享和二年の文書
【釈文】
相渡申一札之事
一、当村畦直し之儀被成度旨、村方一同、御相談有
之候所、私壱人不承知申立候所、御上より私持高御
取揚、蟄居被 仰付候段、左候得者、私只今作
配ニ差向難渋至極ニ付、何卒御免被成下候段
御願申上候様、御村方一同御願申上候、然者是迄
畦直シ不承知之所、心得違仕候段、御用捨御願
申上候、然上ハ、畦直之儀ハ不及申、以後至候而も、
何事ニよらす村並ニ相准シ申度旨奉存候、
依之、早速右両様共ニ御免被成下様、御願申上候、
為後日、一札相渡申所、仍而如件
享和二年
戌二月日
小尉村 本人 惣左衛門(印)
長百生(姓) 吉兵衛(印)
庄屋 利兵衛(印)
(奥書き)
「右之通り相違無御座候間、
連印仕り相渡申所、仍而如件」
〔 〕(見えず)
【読み下し】
相(あい)渡し申す一札(いっさつ)の事
一、当村畦直(あぜなお)しの儀(ぎ)成され度(たき)旨、村方(むらかた)一同、御相談これ有り候所(ところ)、私壱人不承知申し立て候所、御上(おかみ)より私持ち高御取り揚げ、蟄居(ちっきょ)仰せ付けられ候段(だん)、左(さ)候えば、私只今作配(さはい)に差向(さしむき)難渋至極に付き、何卒御免成し下され候段御願い申し上げ候様、御村方一同御願い申し上げ候。然(しか)れば是(これ)まで畦直し不承知の所、心得違い仕り候段、御用捨御願い申し上げ候。然る上は、畦直しの儀は申すに及ばず、以後に至り候ても、何事によらず村並(むらなみ)に相(あい)准じ申し度旨存じ奉り候。これに依り、早速右両様共に御免成し下さるる様、御願い申し上げ候。後日の為、一札相渡し申す所、仍(よ)って件(くだん)の如し。
(月日・差出略)
(奥書き)
「右の通り相違御座無く候間(あいだ)、連印(れんいん)仕り相渡し申す所、仍って件の如し」
【訳】
当村の「畦直し」をして頂きたい旨を村役人一同で御相談なされたところ、私一人が承服致しませんでした。そのため、御上(おかみ=藩)によって私の所有する田畑が没収され、蟄居(謹慎処分)が命じられました。これにより、私は差し当たっての生活の差配も出来ず、大変困窮いたしておりますゆえ、何卒御許し下さることをお願いして頂くよう、村役人一同へ御願い申し上げました。これまで「畦直し」に承服しておりませんでしたが、見当違いをお許し頂くようお願い申し上げます。かくなる上は、「畦直し」は勿論のこと、今後、全てのことについて村の皆に従いたく存じ上げます。これにより、早急に所有地没収と蟄居を共にお許し下さいますようお願い申し上げます。後日の証拠のため、証文をお渡し申しあげます。以上の通りです。
享和2(1802)年
戌2月
小尉村 本人 惣左衛門(印)
長百姓 吉兵衛(印)
庄屋 利兵衛(印)
(庄屋利兵衛と長百姓吉兵衛による奥書き)
右の通りで間違いございませんので、連判してこの証文をお渡し申し上げます。以上の通りです。
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