日頃メディアのフィクションに取り囲まれて生きていると、人はフィクションのない世界に行って、リフレッシュしたくなるものらしい。冬もキャンプをする人が増えているようだ。
YouTubeを見ていると、ソロキャンプやブッシュクラフト、中には好んで氷点下の雪中でのテント泊や車中泊など、マニアックなアウトドアライフを愉しむ愛好者も増えているらしい。インスタネタにもなるのだろう。
老生にも、ふた昔前のことだが一度だけ、ソロキャンプの体験がある。単独泊は、後にも先にもその時だけだった。
〈南アルプス深南部〉と言われる北遠地域の山塊の、黒法師岳(2068m)西方に、たまたま標高がジャスト2000mの山がある。
古くから土地の営林職員や猟師たちから「バラ谷の頭」と呼ばれて来た山稜だが、登山者が増え誰が云い始めたのか「バラ谷山」。国土地理院が認定した山名ではない。今日ではこの名称が一般化している。
西暦2000年前日の12月31日、ミレニアムを記念し、2000mの山頂で幕営しようと登頂した。海面の高さから、1年に1ミリずつ隆起したとして200万年。深南部は比較的新しい海成山地である。悠久の時を想像するには好い環境だ。
だが一帯は熊の出没地、万一の来襲を怖れ、ラジオをかけっぱなしにして寝た。
翌朝テントの中から初日の出を拝み、新21世紀の新年を祝った。
うっすら雪と霜に覆われた山頂は予想以上に寒く、寝袋の中から顔だけ出しての横着な日の出遥拝だった。
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