植物であれ動物であれ、双方の基本的な栄養吸収のメカニズムに微生物が関与していることは興味深い。どちらも、肥料や食物などの有機物を無機物に変える過程で、微生物(バクテリア)が大きな役割を果たしているらしい。
植物の場合は、土壌中の有機物をバクテリアが無機物に変えたものを水と共に根から吸収している。
動物の場合は消化器官が具わっており、食物は消化器官から分泌される消化酵素で消化する仕組みを備えているが、消化器官で消化できない食物繊維などは、腸内に棲息するバクテリアが働いて無機物に変換し腸壁から吸収しているらしい。動物は腸内に土壌と似た環境を具えていると言えそうだ。
バクテリアに全面依存して食物を消化していた太古の原生生物時代の名残りを今にとどめているということだろうか?
堆肥の効いたフカフカの畑の土は、健康な人の腸内を連想させる。植物と動物の消化システムの類似点を理解することは、私たちを食生活の見直しに導かずにはおかない。微生物の働きを念頭に置いた食生活が重要視されるようになって来ている。
カロリーと三大栄養素、ビタミン・ミネラル重視の栄養学は、腸内細菌への知見が欠けていた。その結果、私たちは、あまりにも機械的な栄養摂取方法に偏り過ぎている。加工食品の氾濫は、近代栄養学の負の産物である。
草食獣は草を食べているだけで動物性たんぱく質を一切摂らない。それでも馬や牛、キリンやシマウマなどの筋肉が発達しているのは、彼らの腸内に棲息する微生物が、咀嚼された草をアミノ酸に換えているからだという。
その仕組みによって、ゾウはあの巨体を草食一辺倒で賄っている。ゴリラはあの顔貌と体躯に似ず、歴とした草食獣だと聞いて俄には信じられなかった。あの筋肉隆々の体躯が、植物食だけでつくられているのは驚愕する外ない。草食獣の腸内での微生物の働く仕組みには、神秘的なものすら感じる。
私たち日本人は肉食よりも菜食の歴史が長い。それによって、白人とは腸内の微生物の構成や関与の度合いが異なっているらしい。
腸内に多様な細菌叢を培養している私たち日本人には、白人のような機械的な食事は相応しくない。
糖化菌・乳酸菌・酪酸菌の機能と作用に重きを置いた食生活、腸内で生成される栄養素を念頭においた食生活が望ましいと思う。
私たちの食生活が、医学・栄養学の分野よりも農学の分野の知見に教えられることが多いのは、日本の農業が機械的な施肥の弊害にいち早く気づき、土壌中の微生物の働きを重視するようになってからのことであるように思う。人体の健康が、腸内細菌によって保たれていることを知れば知るほど,私たちの食生活は自ずと変わって来るだろう。
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