「イニシェリン島の精霊」
監督 マーティン・マクドナー
出演 コリン・ファレル ブレンダン・グリーソン ケリー・コンドン
バリー・キオガン ゲイリー・ライドン パット・ショート
ストーリー
1923年、アイルランドの孤島“イニシェリン島”。
島の向こうの本土では依然として内戦が繰り広げられていた時代である。
島民全員が顔見知りののどかな島で、純朴な男パードリックと音楽家で飲み仲間のコルムは、長年友情を育んできた親友同士。
ところがある日、パードリックはコルムから一方的に絶縁を宣言されてしまう。
理由もわからず激しく動揺するパードリック。
諦めきれないパードリックに対してコルムは「これ以上話をしようとすれば自分の左指1本を切り落とす」と突拍子もない宣言をした。
一方でパードリックは友人ドミニクを父親の暴力から救うために家に泊める優しさを見せたのだが、しかしドミニクの父親の逆鱗に触れて暴力を受けてしまう。
そこで助け舟を出してくれたのはあのコルムだった。
2人の関係が修復するかに思われたが、コルムはパードリックのしつこい行動に嫌気が差していた。
そしてついにコルムは左指を一本切断し、パードリックの家に投げつけた。
パードリックは島を離れる妹の荷物運びを手伝った帰りに左手の指を全て失ったコルムと出会う。
家に投げつけられた指をパードリックの友人ともいえるロバのジェニーが誤飲し亡くなってしまっていたので、パードリックはコルムを叱責する。
さらに明日の2時に家を燃やすと宣言し、翌日コルムの家は跡形もなくなっていた。
寸評
イニシェリン島は終始薄暗く見えない壁に包囲された孤島である。
海を隔てた本土では内戦が繰り広げられていて砲弾の音が聞こえてくる。
そんな危険な向こう側には行きたくないというのが普通の人間の気持ちだと思うが、この閉ざされた世界にだけ留まることの方がよっぽど恐ろしいのだと感じさせる。
パードリックの妹シボーンは島を離れるが、外の世界は素晴らしいと告げてくる。
今の状況に安住しているのではなく、常に進歩を目指し変革を求めることで新たな世界を発見できる。
イニシェリン島は我々の社会そのものなのだ。
不毛な人間のやりとりは愉快だが、描かれる内容はショッキングだ。
パードリックは親友のように付き合っていたコルムからある日絶縁を言い渡される。
何かのことが原因で疎遠になってしまうことは我々の周りでも起き得ることであろう。
パードリックはその原因をコルムから説明されても理解できない。
コルムがパードリックを拒絶するために取る方法は現実離れしているが、すさまじいものである。
それほどまでに拒絶するのかと思っていれば、パードリックがドミニクの父親の警官から暴力を受ければ助け舟を出してやっている。
パードリックがドミニクを父親の暴力から救ってやるのは、いじめっ子に救いの手を差し伸べる優しさの様なものだ。
人はそのような優しい一面を持っているが、内に秘めた悪魔的な感情も有している。
コルムとパードリックの間に起きていることを見て、僕は現実の家庭で起きていることを思い浮かべていた。
夫婦の一方は心の内では離婚を望んでいるが、慰謝料やら離婚後の経済的なことを考えて我慢して関係を維持している状況だ。
他方は相手が秘かに離婚を望んでいることを夢にも思っていないし、その原因が何かを全く気付いていない。
表面上は仲の良さを装いながら過ごしている夫婦は随分といると思う。
ロバのジェニーが死んだことで、今度はパードリックがコルムを憎むようになる。
二人の関係が最悪となることが決定的なのだが、それでも友情は続いているということを思わせるラストは余りにも人間の愚かさを著していて、ある意味でのブラック・ジョークとなっている。
僕はこの映画を、「あるよなあ・・・このような気持ちと関係・・・」と思いながら見続けていた。
いやはや、人間関係は複雑で不思議なものでもある。
監督 マーティン・マクドナー
出演 コリン・ファレル ブレンダン・グリーソン ケリー・コンドン
バリー・キオガン ゲイリー・ライドン パット・ショート
ストーリー
1923年、アイルランドの孤島“イニシェリン島”。
島の向こうの本土では依然として内戦が繰り広げられていた時代である。
島民全員が顔見知りののどかな島で、純朴な男パードリックと音楽家で飲み仲間のコルムは、長年友情を育んできた親友同士。
ところがある日、パードリックはコルムから一方的に絶縁を宣言されてしまう。
理由もわからず激しく動揺するパードリック。
諦めきれないパードリックに対してコルムは「これ以上話をしようとすれば自分の左指1本を切り落とす」と突拍子もない宣言をした。
一方でパードリックは友人ドミニクを父親の暴力から救うために家に泊める優しさを見せたのだが、しかしドミニクの父親の逆鱗に触れて暴力を受けてしまう。
そこで助け舟を出してくれたのはあのコルムだった。
2人の関係が修復するかに思われたが、コルムはパードリックのしつこい行動に嫌気が差していた。
そしてついにコルムは左指を一本切断し、パードリックの家に投げつけた。
パードリックは島を離れる妹の荷物運びを手伝った帰りに左手の指を全て失ったコルムと出会う。
家に投げつけられた指をパードリックの友人ともいえるロバのジェニーが誤飲し亡くなってしまっていたので、パードリックはコルムを叱責する。
さらに明日の2時に家を燃やすと宣言し、翌日コルムの家は跡形もなくなっていた。
寸評
イニシェリン島は終始薄暗く見えない壁に包囲された孤島である。
海を隔てた本土では内戦が繰り広げられていて砲弾の音が聞こえてくる。
そんな危険な向こう側には行きたくないというのが普通の人間の気持ちだと思うが、この閉ざされた世界にだけ留まることの方がよっぽど恐ろしいのだと感じさせる。
パードリックの妹シボーンは島を離れるが、外の世界は素晴らしいと告げてくる。
今の状況に安住しているのではなく、常に進歩を目指し変革を求めることで新たな世界を発見できる。
イニシェリン島は我々の社会そのものなのだ。
不毛な人間のやりとりは愉快だが、描かれる内容はショッキングだ。
パードリックは親友のように付き合っていたコルムからある日絶縁を言い渡される。
何かのことが原因で疎遠になってしまうことは我々の周りでも起き得ることであろう。
パードリックはその原因をコルムから説明されても理解できない。
コルムがパードリックを拒絶するために取る方法は現実離れしているが、すさまじいものである。
それほどまでに拒絶するのかと思っていれば、パードリックがドミニクの父親の警官から暴力を受ければ助け舟を出してやっている。
パードリックがドミニクを父親の暴力から救ってやるのは、いじめっ子に救いの手を差し伸べる優しさの様なものだ。
人はそのような優しい一面を持っているが、内に秘めた悪魔的な感情も有している。
コルムとパードリックの間に起きていることを見て、僕は現実の家庭で起きていることを思い浮かべていた。
夫婦の一方は心の内では離婚を望んでいるが、慰謝料やら離婚後の経済的なことを考えて我慢して関係を維持している状況だ。
他方は相手が秘かに離婚を望んでいることを夢にも思っていないし、その原因が何かを全く気付いていない。
表面上は仲の良さを装いながら過ごしている夫婦は随分といると思う。
ロバのジェニーが死んだことで、今度はパードリックがコルムを憎むようになる。
二人の関係が最悪となることが決定的なのだが、それでも友情は続いているということを思わせるラストは余りにも人間の愚かさを著していて、ある意味でのブラック・ジョークとなっている。
僕はこの映画を、「あるよなあ・・・このような気持ちと関係・・・」と思いながら見続けていた。
いやはや、人間関係は複雑で不思議なものでもある。