初めて来ました、前橋市民文化会館。階段の踊り場などにステンドグラスがはまっていて、ほんのりクラシカルでした。この日の先行物販は15:00からだったんですが、15:40くらいに覗いてみたらすでに限定Tシャツ、通常Tシャツともにソールドアウトしてました(!)
ツアートラックは正面口ではなく搬入口のほうに停まっており、気がついた人はあまりいなかったかもしれません。わたしもたまたま、ごはん屋さん方面へ行く途中に見つけたという。
ロビーで入場案内をしていたスタッフさんが「ディル アンド グレイまもなく開演します! チケットをお持ちの方は~」と案内していて、ファンの笑いを誘っていました。途中で気がついて「DIR EN GREY」と言い直していましたが、まだまだ一般層には知られていないのか(笑)。
以下、演出ネタバレ等ありますのでご注意を。
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ステージはトラスが組まれたシンプルなセット。青いスポットライトに照らされていました。座席は人の頭がかぶらないくらい傾斜がつけられていて、見やすかったです。
18:05ごろ暗転。初めて聴く厳かなSE(今回のツアーから?)とともに楽器陣が登場。
「咀嚼」のイントロが演奏される中、京さんが登場。軽い素材の黒い羽織に、同じく黒いサルエルパンツ(?)でした。帽子はなしで髪色は白金に見えました。遠目からではピンク色は確認できず。
そして歌い出してびっくり。風邪なのか花粉症なのか酷使しすぎなのかは謎ですが、かなり喉の状態が悪い。歌に関しては、これまでのライブでワーストに入るかも…。最初の音は出るものの、次の音がかすれてしまってなかなか声にならない。もちろん高音が出るはずもなく、苦しそうに地声でなんとか通す。「咀嚼」だけで二度ほど給水。ラストまで持つのか?と観ているほうが不安になるほどで、好調のときを100%とすると、30~40%ぐらいというところでしょうか。
「咀嚼」、そして2曲めの「Un deux」は白基調のライティングで映像なし。
「Cause of fickleness」で、70'sアメリカっぽいネオンランプの映像+赤い照明。京さんはお立ち台で腰を左右にくねらせダンス。ちょっとここでほっとしたというか、会場が沸いた気がします。
赤紫色の照明で怪しげに始まったのは「鱗」。イントロからAメロに向かってなめらかに加速していくShinyaさんのドラムがカッコいい。バックには時々ぬめっとした謎の物体のCG映像が投影されました。薫さん&Dieさんの同時ギターソロはライトのみでシンプルな演出。“シャンデリア~”のサビではフロアでヘドバンが起こり、徐々にヒートアップ。
「Midwife」は赤いムービングライトが天井に放たれ、まるでそこから血が滴っているよう。京さんはシャウトのほうが声が出ているかも。Dieさんが淡々と弾く、引っ掻くようなギターフレーズがフックになっていました。
「滴る朦朧」は青とグリーンのライト2色使い。京さんは、アウトロでアドリブを入れ、INWARD SCREAMに流れ込む。真っ赤な照明に照らされながら、「聴こえるか? …聴こえるか?」とつぶやくように問いかけていました。あえてだろうと思うけれど、声がでない現状とリンクしていてドキッとした一場面。
「禍夜想」は前回のツアーでも使用されていた、黒地に色鮮やかな花々が咲く映像。それに黄色いライト→終盤ではさまざまな色に変わり極彩色なステージ。薫さんが下手端で前へ歩み出ていました。
そしてDieさんのピッキングがすごくきれいに見えた「懐春」。たしか原曲者がDieさんですよね。ブルージーなギターソロもキマっていて、そのあとの京さんのシャウトの気迫も異常でした。音源では“ああ~”とメロディをつむぐパートですが、思い切りシャウトしながら床に転がる。ギターと歌のみになるところもいい意味で緊迫。演奏が終わると同時に、マイクをゴツッとお立ち台に落としたたずむ京さん。
そのままガリッ、ガリッとお立ち台の金網にマイクヘッドを擦りつけ、苦しそうな吐息をもらす。ここで追い打ちをかけるように「輪郭」のイントロが始まります。サビがファルセットのため、「こんな喉の状態で京さんは歌えるのか?」と誰もが思ったことでしょう…。でも、それも一瞬のことで拳で観客はエールを送ります。なんだか背筋を伸ばして聴いてしまいました。サビは黄金色の照明で照らされ、フロアもこの日一番明るくなりました。青い星々が爆ぜるような映像も投影され、Dieさんが空を仰ぎながら力強いカッティングを響かせる。
“MINERVA”とつぶやく部分も本当に声が痛々しいほどにかすれかすれ。自分の胸を叩く京さん。その直後にシャウトし、自分の頭を悔しげに叩き、金色のライトが当たった瞬間ーーいつもは「降りてきた」というように感じるのですが、この日はなにかを「呼んだ」ように見えました。切羽詰まっているけれど、なんとかしたい、伝えたいという想いがすごい。俺に力を貸してくれと言わんばかりの姿で、なんだかグッときました。
ドク、ドク、という心音のようなSEが鳴るなか、Toshiyaさんが腕を広げたり胸を叩いたりして会場を煽る。「Phenomenon」では地を這うようなベースを響かせます。薫さんのメインフレーズは少したどたどしかったです。運指がややこしいのかも。対するDieさんのギターはエフェクトがかかっているのもあって音源に忠実な感じでした。青基調のライティングで、映像はモノクロの近代的な建物と階段がメイン。音源だと無機質さが際立つ曲ですが、ライブだとまた違って聴こえました。
「Behind a vacant image」では上手、下手それぞれの壁にオーロラ色の模様が浮かびあがり、天井は水面がゆらめいているような色合いに。序盤とくらべると、京さんはだいぶ声は出るのようになってきたものの、やはりつらそうでした。
「いけるか! いけるか!?」という煽りから「Chain repulsion」へ。観客一丸となって拳を突き上げる。トンネルを走り抜ける映像、馬と人の影絵、あと電車も映し出されていたように思います。書き出してみるとカオス…。薫さんとDieさんはそれぞれ、下手、上手の花道へ。Toshiyaさんも上手へ移動。
「The Inferno」は直訳すると「地獄」ですが、映像は雲に覆われた青みがかった退廃的な城?都市?でした。ここでも京さんが「いけるか?」と煽る。弦楽器陣が参加うする終盤の野太いコーラス部分はやはり盛り上がりますね。
Toshiyaさんがベースを持ち替えたので、次はなんだろう?と思ったら、アンコールで披露かなとふんでいた「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」がここできました。Dieさんが下手の花道へ向かい、薫さんとToshiyaさんは向き合って弾き、熱を撒き散らし本編終了。
アンコールはDieさんにスポットライトが当たり、懐かしいリフが! と言ってもわたしは途中までわからず、“ゆらゆらゆらゆら~”の歌詞で「腐海」だ!と気づいたクチなんですけどね。歌メロ、歌詞は「かすみ」カップリングのオリジナルバージョンでした。とはいえ、やはりキツそうな歌い方だったので、ほかの会場で万全な状態で披露されるとを祈ります。演出は緑色の照明。
Toshiyaさんがマイクスタンドを目の前に配置し、「RED SOIL」。京さんは胸を叩いて煽る。
「もっとお前らの声聴かせてくれ!」と叫んだ「SUSTAIN THE UNTRUTH」で、京さんはずっと着ていた羽織を脱ぎ上半身裸に。そして、上手、下手、それぞれの花道へ行き観客熱狂。「Revelation of mankind」は無修正MVが映し出されました。まばゆい白のストロボがたかれ、会場のテンションが上がる。声が出ない京さんをフォローするようにファンの合唱が響きます。
「生きてるか? 生きてんのか? お前! 後ろ! 生きてるか! そこ!そこ! 生きてるか!? (センターを指さし)あ゛あ゛~! 男!男!男!男―! …女!女ー!」
「今日ちょっと俺、喉死んでるけど…(バンバンと左胸を強く叩きつつ)ここは死んでねえから!」
お決まりのラスト!という煽りはなく、「…いけるか? 死ぬ気でかかってこい!!」という叫びから「羅刹国」になだれ込む。曲中も「かかってこい!」と叫ぶ京さん。私たち観客サイドも無我夢中だったと思います。歌い終えた京さんは床にごろりと転がるようにして倒れる。
でもすぐに起き上がり、お立ち台の上で左胸を叩いたり、何度か頭上で大きく拍手をしたり。そして深々と礼を二度ほどしてステージを去っていきました。
ほかのメンバーはピックやタオルを投げていたのですが、薫さんが上手花道のほうへ走っていって、壁の影に一度隠れてからひょこっと姿を現してピック投げしていたのが微笑ましかったです。
ボロボロではあったけれど、やれるところまでやりきるという精神が見えたライブではありました。数年前だったら京さんはあからさまに自分に怒りをぶつけて、ステージ上のメンバーも観客もピリピリして悪循環になっていたと思うんです。でも、今日の楽器陣は動揺せず、いつも通りのライブをしよう、パフォーマンスでフォローしよう、というように見えました。京さん自身も、ごめんとは言わずとも、自分の喉の状態のことを直接ファンに伝えるという行動に出ていて本当に驚きました。それによって、観客もほっとしたのは確かですし、言葉は悪いですが、100%本領発揮できなかったDIR EN GREYを許すことができた。
こういうのを丸くなったというのかもしれないけれど、ある意味強い信頼関係が築けている証でもあるのかなと思いました。翌週の仙台公演では完全復活していることを祈ります。
【SET LIST】
SE.
01.咀嚼
02.Un duex
03.Cause of fickleness
04.鱗
05.Midwife
06.滴る朦朧
INWARD SCREAM
07.禍夜想
08.懐春
09.輪郭
10.Phenomenon
11.Behind a vacant image
12.Chain repulsion
13.The Inferno
14.激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
ーENー
15.腐海
16.RED SOIL
17.SUSTAIN THE UNTRUTH
18.Revelation of mankind
19.羅刹国(2011Ver.)