辞ではなく、本当にそう思えた。何年ぶりだろう、声を上げて泣いたのは。悲しみでも、寂しさでも、恐怖でもない、涙。美しいものを見たときにひとりでに流れ出る感情のしずく。彼らのライブはとても美しかった。
RENTRER EN SOI〈THE WAR OF MEGIDDO~自己回帰 最終章~〉
砂月(Voice)・匠(Guitar)・瞬(Guitar)・遼(Bass)・未架(Drums)の5人からなるロック・バンド、RENTRER EN SOIの解散ライブ。忘れもしない2008年9月17日午前0時。OFFICIAL SITEに突如現れた「大切なお知らせ」の文字。RENTRER EN SOIの世界が、終わってしまう……。
だが、不思議なもので、その日からこの日までの約3ヶ月間、解散という実感はまったく沸かなかった。25日の朝になってもまだ。会場に着いてもまだ。ホール内へ入ってもまだ。しかし、ライブが始まった瞬間。その時がきたと感じた。現実を受け入れなければ、と強く思った。メンバーのあまりにもまっすぐな姿。
「LAST SCENE」。イントロの瞬のギターの美しさに息を飲んだ。静かに歌い出す砂月の透き通った声。「JUST MAD PAIN」で、目の前が見えなくなるほど、勢いよく噴き出すスモーク。白い煙から視界が開け、確かにステージに存在している5人のメンバーの姿が映る。
本当にこれはRENTRER EN SOIだろうか。今までとは明らかに違う。いつだかの匠の言葉を思い出す。“25日のライブは「作品」を作る気持ちもある”。この日のためだけの音響、照明、演出。そう、彼らは決して妥協しない男たちだった。最高のライブを見せる。5人がどれだけの気持ちで“解散”という決断を下したのか。それは彼ら自身の姿が物語っていた。全てを出し切れる今だからこそ、全力で、魂を込めて。ひしひしと伝わってくる、その想い。
“自己回帰 最終章へようこそ”
砂月が物語のページをめくる。音が、世界が、溢れていく。ホール入口付近までぎっしり人で埋まった会場。ステージに押し寄せる波は序盤からすさまじいものだった。
未架の力強いドラムから始まる「DAMNATION」では演奏が終わっても歌い続ける砂月がいた。“貴方を…貴方を…離れたくはないのに…”全身を使い、顔を歪ませながらも叫ぶ。もしかしたら、彼もわたしたちと同じ気持ちなのかもしれない。悲しくて寂しくて、どうしようもないのかもしれない。
「太陽の届かない場所」では左胸にマイクを当て、鼓動を、生きている証を刻みつける。このバンドの鼓動もあとわずかで止まってしまう……。ふとそんな考えがよぎってしまう。「神話」では、時折客席からすすり泣く声が聞こえてくる。無情な時に思えた。しかし「MUDER INTENT」では、その涙さえ振り払わなければならないほどの激しさで攻め立てられる。また、本編ラストの「分裂LE+DD人格」では、砂月が客席へとダイブ。なかなかステージへ戻れなくなってしまい、そのまま歌い続けるというカオスっぷりを見せつけた。
こうしてみると、改めてRENTRER EN SOIの楽曲の振り幅の広さに感心してしまう。静と動、希望と絶望、MICHAELとSATAN。2つの極面を描くことで見えてくる世界。だんだんと彼らの伝えたいことが明らかになっていく。
砂月が豹柄のスーツで登場したアンコールでは(アンコール2・3ではメンバー全員バンドTシャツに)、「精神死13度目」を筆頭にとことん暴れさせる。「苺オブラート」ではメンバーが遼コールを始め、客席にも浸透。インストアイベントでは照れていた彼だが、沸き起こる歓声の中、ばっちりお立ち台でベースソロをキメてくれた。フロント陣はステージを端から端まで動き回り、会場を煽る。
“盛り上がらなかったら途中でやめるから”
そんなギリギリの発言に、オーディエンスも“負けていられない”というように、全力でぶつかっていく。
また、OFFICIAL SITEで募っていた楽曲投票からは「水夢見る蝶々」と「into the sky」を披露。RENTRER EN SOIによるRentrer en Soiの再現。砂月の背中に羽が生えてゆく。ギター陣のユニゾンが絡み合う。ただその音に体を預けたくなるような心地よい空間が生まれていた。
“頭振ったら何言おうとしてたか忘れちゃったよ!でもみんなに言いたいことがある。ありがとう。…頭振って最後に残ったのは感謝の言葉だったってね(笑)”
“これから辛いことがあったとしても、RENTRER EN SOIが歩んできた7年半という軌跡は、絶対に消えないから思い出して”
“綺麗事じゃなくて、本当に…目を閉じればみんなの姿が浮かんで、自分がどういう言葉で、どういう姿勢でライブに向かっていけばいいかが見えたんだ”
砂月は、いつものように一言ひとことを考えながら丁寧に話していた。まるで諭すように、そして自分に言い聞かせるように。
“生まれ変わってまた会おう。約束しよう”
最後のアンコール。シャウト曲が流行っていた当時に、自分たちらしさを出すため作ったという「波紋伝う眩暈」を存分に聴かせ、ラストは、誰もがこの曲だろうと予想したに違いない「STAY GOLD」。とてもやさしい歌だった。黄金色のまばゆい照明。コーラス部をいつまでも歌うオーディエンス。それを愛おしそうに見つめる匠、瞬、遼、未架。このまま時が止まってしまえばいい。本当にそう思った。砂月が両手を広げる姿が、まるでここにいる人すべてを抱きしめているように見える。……なんて美しいのだろう。“バンド”と“ファン”を超えた“人”と“人”の絆。これがRENTRER EN SOIの求めていた、愛という名の“光”なのかもしれない。
“「自己回帰」の物語は完結しました”
そう言って、深々と頭を下げる5人がいた。未架が口元を震わせ泣いている。匠と瞬が互いを激励するように熱い抱擁を交わす。放心したようにドラムライザーの前に座り込んでしまった砂月に遼が優しく声をかける。そして、すべてを成し遂げた5人には、いつまでもいつまでもあたたかい拍手が贈られていた。
聖なる夜に刻まれた永遠の物語、RENTRER EN SOI。またいつか、彼らと一緒にその物語をなぞる日まで、そっと胸の奥にしまっておこう。砂月のくれた“約束”という言葉とともに――
ほんとうに心からありがとう