土曜日の夕方、あたりがすっかり暗くなってからの事でした。
その晩は近くの神社のお祭りで、出かける予定にしていたので早めの夕ご飯を用意していた所に電話のベルが鳴りました。
受話器をとって名を名乗ると、見知らぬ声の主が私の名前を口にして
〇〇さんのお宅ですかと言うのです。
ええそうですが、何方でしょうと問うと
もう三十年も前になりますがオタクに遊びに行ったことのあるMですと言いました。
覚えてますか?と訊かれたけれど
はてその名前に覚えはありません。
ところが彼女は私たちが以前愛知県の某所に住んでいたことも
こちらに引っ越した事情もよく知っていました。
けれども三十年も前の電話番号をよく持っていたものです。
近くまで来たのでまだそこに住んでいらっしゃるのか知りたかったと言ってます。
私は少しも思い出さないのですがせっかくなら会って見れば思い出すかもしれないと
近所にいるならぜひお立ち寄りくださいな、と応えました。
初めは遠慮がちにしていたものの私がどうぞどうぞと言うものですから
あちらも納得して急な来訪となったわけです。
彼女はいろんなことをよく覚えていました。
蓬のお風呂が気持ちいいから入って行きな、と言われてお風呂まで入ったと言うのですが
私は全く思い出せません。
実際に会って顔を見ても尚思い出せないのです。
自分では物覚えのいい方だと思っていたのにこれは一体どう言うことでしょう。
こちらは知らないのに先方は私のことをよく知っているのです。
それはちょっと不思議な感覚でした。
彼女はお連れの方に昔の私の話をして
オノヨーコみたいでカッコよかったんですよって、言ってくれました。
それで印象に残って忘れられなかったんだそうです。
なんか知らない人に褒められてこそばゆい気持ちでしたが他人のことを想像するのは勝手です。
若い彼女には私の生き方が刺激的に思えたのかもしれません。
彼女は当時の私のお店のお客でした。
いろんなお客様と出会いましたからね。
ほとんどのお客は忘れています。
でも家にまで来てお風呂まで入ると言うからにはそれなりのお付き合いをしていたのかもしれませんが今日になっても記憶の一片も出てきません。
突然現れた、過去からの訪問者って感じですよ。
映画だったらそこから何か新しいドラマが生まれそうな雰囲気じゃ無いですか。
でもね、彼女はね、私のことをカッコよかったんです、と言った直後にまっすぐ私の方を見据えて、
でも歳とりましたねって、一言。
(T-T)
あったり前田のクラッカーよ、三十年以上の時間が積み重なっての今ですから。
これが一度きりの再会なのかそれともドラマが始まるのか、乞うご期待🌟
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