『なぜ私達は未来をこれほど不安に感じるのか?』
数千年に一度の経済と歴史の話
帯 資本主義の変わり目に割りを食ってしまう世代のために。
著者 松村嘉浩
要約
セミナー No1-2
先年社会現象ともなった進撃の巨人を題材に取り上げ、世界の人口動静を論じています。
例えば、スーパーコンピュータを使うことに寄って、明日の天気や台風の進路を予測することは可能になりました。しかし明日の日経平均株価や円ドル相場を予測することはどんなスーパーコンピュータを使おうが不可能です。ましてや10年後20年後の未来予測などというものはほとんど無意味なのです。
しかしたったひとつだけ10年後20年後の予測が可能なものがあります。それは人口動静。20年後の30歳の人口は少なくとも予測可能です。と言うのも20年後の30歳は現在10歳のはずですから、現在10歳の人口より絶対多くなることはありません。
そして少子化が進み危機的状況だと言われている日本を始めとした先進国のみならず、じつは発展途上国も出生率が2を切る国が続出していると言う事実。←これは意外でした。
その理由の一つを教育のコストとリターンに求めています。早い話が昔農業が基盤産業だった日本では高い教育を受けた質の高い労働力よりも低い教育でもいいから労働力量が必要とされたのです。それがIT化が猛烈なスピードで進む現代では質の低い労働力はあまり必要とされなくなり、高コストの教育を受けたものだけが高い給与を得るように労働環境が変わってきているのです。
これが産業革命の時は蒸気機関車が生まれて馬車の御者は失業しましたが、その代わりに工場労働者という新しい職場が生まれました。ところが高度にデジタル化された現在では一部の人間が機械を操り生産をフルオート化された工場や海外の低賃金の工場などで生産を行うシステムができてしまっています。
アメリカではジョブレス・リカバリーといって景気が回復しても雇用が回復しないと言う事態が起きています。また所得の中央値が下がっていると言う事実←つまり中間層がなくなり一部のスーパーリッチと低所得層の二分化が起きているということ、があります。
簡単な話、以前なら 社長になれなくても その企業で働くホワイトカラーになればそこそこの豊かさが約束されましたが、社長になれなければ派遣社員でしかないという現実では、子供を産んで育てるということがあまりにもリスキーで投機的です。
普通の親は 自分の子供に平凡で幸せな人生を望みますが、それがかなわない社会が徐々に現れてきているというわけなのです。
セミナーNo3
古典経済学や松下幸之助を例に上げ、昔はもののない時代でありもののあるのが幸せ、安くて良い物を水道水のように作れば世の中が幸せになる(松下幸之助さんの水道理論)古典経済学のセイの法則では 供給が需要を生む つまりものがない時代は物さえあれば売れていく。
ところが冷蔵庫や洗濯機が行き渡ってしまったら、いくら安くていい冷蔵庫が出たからといって2台3台と要らないわけですよね。
実はアメリカの90年台の空前の好況や日本の高度経済成長期からバブルに至る好景気は人口ボーナス期といって老齢年齢層が少なく(日本の場合は特に戦争で多くが無くなった)ベビーブーマーの人口の多いそうが壮年期を迎えて大きな消費行動を行うことで生み出されてきたのです。しかしその時期を過ぎものを十分に持ってしまった老齢年齢層が主力になってくると話は違うのです。
セミナーNo4
いよいよ本題に入ってきますなぜヨーロッパが世界の覇権を握ったかに言及されています。その昔世界の後進地域で辺境であったヨーロッパが(これは歴史ををちょっとかじったものには常識ですが)豊かなアジアを目指した、その際いろいろな民族がそれぞれ国を作り群雄割拠状態であったヨーロッパは、略奪侵略を常識とし軍事技術だけは抜きん出ていた。(もしそうでないと自分たちの町を焼かれすべてを失ってしまうのが常態であったから)そして他地域を侵略することで富を手にしたヨーロッパが次々に自分たちを“中核”とするシステムに世界を組み込んでいった、というのが16世紀以降の世界の歴史のおおまかな流れです。
その中で覇権を握りヘゲモニー国家となったのが
オランダ→イギリス→アメリカ なわけです
そしてそれらのヘゲモニー国家はアジアやアフリカ南アメリカなどをわざと低開発化することによって繁栄してきました。ところがここに至ってついにその繁栄にも陰りが見えてきました。どんどん成長し発展するのが当たり前というのは人類の歴史でここ数百年の特殊な状況でそれはいつまでも続かないのです、セミナーNo5へ
セミナーNo5
ここ数百年で人口が爆発的に増えた技術の進歩と爆発的経済発展とこれは表裏一体の関係です。しかし地球が有限で資源もまた有限である以上無限の発展はありません。途上国の出生率が頭打ちなのももうその現れの一つでしょう。更に問題なのは年金です、一説には年金制度のせいで少子化が進んだということも言われています。というのも老後の心配が無から安心して独身でいられるわけです。
そしてその高齢者のニーズのためにサブプライムローンが生み出されリーマン・ショックを産んでしまった。こういった社会を変革しようとしても高齢者の方が数が多い→投票数が多い→手がつけられない。先進諸国の大量の国債発行(当然日本もそうですが)の原因も実は同じ根っこの問題です。
言い換えると 高齢者が昔と同じ生活を送りたいから借金やリスキーな金融商品が生み出されその問題の解決は先送りされている、というわけなのです。
でその解決策として 再成長 インフレターゲット などが我が国の目標になっていますがこれは極めて危険な状態なのです。日銀の黒田総裁が今行っていることは実は異常事態であると論じます。
本来民間銀行がリスクを取って儲けに走り経済を回し、中央銀行たる日銀は事あった時に民間銀行に最後の貸し手として機能し経済の守護神たるべきであるのに全く逆であるのです。
例えて言えば 民間銀行が フォワード 日銀は ゴールキーパー であるべきなのゴールを放ったらかしてフォワードの位置までキーパーが上がってしまっている状態それが現在の日本の状況なのです。
ここまででは全く救いがありませんが
あと2章あります
一読をおすすめします