大同市の南東85キロ、広霊県苑西庄村の井戸は、次々と枯れていました。1997年の時点で水が出るのは4本で、合計バケツ100杯。その水を、住民150人と家畜で分け合っているのです。隣村までもらい水に通うこともありました。
見るに見かねて井戸掘りに協力しました。幸い、水は出ましたが、深さ176メートル。コップで回し飲みしながら、村の長老が「こんなきれいな水は見たことも飲んだこともない」と大泣きし、 . . . 本文を読む
黄土高原にある大同市では「一年に一度風が吹く」と言います。風がないのではなくその逆で、春先に吹き始め、翌春まで続く。要するに年中、風が強いのです。特に春がひどい。
前年の10月以降は雨も雪もなく、大地はカラカラです。春の耕作で砕かれた土が風に煽られて舞い上がります。渦をまきながら迫ってくるのが見えると、あわてて背を向け、目をつぶってしゃがみこみます。口のなかはザラザラ。
運転手が急ブレーキを . . . 本文を読む
「ダーダオリーベン、ダーダオリーベン……」と節をつけて歌いながら、数人の男の子が私の後を追っていたそうです。中国語で「打倒日本!」。時折、小石を拾って投げるまねをする。緑化協力を始めた92年の秋、大同の農村でのことですが、私は気づきませんでした。最近になって地元の青年から聞かされたのですが、彼もその悪童の一人だったのかもしれません。
行く村行く村で「日本軍以来の外国人だ」と言われました。それは . . . 本文を読む
14年間の活動で大同市の農村と協力して植えた苗木は計1600万本、面積は4600ヘクタール。日本から訪れたボランティアは2千人を超え、なかには5回10回のリピーターもいます。専門家の参加によって技術改善や人材育成なども進めました。
日本だけでなく、中国からも多数の見学と視察があり、「日本人と中国人でどうしてこんな関係ができたんだ?」とびっくりされます。そして必ず聞かれます。「どういう思いで黄土 . . . 本文を読む
「日本と中国」=(社)日中友好協会機関紙=では年末年始、「黄土高原レポート」は休載です。あいだが空きますので、2005年の年末、朝日新聞オピニオン面に3週間連載したコラム「高見邦雄の黄土高原の村から」を号外として掲載します。写真はこのたびつけるものです。
山西省大同市は、北京から西に300キロ弱。高速道路を使えば3時間ほどの、黄土高原の東北のはずれにあります。
小さなNGO「緑の地球ネット . . . 本文を読む