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古生物学会年会 at 福井県立大学/恐竜博物館


非常に密度の高い3日間でした。学会は大抵そうですが、あまりにも多くの方々とお話ししたので、誰と何を話したかは時間が経つと忘れそうですね。

全体としての目玉はやはり、既にプレスリリースされた勝山の中生代哺乳類の全身骨格化石で、さすがに感動しました。保存の良さもさることながら、プレパレーションしないでCTスキャンによる3D復元で、臼歯の咬合面を外して観察すると特徴がわかり、多丘歯類と同定されたという。そんな時代になってしまったという感じです。「どきどき発掘体験」での小学生による発見という、エピソードまでついている。
 自らパソコンは苦手と謙遜された三枝先生による、タンバティタニスの3D復元も、ソフトウェアや周辺技術の進歩が感じられた。ある程度の部分骨格が得られている標本については、今後流行る手法だろうと思いました。工程の都合で、大きな骨は分割して3Dプリンターで成形し組み合わせたが、強度的に弱いので改めてレプリカを作ったなど、陰の大変な苦労もあったようですね。このようにすると、実際の発見部位はタンバティタニス、他の大部分はプウィアンゴサウルス、足りない部分は他のティタノサウルス形類などと、色分けして示されるのでしょう。私は科博で見たイクチオヴェナトルなどの復元骨格が楽しみです。

シンポジウム「恐竜の繁殖」は、日本の研究者の精密な解析ももちろんですが、中国浙江省などの卵化石の量と多様性、標本の貴重さに圧倒されました。内容は書ききれないが、翼竜の体内の卵化石も初めてみた。卵の1個が体内、1個が体外にある化石、オヴィラプトル類では2列、3列にも並べられた巣卵、トロオドン類の古い巣の上に新たに産卵した巣卵、大きさの異なる卵が混在している例(托卵?)、カメ類の巣卵の近くにケラトプス類の骨格化石が発見された例、オヴィラプトル類の巣卵の近くのトカゲの骨格、など何でもありであった。
 獣脚類では卵殻が1層、2層、3層と進化しているが、ハドロサウルス類では1層である。しかしスペインのイグアノドン類らしい卵では2層あるなど、鳥盤類では複雑な進化をとげた可能性があるというのも興味深いことでした。
 わかりやすくまとまっていたのは、Darla Zelenisky博士のメガエロンガトゥーリスの話でした。90年代に中国河南省から違法に国外流出した卵化石が、米国コロラドの化石業者によりクリーニングされ、最終的には中国に返還された。その過程でフィリップ・カリーなどの研究者により研究され、最後には発見者、発掘地も特定された。40 cm 以上もある巨大な卵、2 mもある巣は、オヴィラプトル類のものに似ていたが、当時はその大きさから不明とされていた。後に胚の骨格の歯骨がミクロヴェナトルに似ていることや、巨大なオヴィラプトロサウルス類ギガントラプトルの発見により、ギガントラプトルと近縁の巨大なオヴィラプトロサウルス類の卵と結論された。

獣脚類的には、ポスター発表の對比地さんのカエナグナトゥス類、服部創紀さんの爬虫類足部筋の相同性、花井さんのワニ類とタルボサウルスの歯の交換様式、といった所でしょうか。服部さんの仕事は、恐竜の繁栄の鍵となる二足歩行の進化を考える上で、きわめて重要な研究と思いました。ポスターでは他にもいろいろ優れた研究がありましたが、他の学会と同じく全部は聞けないのが残念です。
 福井シリーズの中には、哺乳類の他にもスッポン類やイグアノドン類足跡化石、鳥盤類の腸骨、白亜紀鳥類の全身骨格、ワニ類などの発表がありました。イグアノドン類足跡化石は解析の結果、イグアノドン型とハドロサウルス型の2タイプがあり、もしかするとちょうどフクイサウルスとコシサウルスに対応するかもしれない、ということです。
 その他、夜間小集会の久慈の生物相、平山先生のEunotosaurusの話など印象に残ったものだけでも書ききれません。

運営事務局の方々、発表者、参加者のみなさん、とくに今回お会いした方々、いろいろとお世話になり、どうもありがとうございました。
 夏休みにはまた、特別展で福井を訪れないといけませんね。
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