その昔「ロシュフォールの恋人たち」という映画があった。
「シェルブールの雨傘」で全編、台詞も唄という実験を行ったジャック・ドゥミが、感情の昂ぶりと共に台詞が唄に、芝居が踊りに転ずるというミュージカルの黄金律に立ち返ったフランス製ミュージカル映画である。
私の先輩が頻繁にヨーロッパに出かけていて、シェルブールに行ってきたという話から、「シェルブールの雨傘」が話題に上り、実は同じ監督で「ロシュフォールの恋人たち」というのがあると伝えたら、「じゃあ次はロシュフォールに行ってくるわ」となって、過日本当にロシュフォールに行ったよう。
奥様の急病で急遽帰国したようなのだが、そちらで入手したパンフレットを送ってくださった。
80近くになる年齢だが、実に行動的で元気な先輩だ。
時々奢ってもらっていて、ご馳走になるばかり。
奥様の体調が気がかりだ。
映画は、ジョージ・チャキリスたちがトラックに乗ってやって来て車ごと運ぶ渡し船に乗り込む。
長旅だったらしく彼等は車から降りて背伸びをすると、それが静かなダンスへと転じ、キャスティング・クレジットが表示されていくというオープニングなのだが、この出だしだけでこの映画のもつ雰囲気が伝わってくる。
感情の高ぶりと共に台詞が唄に、芝居が踊りに転ずるというミュージカルの王道が展開されるというもので、いやあ懐かしいなあ。