2015年6月10日天皇、皇后両陛下は戦後70年にあたり、太平洋戦争で犠牲になった6万人を超える商船や漁船の船員を慰霊するため、神奈川県横須賀市の観音崎公園の「戦没船員の碑」を訪れ、第45回戦没・殉職船員追悼式に臨席されました。
「戦後70年の節目となる本年、祖国の未来を信じて蒼海深く散った船員の方々のみ霊の御前で、恒久の平和と海上交通の安全への誓いを新たにする」という安倍首相の追悼の辞も代読されましたが日本の民間船舶にはいたたまれない思いになる歴史がありました。
太平洋戦争が始まり商船は 陸軍徴用 海軍徴用 民間船舶運営の三つに区分され
商船や漁船等に乗っていた海員の戦死者は6万人以上に達しました。
軍艦以外の商船関係3500隻、漁船、機帆船3600隻が6万人の海員とともに失われました。
太平洋戦争の戦死率は陸軍20%、海軍17%に対し一般船員の死亡率は43%
さらに20歳以下が三分の一の2万人を超え軍人の死者も30万の痛ましいものでした。
南方各地が激戦の中心となっていく中で、満蒙などに温存されていた陸軍の精鋭部隊は、輸送船で占領各地に輸送されてました。船と運命をともにした6万余人の戦没船員と併せ軍人の戦没は30万人を超えたと推計されます。
わが国の商船を中心とする輸送船団が崩壊していった背景と要因として、米国は、勝利への道が日本の海上輸送路を破壊することだと考え、
日本海軍は、日露戦争以来、伝統としてきた大艦巨砲主義の艦隊決戦を作戦の中心にし、輸送船の護衛には殆ど目を向けていなかったことが挙げられます。
また米国潜水艦の攻撃戦法に「狼群作戦」と呼ばれるものがあり、数隻の潜水艦が同時に船団を襲撃するというものです。
先ず護衛艦を標的にし、これを撃沈し船団の行動が乱れて輸送船がバラバラになった後、敵潜は次々に無防備の輸送船を攻撃し撃沈するという戦法で、ミッドウェー海戦の敗北で、制海・制空権を敵に奪われ、無残にもわが国輸送船団は敵潜の思うがままに次々と撃沈されていったのです。
また半ばからは、空母や奪還された南方基地から発進する敵航空機によって、商船はもとより機帆船や漁船が攻撃され、撃沈されていったのです。
今年に入って民間船員を予備自衛官とする防衛省の計画に全日本海員組合が事実上の徴用であるとし批判する以下の記事が掲載されました。
--------------------------------------------
《毎日新聞》2016.1.29
民間船員を予備自衛官とし、有事の際に活用する防衛省の計画に対し、全国の船員で作る労組の全日本海員組合が29日、東京都内で記者会見し、「事実上の徴用で断じて許されない」とする声明を発表した。防衛省は「強制はしない」としているが、現場の声を代弁する組合が「見えない圧力がかかる」と批判の声を上げた。
防衛省は、日本の南西地域での有事を想定し九州・沖縄の防衛を強化する「南西シフト」を進める。だが、武器や隊員を危険地域に運ぶ船も操船者も足りない。同省は今年度中にも民間フェリー2隻を選定し、平時はフェリーだが有事の際には防衛省が使う仕組みを作る。今年10月にも民間船の有事運航が可能となる。一方、操船者が足りないため、民間船員21人を海上自衛隊の予備自衛官とする費用を来年度政府予算案に盛り込み、有事で操船させる方針。
---------------------------------
この組合の反応は2014年に防衛省が尖閣諸島を含む南西諸島の有事の際、自衛隊員を戦闘地域まで運ぶために民間フェリーの船員を予備自衛官とし、現地まで運航させる方向で防衛省が検討を始め、2社から高速のフェリー2隻を借りる契約を結んだ事に端を発します。
乗組員については、有事や平時の演習など年間数十日の運用で現役自衛官を専従させられないとの判断から、自衛官OBの予備自衛官や、あらかじめ予備自衛官に仕立てた民間船員を充てることを検討しはじめたのですが、背景には海自出身の予備自衛官不足があるようなのです。
2012年度の予備自衛官約3万2000人の大半は陸自出身者で、海自出身者は682人。現役海自隊員で艦船に乗り組むのは3分の1程度で、
船に乗れる予備自衛官は限られるのです。
しかも、海自出身の予備自衛官は新任を退任が上回り、毎年約50人ずつ減少し、自衛隊の艦船と民間のフェリーでは操船技術が大きく異なることもあり、2隻の運航に必要な乗組員約80人を自衛隊OBでまかなうのは難しいという問題があります。しかしながら、同省防衛政策課は、「予備自衛官になるかどうかを決めるのは船員本人で、強制できない」と強調したものの今回の事態となったのです。
天皇皇后両陛下臨席での追悼。
国防を思考する国。
2度と繰り返してはならない民間。
互いに戦争を放棄し同じ方向を向くべき両者が国防の観点からぶつかり合う矛盾。
民間を守るために民間が犠牲になるかもしれない国と自身を守るために国防を放棄する民間。
米太平洋軍のハリー・ハリス司令官は中国の船舶が領海侵入を繰り返している沖縄県・尖閣諸島にも触れ、「中国に攻撃されれば、我々は尖閣を明確に守る」と明言しました。
これは中国への牽制と見るべきであり、日本国民への危機意識の啓発ともとれるのですが、彼に
米軍を動かす権限はないでしょうし、尖閣の為に米国が中国と戦う可能性は極めて低いでしょう。
また米国のシンクタンクのランド研究所が尖閣地域で中・日の偶発的な衝突が全面軍事行動に駆け上がる場合を想定した「ウォーゲーム」の分析を行った結果、4~5日後に、日本の海上自衛隊が大きな被害を受けて敗退すると分析しています。
愛国心の欠落と国防を米軍の抑止力に依存し過ぎた国民は戦争を拒絶するあまり国防を思考することすら拒絶する。
その国民は今回の予備自衛官すら徴兵制復活の布石であるとして安倍政権を批判し警戒する。
それはまるでアナフィラキシーのように過敏過ぎる反応を示すのです。
「戦後70年の節目となる本年、祖国の未来を信じて蒼海深く散った船員の方々のみ霊の御前で、恒久の平和と海上交通の安全への誓いを新たにする」という安倍首相の追悼の辞も代読されましたが日本の民間船舶にはいたたまれない思いになる歴史がありました。
太平洋戦争が始まり商船は 陸軍徴用 海軍徴用 民間船舶運営の三つに区分され
商船や漁船等に乗っていた海員の戦死者は6万人以上に達しました。
軍艦以外の商船関係3500隻、漁船、機帆船3600隻が6万人の海員とともに失われました。
太平洋戦争の戦死率は陸軍20%、海軍17%に対し一般船員の死亡率は43%
さらに20歳以下が三分の一の2万人を超え軍人の死者も30万の痛ましいものでした。
南方各地が激戦の中心となっていく中で、満蒙などに温存されていた陸軍の精鋭部隊は、輸送船で占領各地に輸送されてました。船と運命をともにした6万余人の戦没船員と併せ軍人の戦没は30万人を超えたと推計されます。
わが国の商船を中心とする輸送船団が崩壊していった背景と要因として、米国は、勝利への道が日本の海上輸送路を破壊することだと考え、
日本海軍は、日露戦争以来、伝統としてきた大艦巨砲主義の艦隊決戦を作戦の中心にし、輸送船の護衛には殆ど目を向けていなかったことが挙げられます。
また米国潜水艦の攻撃戦法に「狼群作戦」と呼ばれるものがあり、数隻の潜水艦が同時に船団を襲撃するというものです。
先ず護衛艦を標的にし、これを撃沈し船団の行動が乱れて輸送船がバラバラになった後、敵潜は次々に無防備の輸送船を攻撃し撃沈するという戦法で、ミッドウェー海戦の敗北で、制海・制空権を敵に奪われ、無残にもわが国輸送船団は敵潜の思うがままに次々と撃沈されていったのです。
また半ばからは、空母や奪還された南方基地から発進する敵航空機によって、商船はもとより機帆船や漁船が攻撃され、撃沈されていったのです。
今年に入って民間船員を予備自衛官とする防衛省の計画に全日本海員組合が事実上の徴用であるとし批判する以下の記事が掲載されました。
--------------------------------------------
《毎日新聞》2016.1.29
民間船員を予備自衛官とし、有事の際に活用する防衛省の計画に対し、全国の船員で作る労組の全日本海員組合が29日、東京都内で記者会見し、「事実上の徴用で断じて許されない」とする声明を発表した。防衛省は「強制はしない」としているが、現場の声を代弁する組合が「見えない圧力がかかる」と批判の声を上げた。
防衛省は、日本の南西地域での有事を想定し九州・沖縄の防衛を強化する「南西シフト」を進める。だが、武器や隊員を危険地域に運ぶ船も操船者も足りない。同省は今年度中にも民間フェリー2隻を選定し、平時はフェリーだが有事の際には防衛省が使う仕組みを作る。今年10月にも民間船の有事運航が可能となる。一方、操船者が足りないため、民間船員21人を海上自衛隊の予備自衛官とする費用を来年度政府予算案に盛り込み、有事で操船させる方針。
---------------------------------
この組合の反応は2014年に防衛省が尖閣諸島を含む南西諸島の有事の際、自衛隊員を戦闘地域まで運ぶために民間フェリーの船員を予備自衛官とし、現地まで運航させる方向で防衛省が検討を始め、2社から高速のフェリー2隻を借りる契約を結んだ事に端を発します。
乗組員については、有事や平時の演習など年間数十日の運用で現役自衛官を専従させられないとの判断から、自衛官OBの予備自衛官や、あらかじめ予備自衛官に仕立てた民間船員を充てることを検討しはじめたのですが、背景には海自出身の予備自衛官不足があるようなのです。
2012年度の予備自衛官約3万2000人の大半は陸自出身者で、海自出身者は682人。現役海自隊員で艦船に乗り組むのは3分の1程度で、
船に乗れる予備自衛官は限られるのです。
しかも、海自出身の予備自衛官は新任を退任が上回り、毎年約50人ずつ減少し、自衛隊の艦船と民間のフェリーでは操船技術が大きく異なることもあり、2隻の運航に必要な乗組員約80人を自衛隊OBでまかなうのは難しいという問題があります。しかしながら、同省防衛政策課は、「予備自衛官になるかどうかを決めるのは船員本人で、強制できない」と強調したものの今回の事態となったのです。
天皇皇后両陛下臨席での追悼。
国防を思考する国。
2度と繰り返してはならない民間。
互いに戦争を放棄し同じ方向を向くべき両者が国防の観点からぶつかり合う矛盾。
民間を守るために民間が犠牲になるかもしれない国と自身を守るために国防を放棄する民間。
米太平洋軍のハリー・ハリス司令官は中国の船舶が領海侵入を繰り返している沖縄県・尖閣諸島にも触れ、「中国に攻撃されれば、我々は尖閣を明確に守る」と明言しました。
これは中国への牽制と見るべきであり、日本国民への危機意識の啓発ともとれるのですが、彼に
米軍を動かす権限はないでしょうし、尖閣の為に米国が中国と戦う可能性は極めて低いでしょう。
また米国のシンクタンクのランド研究所が尖閣地域で中・日の偶発的な衝突が全面軍事行動に駆け上がる場合を想定した「ウォーゲーム」の分析を行った結果、4~5日後に、日本の海上自衛隊が大きな被害を受けて敗退すると分析しています。
愛国心の欠落と国防を米軍の抑止力に依存し過ぎた国民は戦争を拒絶するあまり国防を思考することすら拒絶する。
その国民は今回の予備自衛官すら徴兵制復活の布石であるとして安倍政権を批判し警戒する。
それはまるでアナフィラキシーのように過敏過ぎる反応を示すのです。