大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

シボレー・ボルトEから電気自動車の本格普及がはじまる?

2016年09月20日 | 日記

 この数か月、アメリカで電気自動車、自動運転にかんするニュースが増えており、社会の関心が高まっていることが感じられる。

 こうした中、NYT(ニューヨーク・タイムズ)に、2016年秋発売のGMのシボレー・ボルトE本格普及する電気自動車の先駆になるかもしれないという記事が出た。

 電気自動車普及の妨げになっていたのが、航続距離の短さと価格の高さ(注1)。ところがシボレー・ボルトEの航続距離は、日本よりずっと基準の厳しいEPA基準で238マイル(383キロ)、政府補助を使うと価格は3万ドル(300万円:1ドル=100円で計算)を切るとされている。シボレー・ボルトEは、大衆車の価格で、実用的な航続距離を実現したはじめての電気自動車ということになる。ちなみにこれと同等の性能、価格のものにテスラのモデル3があるが、納車は2017年後半とずっと先である(納車開始が延期されるとする予想も多い)。

 ところでGMはどのようにしてここまで生産コストを低減できたのか?

 先のNYTは、1)リチウム電池をLG化学に外注、2)オリオン工場で他車種と混流生産(ひとつのラインで複数の車種を生産)することで生産効率をアップ、といった要因を指摘している。

 実用的な電気自動車の開発、販売で、日本メーカーが後手に回りはじめたように見えるのは大変気になるところ。

 かつて日本の自動車は高品質、高生産性(低コスト)で世界的に圧倒的な優位に立っていたが、現在、欧米韓の自動車メーカーは品質で日本メーカーに追いつき、品質上の大きな優位はなくなっている

 現在、自動車産業では<自動運転>と<電気自動車>という、一世紀に一度あるかないかの非常に大きな技術革新がおきつつある。こうしたなか競争は、同じものをよりよく安く作るという生産過程の競争から、どのような技術でどのようなものを作るかという開発競争に移っている。日本企業が苦手な分野である。

 家電産業が衰退したいま、日本経済を支える少ない柱のひとつとなった自動車産業の行方が気がかりである。 

(注1) アメリカではすでに、日産リーフ、BMWのi3、VWのe-Golf、テスラのモデルSやモデルXといった電気自動車が販売されているが、それらはいずれも航続距離が短いか、価格が高いかどちらかの問題を抱えている。