海の見える喫茶店が減ったことを友人に嘆いたら、三河湾に面した、古くからある店を教えられた。三谷温泉に近い、ヨットハーバーの手前に在るその店に行ってみた。
階段上のドアを開けると、奧に続く寄木の床が歳月を物語っていた。
オイルで拭き込まれた床の店内は、3つのコーナーに分けられていた。海の見える窓に面した、8席ほどのカウンター席に腰掛けた。先客の婦人ふたり連れが、氷イチゴを食べながらお喋りを楽しんでいた。
目の前の防波堤の内側には、係留されたヨットのマストが十数本並んで見え、その先に三河湾が拡がっている。海上のふたつの島は、右手が大島、左手は小島という名らしい。
昨年山友と宮路山から五井山を歩き、一帯の土地勘が多少身についていたので、帰りは山を越え、赤坂・御油の旧東海道宿場を経て豊橋に向かうことにした。
赤坂宿は旧道に沿って平入り・連子格子の民家が建ち並び、往時を彷彿させる佇まい。宿内の神社に巨木を見つけ、思わず車を停めた。推定樹齢800年のクスノキだった。
800年前にこの木が地上に芽を出したときは鎌倉時代、北条氏の幕府と後鳥羽上皇との確執が高まっていた頃だ。動かず語らず800年、巨樹に崇敬の念を覚えるのは、今も昔と変わらない。
境内には芭蕉の句碑もあった。故郷伊賀に向かう途上、赤坂宿に至って詠んだ句という。「夏の月 御油より出でて 赤坂や」
初めて歩いて抜けた御油の松並木の旧街道は、江戸時代の東海道を偲ぶに充分な距離(約600m)が復元されていた。
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