あのアニエス・ヴァルダが、まだ映画を創っていたなんて、信じられない思いで岩波ホールに出かけました!
「アニエスの浜辺」は、今年81歳になったヴァルダの人生のドキュメンタリーでした。
私が初めてアニエス・ヴァルダの作品を観たのは「幸福」でした。
1964年の作品で、身勝手な夫の行為が原因で、水死する妻と、その原因になった愛人が、あっという間に再婚して、また幸福な日常を送っていく・・・簡単にいうとそういうストーリーなわけです。
淡々と流れていく日常と残酷さを越えた映像の美しさ、ヨーロッパの秋の森の黄色一色の圧倒的な美しさが、すべてを包み込んで癒してしまったような映画でした。
もっと深い意味はあるのでしょうが、ともかく美しいのです。感動した作品でしたが、それは当時のことで、私も年を重ね、時代も変わると、当時の感動とは質も変わってくるものです・・・・
私は、ひとよりも遅い青春をヌーヴェル・ヴァーグで過ごしてきたのです。あの頃のフランス映画はほとんど観ている。
アラン・レネやトリュフォー、ゴダール・・・
その頃、映像関係の学校に勤めていたこともあって、古典からヌーヴェル・ヴァーグまで、よく観ましたが、アニエス・ヴァルダは特別です。その風貌も好きなんです~(笑)
81歳の現在も、その風貌は変わっていなかった。丸顔で、お茶目な少女のような・・・
数年前にも「落穂拾い」というドキュメンタリーを観た時は、正直おどろきました。老いた自分を堂々と入れ込んでいたのです。
収穫の終わった畑に、売れ残ったジャガイモを拾う人々・・・物をひろって暮らしている人を軸に時代と自分もドキュメントしていた。自身もよく物を拾うのです。
額縁や、アンチックな鏡や・・・それらを愛しむ手は、シミとしわだらけの老女の手なのですが、実に美しいと思った。
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それは彼女の意識が、バリバリに高揚していて、美しいからじゃないかしら~って思えた。
「アニエスの浜辺」では、エイズで亡くなった夫への万感の思いも映し出される・・・(夫のジャック・ドゥミは「シェルブールの雨傘」の監督です。)
私は、万感の思いでアニエス・ヴァルダを観る・・・アニエスの浜辺に、私の青春もコラージュされていく・・・・
カトリーヌ・ドヌープが・・・ミッシェル・ピコリが・・・アヌーク・エーメが・・・ピエール・バルーが・・・・
アニエス・ヴァルダの人生が私の青春と重なってくる・・・・実に!岩波ホールは、そういう世代のため息と優しさに満ちていた・・・(笑)
「想い出が、ハエのように私の周りを飛び回る・・・」とアニエスがいう・・・ホント、笑ってしまう!!
充足している人のことばは、あたたかく幸福な気持ちになる・・・あと3回くらいは観に行くのかな・・・