歌人・辰巳泰子の公式ブログ

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「ザクロ」の皆さん、ありがとうございます。

2016-03-03 11:03:36 | 日常
月刊「右脳俳句ザクロ」(師系:品川良夜先生)3月号に、菊池都先生が、母生前の俳句をお取り上げくださって、過分なるお褒めの言葉に思い出など、お書き留めくださいました。
最晩年は闘病のために、ながらく句作をやめてしまっておりました。
その母が、元気になって、いままた俳句を書いているようで、感に堪えません。







都先生は、ザクロの会の指導者。
しなやかな、華やかな句をお詠みになります。
その先生が、ぎこちなく、ときにいびつな石くれのなかからこんなに見つくろってくださって、まるで、花嫁のよう。母の不器用の表現を、ユーモアと受け流してくださいます。
こんなにまでしていただいて、涙が止まりません。

母に、女性として欠けていたものは、都先生が持たれるような、また、詩歌のたしなみのありなしにかかわらない市井に、婦人が持つ、しなやかさでした。

代表、稲垣鷹人先生、母の小学校からの同級生、松木千樹先生が、ご高配くださったことは、いうまでもありません。伏して御礼申し上げます。

自分は、俳句には不慣れで、季語も知らず、うまくも詠めません。
ですが、当ブログなどにて、皆様のご活動を、これからも、ご紹介させていただきとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。

「ザクロ」には、夢がたくさん詰まっています。それに格式ばらず、現代そのものであると感じます。

都先生の、お言葉を写せば、「言葉で景色をデッサンする、そして俳句は詩の一ジャンルという、品川良夜の右脳俳句」……戦中戦後を生き抜いてみえた方々の、お知恵と意気を感じます。

いわば、昭和の流行歌、「リンゴの唄」の明るさでしょうか。
お年を召されてゆかれますのに、新陳代謝し艶めくリンゴのような、初々しさを、若い人に、読んでほしい。
いまの若い人は、すすんで縮こまってしまいます。

ザクロの皆さんから、おおらかさを学んでほしい。

そんなふうに、時代と時代とをつないでゆけたらとおもいます。


桜湯や紆余曲折を経たる婚   前原はやと

寒夕焼け二人の邪魔する静電気   鈴木杏

ほつぺたに焚火あかあか登校す   岡本とゝ女

春立つや信濃の流れ豊かなり   福島十見

初詣君の背中に手を合はす   高木暢夫

待ち伏せの白バイが追ふ雪女   土屋睦恕

百歳が百三歳の賀状読む   堀恭子

見るともなく洗面台の初鏡   白方百合女

裏庭に育ち過ぎたる蕗のたう   吉松舞九

蜜柑むく子供の頃のむき方で   辻本清女

休め田に支援住宅入居待つ   井坪千穂子

蝋梅の六輪咲いて今朝出張   菊池都

一目見て人に告げたき雪女   松木千樹

生命あるもののごとくに落ち葉舞ふ   稲垣鷹人

生涯は未完のままに冬銀河   北すばる(遺作)


ザクロの会の皆様の、ひとかたならぬご厚情に、満腔の感謝を捧げまして、3月号から引かせていただきました。
蕗のとうの句に、ほのぼのと、今年24歳になった愚息をおもいました。

皆様のご健康、ご健詠を念じあげております。


雛の日に。

辰巳泰子拝

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半歌仙(予行演習)

2016-03-01 14:36:20 | 日常
来たる4月10日、井の頭公園にて花見散策ののち、軽食を取りながら屋内で、半歌仙(十八句)を巻く会を持とうとしています。
午後2時に集合し、会の終了を午後8時半とします。
会費は一人3000円ていど。
三鷹の、雰囲気のいい居酒屋さんの個室を借りました。定員12名。
そこで、鍋を囲みながら、句作に詰めます。

超結社でおこないます。
その場の誰かと合作可。式目(ルール)があるので、一人で句を作りきろうとしないで、場のちからを借りながらのほうがよいです。
ご参加には、個別にお声かけをしておりますが、公募枠2名。
創作のお好きな方、是非、ご応募ください。
お申込みは、tatumiliveあっとまーくyahooどっとcoどっとjpまで、ご連絡をください。


辰巳は、連歌連句、未経験でした。
つきましては、連句テロの異名をとる岡本淳さんに、興業の予行演習をさせていただきました。
来月当日、宗匠の自分が、うまく捌けるよう、発句挙句、花月の定座などを経験してあったほうがいいということで、詠み順が決まりました。


●森羅万象を偏りなく詠みこむ。
●輪廻、観音開きを避ける。
●一つの季節のなかで、初春、中春、晩春の時系列を保つ。
●定座の花月は、観念、象徴の表現。
●初折の表(半歌仙では初めの六句)に、無常、宗教、恋を出さない。七句以降を裏といい、裏には出してもかまわない。
●場を詠みこむ。

これらが、大ルールだそうです。
その会なりのルールがあってもよいそうで、月鞠の会としては、流れでそうなったものを、失敗、粗相とはいわない……などを、決めました。


両吟歌仙 ばらばらりの巻 興業始末
平成二十八年三月一日零時三十分 起首
同日 三時十一分 満尾

於 よつ葉
連衆 辰巳泰子 岡本胃斎

発句春   ばらばらり降るものありて雛近し   泰子

脇春   羽根三つ残りゐる鷹の巣   胃斎

第三春   春の暮れ母の手拭ひ風にゆれ   泰子

雑   ペットボトルを透かしてみれば   胃斎
 
秋の月  らりぱっぱ弾くや残んの月の弦   泰子

秋   露霜おきて何処へゆかう   胃斎

秋   南アメリカ大陸のかたち秋落ち葉   泰子

恋   貝合はせならわたしは好きよ   泰子

恋   皇帝の刃に酒を滴らせ   胃斎

恋   冷たい太陽が沈みゆく   泰子

雑   R2‐D2 C‐3P0 何する人?   胃斎

雑   工場長の紺のジャンパー   胃斎

夏の月  大月にて降りたことなし緑陰   泰子     

雑   かくしつつかくしつつゆくゆりかもめ   泰子

冬   乾鮭の腹はかくまで空っぽで   胃斎

冬   一本足で薄ら氷を踏み   胃斎

花   花の雲ふりさけみれば青空が   泰子     

挙句春   ゆくての春のよつ葉かはゆし   胃泰



こんな感じに、まとまりました。
発句の「ばらばらり」は、移動中にひょうが降ってきたので、ばらばらり、とやりました。
挙句は、合作です。

「ここに、貝合わせを持ってくるのか、いいね!」と岡本さんがいうので、「そうなの? でもわたし、意味知らないの」「……」という、一幕も。
「海がないね。海を入れよう」
「じゃ、ゆりかもめで」
「季語じゃないかな? 夏の月のあとに、いきなり冬とかナシだよ。……季語じゃないな。使っていいよ」
「ゆりかもめでいくけど。貝合わせに、貝が入ってるから、海もあるよ」

などなども。


※旧かな遣いに統一しましたが、促音は現代かなのまま残しました。

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