「声美人」という言葉がある。
私の場合、ちょっと低く、くぐもったような声に、魅力を感じてしまう。
そう、若い頃の大映女優、若尾文子さんの声がその典型である。
現役だった頃、銀行に勤務する女性でまさに「声美人」の人の声を、屢々聴く機会があった。
受話器を伝ってその声が耳に届くと、身体の力が抜けるような心地がした。悩殺と言ってもよい影響力である。会話の内容は、極めて事務的なことなのだが、声に蠱惑されるのには閉口した。
声というものは男女共に、低い方が魅力はあるのだろう。性的に魅力のある声域は何ヘルツで、波形はあれこれと、科学的に解明されているはずである。
その人と直接会って話すときは,他の要素がいくつか関与してくるためか、声の特徴もさほど魅惑的に感じないのだが、電話だと声だけなので、影響力は極大になる。
声での悩殺される人間であることは変質的に思えて、そのことは固く秘し口外して来なかった。
当然ながら「声美人」に対して、「声〇〇」という婦人もいる。高い金属的な声は、私には最も苦手である。
ヒステリーの女性は感情と自律神経が緊密に連動するものらしく、一般に声が高い気味がある。当ブログ記事でご案内のとおり、老生がヒステリーの女性が苦手であるのは、彼女らが高音を発することが多いからである。
私が女性の高音を嫌いになったのには理由がある。
学生の頃の下宿先の主婦が、極めつきの高音の持ち主だった。それまで自分の生活圏で聴いたことのない超高音。音が高くて割れている。これには心底参った。
その婦人は小柄ながら若い頃はさぞやと思わせる容貌の持ち主だったが、声を発する度に、私は耳を塞ぎたくなった。
人を嫌えば必ず相手も嫌う。3人の下宿人たちの中で、私はその主婦にとって最悪の下宿人だったらしい。
嫌いな下宿人だから、成すことすること気に入らず、どうしても口喧しくなる。割れた金属音でしょっちゅう叱られていた。
悪戯っけの多い私は、彼女が叱る材料に事欠かなかったのだろう。その下宿は一年と続かなかった。この時期に、私は女性の高い声が、徹底的に嫌いになったと思う。若気の至りとはいえ、我ながら愧ずべきことである。
それにしても、世の中は多様だ。この金属音のような声を殊更好む人も居る。彼女とご主人の仲は極めて円満で、立派な息子さんと娘さんに恵まれ、幸せな家庭を築き上げていた。ご主人には、何の不足のない、むしろ魅力的な愛妻であったに違いない。
声美人と声〇〇、世の中ではあまり問題にされていないようだが、それには、聴力の個人差というものが大きく関わっているように思う。音質に対する感覚の個人差は、オーディオマニアの存在が、客観的な材料を提供してくれている。
乳児期に、B-29の爆音を聞き分ける異様な聴力をもっていたと後に親に聴かされていた私だから、声質に対して異常に敏感になったのだろう。
因みに老妻は、齢の影響もあってか朝起きた後など、男のようなダミ声を発し、愕かされることがある。低音も程々でなければいけない。電話での妻の声は、音声の波形が関係するものか、低音であるにもかかわらず、ちっとも魅惑的に聴こえない。
私はイギリスに住んで50年になります。2年前に亡くなった英国人の夫も甲高い声が嫌いで、NHKWorld
の中の番組で甲高い女性の声を聴くと急いで番組変更していました。
考えてみると日本の若い女性のタレントに甲高い声の人が多く、それが好みの男性もおおいみたいです。
ドラマなどでも英国は大人の世界なんだと思っています。
一般的に体格大きいほど低音ですから、西欧人
一般的に体格が大きいと声は太く低くなり、小さいと甲高くなるようです。
年齢のせいか、静かなことがとても大切に感じられるようになりました。
日本は高音に限らず、街中に騒音が満ちています。
昔チンドン屋さんという宣伝業がありましたが、あのようなビジネスが成立するところに、音に無神経な属性が現れています。
お葬式も、宗派によっては、喧しい音を出します。
人は綺麗な和音で送られるべきです。