企業の人手不足が深刻化している。中小企業が集積する京都府久御山町では有効求人倍率(原数値)が6倍を突破、企業から悲鳴が上がる。町などは人手の確保を重要課題と位置付け、企業見学ツアーを催したり、通勤の足の便を図るためバス路線開設を働き掛けたりするなど躍起になっている。
昨年11月末、求職者ら3人が町内の金属部品メーカーを訪れた。会社役員の案内で製造や検査の現場を見学。ねじ作りを体験する時間も設けられた。
バスで地元企業を巡る「ものづくり探検バスツアー」。求職者に企業の技術力などを知ってもらおうと町が2016年度に始めた。昨年10~12月には4回実施し、計20人が参加。この日は自動車整備会社など3社が自社をPRした。
同町は、京滋バイパスと第二京阪道路が交差する交通の要衝だ。製造業を中心に1600以上の事業所があり、人口比では府内市町村で最も多い。有効求人倍率は構造的に高いが、16年12月に原数値で4・02倍、17年6月に5倍と急上昇。11月に5・73倍、12月には6・29倍に達した。府内全体の1・70倍(季節調整値では1・49倍)に比べ人手のひっ迫は際立つ。
ハローワーク宇治は、景気拡大で製造業の受注が伸び、求人が増えているためと分析。若者の製造業離れも一因と指摘する。「仕事の現場が見えにくく、若者が敬遠する傾向がある」
バスツアー先の一つ、樹脂製品加工業「京都樹脂精工」(同町佐古)は、ハローワークや新聞折り込み、フリーペーパー、求人サイトなどありとあらゆる媒体で従業員を募集している。だが、営業職は16年から応募がない。採用担当者は「有効求人倍率以上に厳しさを感じる」と話す。
電気機械器具製造業「コスモ機器」(同町下津屋)も技術職や製造職を募っているが、最近は全く応募がない。「今は残業で何とかカバーしているが、従業員が1人減れば、全く余裕がなくなる」と危機感を募らせる。
同町は府内の自治体で唯一、国に財政を依存しない地方交付税の不交付団体で、「町の発展は企業あってこそ」(信貴康孝町長)と人手不足解消に力を入れる。
バスツアーのほか、15年秋からハローワークなどと連携して毎月、会社説明会を開く。町役場を会場にしたこともある。地元企業と求職者のマッチングを支援するインターンシップ事業にも取り組み、採用につなげた。
鉄道がないため、通勤の足の確保にも動く。京都京阪バスは今春、JR片町線の松井山手駅(京田辺市)と久御山工業団地などを結ぶ新たなバス路線を設ける。開設を働き掛けた町は、大阪方面からの通勤の利便性向上に期待する。
一方、町内の企業間連携を推進するコーディネーターを務める中小企業診断士の松尾憲さん(40)は「特に小規模事業所が好景気に対応できなくなっている」と指摘し、「国全体で製造業をPRし、人材を確保できる体制が必要」と話す。
【 2018年02月05日 11時20分 】