紹介するまでもない写真はジャーナリストの清水潔氏である。
桶川ストーカー事件では独自の取材で犯人を通報し逮捕に繋がり、足利事件では冤罪であることを提起し犯人とされていた人物の釈放に尽力した。
調査報道の延長で警察の不正さえも摘発し、ジャーナリストとして事件報道に関して秀でていることは否定のしようがない。
しかしながら同じ事件と名の付く歴史上、戦時中の事件である南京事件をその延長上と同じ手法で調査報道すること自体に疑念を抱かざるを得ない。
更にNNNが特集したのは南京事件ではなく幕府山事件である。
つまり、実際の事件を取材する感覚でプロパガンダである南京事件を調査しても、それは単に偏った政治的主張に過ぎないのであり、朝日新聞の犯した捏造に限りなく近付きながら収斂していくのである。
番組冒頭の一次資料である陣中日誌の該当部分の朗読に『年寄りもいれば子供もいる』などは日誌を書いた当事者の主観に過ぎず、"子供"との表現は一般市民を連想させ、敢えて取り上げることは非常に不適切である。
番組内で政府見解や反論としての便衣兵等の反対意見を取り上げてはいるが、余りにもバランスを欠いた両論併記とも言える。
そもそも便衣兵は国際法違反の捕虜とはなり得ない存在であり、処刑に際して裁判すら必要ない。
更に日本軍も尼港事件の経験から当時捕虜となることは死を意味する感覚が浸透していたと言える。
このように現代の犯罪と戦時中の行為を同列に扱うこと自体ナンセンスであり、南京事件に於ける清水潔氏の調査報道は敏腕記者とは程遠い、城跡を巡って感傷的になる学生とあまり変わらないレベルまで落ちるのである。