産経新聞4月22日(日)18時48分
【関西の議論】
春は酒席の季節。歓迎会や花見に参加した人も多いのではないだろうか。酒の席は親睦を深める機会である一方で、アルコールハラスメント(アルハラ)と呼ばれる、無理な飲酒や一気飲みなどの強要が行われ、急性アルコール中毒に陥るケースも。最悪の場合、死に至ることもあるアルハラに、ユーモアを持って対抗しようというキャンペーンが展開している。(佐々木詩)
■死亡事故も 新歓の季節、ご注意!
初々しい顔があふれる関西大学(大阪府吹田市)のキャンパス。掲示板などに貼られた山吹色のポスターにはかわいらしい動物のイラストとともに「お酒を無理に飲ませないで」の文字が。アルハラ防止を呼びかけるポスターだ。
作成したのは、薬物問題などに取り組むNPO法人「ASK」(東京都中央区)。ASKは、一気飲みが原因で死亡した学生の遺族らが平成4年に立ち上げた「イッキ飲み防止連絡協議会」(同)とともに、一気飲みやアルコールハラスメント防止のキャンペーンを展開。毎年、「好きな人にイッキコールできますか?」「飲まされて息子は死んだ」などのインパクトあるコピーが書かれた啓発ポスターを作成し、大学に提供してきた。
近年でもコンパの席で上級生に無理やり飲酒をさせられ、下級生が死亡する事件などが発生していることから、関西大学でも独自に未成年飲酒の防止や適正飲酒を訴えるビラを配るなど対策を行っている。ASKのポスターについて大学側は「インパクトがあって学生の目を引く。文言も読んでくれていると思います」とアルハラの抑止効果を期待している。
アルハラの困ったところは、飲酒を断ると場をしらけさせてしまうのではないかという懸念だ。「適度に酒が入り陽気になっている参加者の雰囲気を壊すんじゃないか」「上司に『なんだ、俺の酒が飲めないのか』などといわれると、一社員として断れない」などと、宴会開始前からもんもんと悩むことになってしまう。
■くすっと“撃退”
ASKは、この懸念の解消に目を向けた。
約10年前からその場の雰囲気をしらけさせず、笑いを交えて酒を断れるようなユーモラスなグッズを作成。思わずくすっと笑ってしまうようなだじゃれが踊るアイデアグッズは希望者に配布され、学生らの人気を呼んだ。
今年作成したのはスマートフォン向けの無料アプリ。
アプリは犬や猫の口元のイラスト画像で、キーを操作すると「イッキ飲みなんか、するわけニャー! 味わって飲みます」「もう限界だワン! これより先は遠慮しときます!」などのメッセージ音声が流れ、自分の代わりに酒を断ってくれる。スマートフォン以外の携帯電話に対応した待ち受け画像も作成した。
また、アプリと同じイラストが描かれたうちわも作成。宴席などで、自分の口元をうちわで隠すことで、「もう酒は結構です」「体質的に飲めません」というサインの代わりにすることもできる。ASK代表の今成知美さんは「今年も節電の夏が来る。会社で普段から使ってもらえば『そうか、あいつは酒が苦手か』とわかってもらえるし、アルハラ啓発にもつながる」と話す。
シンプルな中にも目を引くイラストとだじゃれのきいたキャッチコピー。グッズのデザインやキャッチコピーは、この団体を支援しているサントリーの広告を請け負う広告制作プロダクション、サン・アド(東京都港区)が担当。広告・宣伝業界に優れた人材を輩出している老舗のデザイン力はこのグッズでも光っている。
今成さんは「以前は学生向けに作成していましたが、最近は社会人からの問い合わせも増えています。ユーモアを通じて口コミでアルハラという言葉が広がっていってほしい」と話している。
うちわは限定2000枚。申し込みやアプリなどのダウンロードは同団体のホームページ(http://www.ask.or.jp/ikkialhara_campaign.html)へ。
【関西の議論】
春は酒席の季節。歓迎会や花見に参加した人も多いのではないだろうか。酒の席は親睦を深める機会である一方で、アルコールハラスメント(アルハラ)と呼ばれる、無理な飲酒や一気飲みなどの強要が行われ、急性アルコール中毒に陥るケースも。最悪の場合、死に至ることもあるアルハラに、ユーモアを持って対抗しようというキャンペーンが展開している。(佐々木詩)
■死亡事故も 新歓の季節、ご注意!
初々しい顔があふれる関西大学(大阪府吹田市)のキャンパス。掲示板などに貼られた山吹色のポスターにはかわいらしい動物のイラストとともに「お酒を無理に飲ませないで」の文字が。アルハラ防止を呼びかけるポスターだ。
作成したのは、薬物問題などに取り組むNPO法人「ASK」(東京都中央区)。ASKは、一気飲みが原因で死亡した学生の遺族らが平成4年に立ち上げた「イッキ飲み防止連絡協議会」(同)とともに、一気飲みやアルコールハラスメント防止のキャンペーンを展開。毎年、「好きな人にイッキコールできますか?」「飲まされて息子は死んだ」などのインパクトあるコピーが書かれた啓発ポスターを作成し、大学に提供してきた。
近年でもコンパの席で上級生に無理やり飲酒をさせられ、下級生が死亡する事件などが発生していることから、関西大学でも独自に未成年飲酒の防止や適正飲酒を訴えるビラを配るなど対策を行っている。ASKのポスターについて大学側は「インパクトがあって学生の目を引く。文言も読んでくれていると思います」とアルハラの抑止効果を期待している。
アルハラの困ったところは、飲酒を断ると場をしらけさせてしまうのではないかという懸念だ。「適度に酒が入り陽気になっている参加者の雰囲気を壊すんじゃないか」「上司に『なんだ、俺の酒が飲めないのか』などといわれると、一社員として断れない」などと、宴会開始前からもんもんと悩むことになってしまう。
■くすっと“撃退”
ASKは、この懸念の解消に目を向けた。
約10年前からその場の雰囲気をしらけさせず、笑いを交えて酒を断れるようなユーモラスなグッズを作成。思わずくすっと笑ってしまうようなだじゃれが踊るアイデアグッズは希望者に配布され、学生らの人気を呼んだ。
今年作成したのはスマートフォン向けの無料アプリ。
アプリは犬や猫の口元のイラスト画像で、キーを操作すると「イッキ飲みなんか、するわけニャー! 味わって飲みます」「もう限界だワン! これより先は遠慮しときます!」などのメッセージ音声が流れ、自分の代わりに酒を断ってくれる。スマートフォン以外の携帯電話に対応した待ち受け画像も作成した。
また、アプリと同じイラストが描かれたうちわも作成。宴席などで、自分の口元をうちわで隠すことで、「もう酒は結構です」「体質的に飲めません」というサインの代わりにすることもできる。ASK代表の今成知美さんは「今年も節電の夏が来る。会社で普段から使ってもらえば『そうか、あいつは酒が苦手か』とわかってもらえるし、アルハラ啓発にもつながる」と話す。
シンプルな中にも目を引くイラストとだじゃれのきいたキャッチコピー。グッズのデザインやキャッチコピーは、この団体を支援しているサントリーの広告を請け負う広告制作プロダクション、サン・アド(東京都港区)が担当。広告・宣伝業界に優れた人材を輩出している老舗のデザイン力はこのグッズでも光っている。
今成さんは「以前は学生向けに作成していましたが、最近は社会人からの問い合わせも増えています。ユーモアを通じて口コミでアルハラという言葉が広がっていってほしい」と話している。
うちわは限定2000枚。申し込みやアプリなどのダウンロードは同団体のホームページ(http://www.ask.or.jp/ikkialhara_campaign.html)へ。
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