道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

定まり文句

2024年01月09日 | 人文考察
これまで幾度も、自民党に不祥事が生じるたびに「愛想が尽きた」とか「政治改革が必要だ」との声を聞いて来た。
その後に続く言葉は誰もが皆、判で押したように「野党が頼りない」「政権の受け皿がない」の定まり文句。これで大勢は納得、思考は停止して解決は抛棄される。付和雷同とはこのことか?
「頼りない」「受け皿が無い」という発想は、明らかに議論を遮断するためのものである。政権側の発想を真に受け、それをオウムのように繰り返す選挙民。極めて奇異な図である。

顧みれば、私たち選挙民の多くは、頼れる野党、政権を担う野党をつくろうとして来なかった。共感は抱くものの、積極的に育てようとしていなかった。頼りない野党は、私たち国民の国政選挙での投票の結果である。

政権をある期間(1decade程度)担い国政を運営したことのない野党が頼りないのは当たり前である。
頼り甲斐あると見て支持されて来た自民党が驕り、国民を国会を軽視し続けた結果、今日の不祥事が発生しているのである。
驕りは個人であれ団体であれ、人間に通有の心理。政権党の驕りを抑制するには、選挙民が野党の勢力伸張に積極的に加担することしかない。責任を転嫁している限り、政治は変わらない。
受け皿をつくるのは私たち選挙民であって、天から受け皿が降りてくるものではない。受け皿が無い理由は、全て私たち選挙民に責任がある。

政権政党に対抗する野党を育てることが、健全な民主政治を実現する要諦である。政権党を支持していても、時には野党に投票する合理性が選挙民には必要だ。それは決して不道義なことではない。日和見でもない。民主主義という政体を維持する上で、野党勢力の強化すなわち与野党議席の拮抗が、絶対の要件である。常に数のバランスを見て、自在な投票行動をすることが、一票の力しかない私たち庶民が政治を良い方向に導く唯一の方法だろう。ひとつの政治理念で律して行けるほど、この世は単純ではない。変幻自在な投票行動は民主主義を守る必須の手段である。

支持政党がなくて、これまで投票に行かなかった人たちも、議席の拮抗という目標で投票所に向かうなら、投票権
を無駄にしないで政治を良い方向に導くことができる。無党派層の政治的意義は、無定見であるところに尽きる。

庶民にとって、政権党や野党の理念・主義・主張や公約よりも大切なことは、与野党議席の数が拮抗することである。二大政党が理想だが、それが難しい時は、中小野党の多数分立もやむを得ない。野党勢力の増大が優先である。ここで謂う野党とは、政権党と明確な対立軸を持つ政党である。

権力が腐敗する例は枚挙に遑ない。そうと知りながら、政権党への支持を崩さないで来たことには、それなりの理由があったはずである。其処を見直さなければいけないと思う。
政権党の不祥事に間接的に加担していたのは、主権者たる私たち国民である。1955年から今日まで、選挙民が自民党にノーを突きつけたことは、たった一回しかない。

私たち選挙民は、長く自民党の安定政権に満足し支持して来たのである。対立野党の議席を増やすために汗を流したことなど、労組関係者を除けば、選挙民の殆どになかったのが実情であろう。
安心・安全・安定を第一に、リスクをとることを嫌う選挙民の習性が、政権党から逮捕者を出した要因である。それが今日の、自民党の「政治資金問題」のである。

「野党が弱い」「野党が頼りなくて」と言う人たちは、常に強きに従く人たちである。長いものに巻かれ、事大主義に凝り固まった人たちである。社会経験を通じて、それが正しい処世術と信じ込んでいるのである。

たしかに、人は多数に従くものである。政権党と野党第一党とを比較するなら、野党は頼りないに決まっている。官僚組織の与力がほとんど無いことと、野党議員の政治的実力(そんなものは虚像だが)が未知数ということのふたつが、頼りなさの理由だろう。

民主主義は、未知の政権が選ばれる可能性で成り立っている。政権交代が行われなければ、それは真正の民主主義ではない。疑似民主主義である。

野党が頼りないのではない。自分自身が頼りなくて、強いものにべったり依存しないではいられない心情を、私たち自身が秘めているのである。頼りない野党を政権に着け、政策を実行させてみる度量忍耐が無いのである。失敗があっても、長い目で支え育てる気概が必須であろう。
始めから強固な権力に扈従する考えしかないのでは、本質的に現代中国の人民と何ら変わるところはない。そんな国には、政権交代など起きるはずも無く、政治の刷新は必ず一過性に終わる。

政党は、選挙民の強い支持があって強くも大きくもなるものである。
支持を与えもしないで(投票もしないで)頼りないの強くないのは片腹痛い。
どう考えても野党の力を弱めているのは選挙民の側に原因がある。長年長いものに巻かれる習慣で来たので、長くないものに賭けるのが怖いのだ。上記フレーズを発する人は、野党でなく自分自身が弱く頼りないことを自覚すべきだろう。
野党を強くすることを考えず、強くなった野党に乗ろうとするのは、自民党に乗っていた時と心根が変わっていないと承知すべきではないか。

政権を担ったことのない野党が脆弱なのは当然である。それを国民が強く支持し応援してこそ、政治の改革は実現する。天の恵みで野党が突然強くなることは決してない。
私たち政党員でない選挙民には、支持政党の主義主張や政見に関わらず、各議員個人の資質・識見を見て、与野党勢力が伯仲する政治風土を目標に、投票権を活用する方法が残されている。

国民の一人一人が確かな政治意識をもてば、野党は必然的に強くなる。私たちは、権力の座にある自民党に、盲目的に依拠して来た過去を反省しなければならない。生き方そのものが事大主義と前例踏襲だったのである。


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5 コメント

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Unknown (tekedon638)
2024-01-14 07:49:19
コメント有難うございます。

抗議を封じたい側の常套語は「批判ばかり」です。
批判されることばかりを仕出かしておいて
「批判ばかり」というのは明らかに議論の封殺を意図するもの。民主的なら、批判に答えるはずですが・・・
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Unknown (浜辺)
2024-01-12 11:06:50
不正を追及する抗議に対して「野党は批判ばかり…」と
返して済ませていたら野党の士気と熱意も下がってやがて何もしなくなります。
政権の不正を助長したのは他ならぬ有権者だったのは間違いないでしょうね。
返信する
Unknown (tekedon638)
2024-01-10 16:19:59
なのでしょうね。
返信する
Unknown (tekedon638)
2024-01-10 16:19:16
コメント有難うございます。

私も能登半島は数回訪れたことがありますが、車で走っていると、素人の私でも断層地形が表れていると見る場所を幾つが認めました。

原発立地は地質の強度よりも人工希薄な過疎地
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Re: (秀和)
2024-01-10 14:55:40
コメント失礼します。不正、不道徳、税金の違法な使い方や中抜きを
いくら見ても"野党がより悪い"に変換し
怒りも持てず現状維持する国民は異常だと思います。
よその国なら即政権交代でしょう。

『珠洲 (すず) 原発』を作る予定があったと知りました。
石川県珠洲地区は壊滅的被害
利権にべったりの自民党を支持し続けるなら未来は暗いです。

過去に食い止められた原発計画一覧 https://www.greenpeace.org/japan/campaigns/story/2023/08/08/59816/
白丸 (珠洲)
>沿岸部の白丸地区では、凄惨(せいさん)な光景が広がっていた=5日午後1時35分ごろ
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