
マンション1室を利用
「おひさまルーム」で遊ぶ子どもたちと母親(吹田市で)
吹田、豊中両市にまたがる千里ニュータウン(NT)内にある吹田市の佐竹台地区で、民間分譲マンションの1室が、連日、親子グループらの利用でにぎわっている。佐竹台地域交流室「おひさまルーム」。建設業者が昨年4月、子育て施設として活用してもらおうと同市に寄贈した。来年で街開きから50年となるNTは高齢化が進む一方、相次ぐマンション建設で若い世代の転入も増え、住民同士の交流が課題。同ルームでは、地元の市民グループも、市などと話しながら、より多くの母親らが交流できる場にしようと模索している。(斎藤剛)
■親子でワイワイ
5月下旬の平日、同ルームでは母親と3~6歳の園児計約20人が部屋の貸し出しを受けていた。借りる場合はグループで市に申し込める。利用時間は平日の午前10時~午後2時。
室内にはブロックやボールなどの遊び道具がたくさんあり、子どもたちの歓声が響く。この日は子どもが通う幼稚園が創立記念日で休みといい、主婦(41)は「ふだんも春休みなど平日に幼稚園が休みの時に使わせてもらっている。たくさんの人が集まることができ、子どもたちも楽しんでいる」と満足そうだ。
同ルームは13階建てマンションの1階の角部屋で114平方メートル。歩道に面した2方向はガラス張りで、ここから出入りができる。トイレやベビーベッドもあり、床には軟らかい素材が敷かれ、母親たちも安心して子どもたちを遊ばせ、会話を楽しんでいる。
10か月と3歳の2人の子どもを育てる母親(32)は「市内に子育て支援施設はあるが、家の近くにあるこの部屋が使えるのは助かる」と話す。
■住環境良く人気
同NTでは近年、老朽化した公営住宅を建て替える際、高層化して余剰地を売却し、民間業者がそこにマンションを建てるケースが多い。1962年9月にNTで最初に入居が始まった佐竹台では、計画的に配置された公園などの樹木の緑が多く、教育や医療施設も整い、道路も広々としているなど住環境の良さから新しくできた分譲マンションの人気は高いという。
こうしたマンションの一つを建設した「大和ハウス工業」(本社・大阪市)が1室を市に寄贈。市は昨年4月から貸し出しを行ってきたが、毎日のように予約があるという。
■ストレスも解消
しかし、貸し出しは同じ時間帯では複数のグループが借りることができないことや、1グループで月に2回までしか借りられないなどの制約もあることから、地元の住民ら約20人が「佐竹台スマイルプロジェクト」をつくり、より良い活用法を思案。昨年度は、地元自治会などと連携、同ルームで使う木製遊具を作ったほか、定期的に1週間の「ルーム開放期間」を設け、母親が個人でも参加できるようにして交流を図ってきた。
今年度は、曜日は決まっていないが週1日、午後2~5時に同ルームを開け、会員登録した親子に利用してもらい、メンバーが当番で世話をする試みを始めた。利用者からは「育児ストレスの解消になる」「子どもや親同士でつながりができる」と好評だ。
ボランティアで子どもの世話をしている坂口睦子さん(65)はNTに引っ越して来て約30年。「新しく地区に転入してきた人とも顔見知りになれる」と話す。同プロジェクト代表の水木千代美さん(43)は「住民同士のつながりを深めていくため、同ルームの活用と並行して、地域でさまざまな世代が交流できる場所をつくりたい」と考えている。
<メモ>

千里ニュータウンは、1961年に開発が始まり、面積約1160ヘクタール(吹田市791ヘクタール、豊中市369ヘクタール)。人口のピークは75年の12万9000人で、現在は約8万9000人。高齢化率(65歳以上)は75年が3.5%だったのに対し、2010年は30.2%に増え、吹田市全体の平均(19.8%)や豊中市全体の平均(21.7%)を上回る。
分譲マンションの新築で子育て世代の転入も増えており、高齢化率が若干下がる傾向にある地区もある。佐竹台地区では、07年の30.1%から10年には28.5%と下がり、逆に0~14歳世代の割合が増えている。
(2011年6月2日 読売新聞)