大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米連邦最高裁のケネディー氏が辞職:最高裁の保守化が一気に進むか

2018年06月28日 | 日記

 2018年6月27日(水)、アメリカ連邦最高裁のケネディー氏(81歳)が辞職の意向を表明した。

 アメリカの連邦最高裁の裁判官は9人定年はなく、弾劾制度はあるものの原則として自ら辞めるか亡くなるまで職を解かれることはない(ちなみに欧米では法律で定められた一部の職を除いて、年齢差別になるとして定年制は禁止されている)。

 現在の構成は、5人が保守派、4人がリベラル派

 この中で重要な役割を果たしてきたのがケネディー氏。

 ケネディー氏は保守派でありながら、争点-とくに中絶やゲイの方々の権利-によってはリベラル派を支持するなど、最高裁の判決が保守、リベラルどちらか一方に極端に偏ることを防いできた。このように多数派にありながら、両者のバランスをとる裁判官はスイング・ボーターと呼ばれている。

 ケネディー氏の辞職をうけトランプ大統領はかわりの最高裁判官を指名し、上院でそれを承認する手続きに入る。

 問題は、ケネディー氏のかわりに保守強硬派が指名され、最高裁の判決がこれから保守に振り切れる可能性がでてきたことである(ちなみにアメリカの保守は、経済的には国家や政府の権限を極力小さくしようとする立場のことをいい、日本の保守とはまったく異なる)。

 これまでは、スイング・ボーターの裁判官が辞めると、多数派の中から新しくスイング・ボーターになる者があらわれてきた。ケネディー氏も、もともとはスイング・ボーターでなかったが、それまでスイング・ボーターを務めてきた保守派のオコーナー氏が辞職したあと、その役割をかわりに担うようになった。

 今回も同じことが起こって最高裁のバランスが保たれるのか、あるいはスイング・ボーターが登場せず、判決が保守に振り切れるようになるのか。注意してみていきたい。

(追記)

 同日、アメリカ連邦最高裁は、連邦公務員にエイジェンシー・ショップを認めない判決を下した(NYT 2018/6/27)。