道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

スティブンスン

2014年02月09日 | 随想
人様に本を推奨したり贈ったりする
柄ではないし、その資格もないが、若し少年から高齢者まで、読み手の年齢にかかわらず奨めたい一冊は?と問われたら、躊躇なく19世紀イギリスの詩人、劇作家、小説家、エッセイストで「宝島」の作者、ロバート・ルイス・スティブンスンのエッセイ集「若い人々のために」を挙げる。
 

陳腐な表現だが「珠玉のエッセイ集」とは、こういうものを指すのではないかと思っている。「宝島」と「ジキル博士とハイド氏」だけでこの作者と離れるのはどう考えても惜しい。

エッセイというと、人はモンテーニュやハズリットを先ず挙げる。私も、前者の「エセー」は聖書のごとく枕頭に置いて夜な夜なその誘眠効果?の恩恵にあずかってきたが、あまりに大部に過ぎて、気軽に持ち運びできない憾みがあった。

スティブンスンのエッセイ「若い人々のために」は、たった12篇からなる200ページそこそこの小品だが、彼独特の人生観から生まれた常識にとらわれない柔軟な発想に、幾たびとなく目から鱗の落ちる思いをした。何度読んでも飽きることがなく、また何度も読まないと、作者の考えを汲み取ることができないから、手放せない一冊になった。題名こそ「若い人々のため」になっているが、老人にこそ読む甲斐がある本と受け止めている。

私は作者が亡くなった年齢に近い年頃になって初めてこの随筆集に触れたが、以来30年、読む度に心に清新な空気が吹き込まれるのを感じる。この岩波文庫が絶版になっているのは、つくづく惜しいと思う。読者が少ないのだろう。この随筆が世に出た時には、欧米各国では絶賛で迎えられたと伝わっているが。


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