ここ1年ほどの国債金利の推移 出典:財務省「国債金利情報」より作成
欧米メディアに、日本で債券危機(金利上昇による経済危機)がおこることを危惧する記事が増えている。
債券危機の原因としてよく、つぎの2つが指摘されている。ひとつは、国内の機関投資家がリスク回避のため、債券の売りを強めているというものである。景気回復や物価上昇への期待が高まれば、当然、それにみあった長期金利の上昇(債券価格の下落)が見込まれる。長期金利の上昇(債券価格の下落)による将来の損失を避けるため、国内投資家が保有する長期国債の縮小にむかうのは自然の流れと言わなければならない。日銀は、異次元緩和で国債の買い入れを増やせば、長期金利は低く抑えることができるとたかをくくっていたようにみえるが、どうもその見込みははずれそうだ。欧米メディアでは、日銀はこれから長期金利(と物価)に対するコントロールを失うだろうと予測するものが少なくない。
もうひとつは、国内投資家が国内外(とくに日米)の景気回復への確信を強め、国債を売ってリスクの高い株式や海外債券へ乗り換える動きが強まっているというものである。日銀の異次元金融緩和は、株高という大きな利益をもたらしたが、それがかえって国債売り(長期金利上昇)の原因になっているというのはなんとも皮肉である。
そして一部の欧米メディアは、日銀の異次元緩和は、実体経済を回復させる前に、長期金利を上昇させ、それによって投資抑制(景気後退)が引き起こされる可能性を指摘している。それに物価上昇が加わり、スタグフレーション(景気後退下での物価上昇)が引き起こされると予測するものもある。
1日後いまより円安になるか円高になるかという予想さえ、6割以上の確率であてられる人はいないのだから(いればすぐ億万長者になれるだろう)、私は未来予測はすべてまゆにつばをつけて見るべきものだと思っている。ただ、その国のことは、外から見た方がよくわかるというのはよくあることで、日本のバブル期に、それをバブルだと警鐘を鳴らすことができたのは欧米のメディアだけだったし、アメリカの金融バブルを早くから指摘していたのは日本など(アメリカにとっての)海外メディアだったことは覚えておく必要があるだろう。
(参考)