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メガロサウルスの特徴(後編)




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仙椎
5個の仙椎があり、癒合して1つの仙骨となっている。癒合した関節面の周辺部は骨組織が盛り上がっている。3番目と4番目の仙椎が最も強く結合している。
 メガロサウルスでは、ほとんどの仙椎(1、3、4、5)の腹側面は一様に丸い曲面をなすが、第2仙椎だけは異なり、腹側面に角張った縦の稜がある。エウストレプトスポンディルスでは、仙椎の腹側面は一様に丸いが、第4仙椎の腹側面だけに縦の稜がある。ピアトニツキサウルスでは、ほとんどの仙椎の腹側面は一様に丸いが、第3仙椎の正中には平らな帯状部分があり、第5仙椎は幅広く平坦であるという。このように基盤的テタヌラ類では、仙椎の腹側面の形状は種類によって様々である。メガロサウルス・バックランディの4個体の標本で同一の形態がみられることから、この形態は固有形質と考えられる。

肩甲烏口骨
肩甲骨と烏口骨は完全に癒合しており、縫合線は閉じている。癒合した部位は骨が盛り上がっている。このような高度の癒合は、アウカサウルスのようなアベリサウルス類にもみられるが、基盤的テタヌラ類では珍しい。ピアトニツキサウルスとスコミムスでは、肩甲骨と烏口骨は癒合していない。アロサウルス、ネオヴェナトル、アクロカントサウルスでは、肩甲骨と烏口骨は部分的に癒合しているが、縫合線ははっきりしており、骨の過形成は起きていない。
 メガロサウルスでは、肩甲骨の長さと幅の比率は約6.8である。これは他のテタヌラ類やネオケラトサウリアよりも小さく(アクロカントサウルス11.5、アロサウルス13.8、アウカサウルス8.6)、原始的な獣脚類と似ている。ディロフォサウルスは6.5、トルボサウルスは6.8である。
 肩甲骨の中ほどの背側縁に、顕著なフランジ(薄くのびた部分)がある。Walker (1964) はこれをメガロサウルス・バックランディの特徴であると述べており、実際に他のどの獣脚類にもみられないので、これはメガロサウルスの固有形質と考えられる。


系統上の位置

Benson (2010) は基盤的テタヌラ類を中心とした系統解析を行っているが、その後2012年には、さらに多くの種類について包括的な系統解析をしているので、そちらを参照するのがよいと思われる。Benson (2010)の結果では、メガロサウルス科Megalosauridae の中でエウストレプトスポンディルスが最も基盤的で、残りのメガロサウルス類と姉妹群をなした。残りのメガロサウルス類は、ドゥリアヴェナトル、アフロヴェナトル+ドゥブレウイロサウルス、メガロサウルス+トルボサウルスの3つに分かれた。つまりアフロヴェナトルとドゥブレウイロサウルス、メガロサウルスとトルボサウルスはそれぞれ姉妹群となった。

レクトタイプの歯骨については、メガロサウロイドであることを示す特徴は、先に述べたparadental grooveの形状だけであるという。
 上顎骨の貫通していないmaxillary ‘fenestra’は、メガロサウロイドの共有派生形質と考えられる。メガロサウルス科の共有派生形質としては、上腕骨の三角胸筋稜の長さが上腕骨の長さの0.52以上ある、などの形質をもつ。

「イギリス恐竜図鑑」のメガロサウルスのCGは、最も近縁なトルボサウルスを意識したものと思われた。
 メガロサウルスは、メガロサウルス類の中でもトルボサウルスと最も似ている。メガロサウルスとトルボサウルスが共有する形質として、歯間板は丈が高く、上顎骨の外側壁よりも短く終わっている(注:トルボサウルス・グルネイでは異なる);歯骨の外側面の縦の溝が浅くはっきりしない;歯冠の唇側と舌側の表面にバンド状のエナメルのしわがある、がある。また肩甲骨の長さ/幅の比率は両者とも7より小さい。

メガロサウルスは、あくまで英国を象徴する恐竜のようである。イギリス国内では、オックスフォードシャーとグロスタシャーの複数の産地で、ジュラ紀中期バソニアン前期から中期の地層から、かなり多数の化石が産出している。このことから、メガロサウルスは当時のイギリスではかなり優勢な、おそらく頂上捕食者であったと思われる。
 フランスのバソニアンの地層からもいくつか獣脚類が見つかっているが、メガロサウルス・バックランディと同定できるものは存在しない。フランス産のメガロサウルス類としてはポエキロプレウロンとドゥブレウイロサウルスがある。ほぼ同時代のイギリスでは非常に豊富に産するメガロサウルスが、フランスからは発見されないことは注目される。これはフランス産のサンプル数が少ないことによるかもしれないが、もしも実際にフランスには分布していなかったとすれば、当時のイギリスとフランスの間に何らかの物理的・環境的な障壁があったことを示唆しているのかもしれないという。


参考文献
Benson RBJ, Barrett PM, Powell HP, Norman DB. (2008). The taxonomic status of Megalosaurus bucklandii (Dinosauria, Theropoda) from the Middle Jurassic of Oxfordshire, UK. Palaeontology 51: 419-424.

Benson RBJ. (2009). An assessment of variability in theropod dinosaur remains from the Bathonian (Middle Jurassic) of Stonesfield and New Park Quarry, UK and taxonomic implications for Megalosaurus bucklandii and Iliosuchus incognitus. Palaeontology 52: 857-877.

Benson RBJ. (2010). A description of Megalosaurus bucklandii (Dinosauria: Theropoda) from the Bathonian of the UK and the relationships of Middle Jurassic theropods. Zoological Journal of the Linnean Society, 158, 882-935.
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