美術の学芸ノート

中村彝などの美術を中心に近代日本美術、印象派などの西洋美術、美術の真贋問題、個人的なつぶやきやメモなどを記します。

川瀬巴水と日立

2023-02-13 18:19:19 | 日本美術
 2023-1-20の朝日新聞の地方版に「版画家・川瀬巴水の旅路を本に 日立拠点の愛好会」の記事が載っていた。概ね以下のような内容。

・川瀬巴水とその時代を知る会
・キリスト教大学文学部の染谷智幸教授を中心に活動
・柏市のギャラリーを営む鈴木昇氏も
・シオン学園の学内に4点の作品がある
・金郷村という作品があり、助川桂子さんら会員がモティーフの場所を特定した
・「川瀬巴水探索」(文学通信刊)という本が出版された
・会は河原子海岸、五浦海岸、平潟港を訪ね歩いた

 そう言えば、私も3~40年ほど前に日立市内のある簡易食堂で川瀬巴水の版画が店内に掛けられているのを見たことがあった。その時、店主と巴水について言葉を交わしたことがあったが、どんなことを話したかは覚えがない。

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マネの「剣を持つ少年」

2023-02-08 12:06:05 | 西洋美術

 マネの「剣を持つ少年」は、彼がスペイン絵画の強い影響を受けた作品の一点として有名である。

 この作品はメトロポリタン美術館に収蔵されているが、茨城県近代美術館には、この油彩画をもとにマネが制作したエッチングがある。「剣を持った左向きの少年」がそれである。
 
 このエッチングの画像は、油彩作品とは鏡像関係になっているので「左向き」となる。もちろん、左向きと言っても少年の顔は、油彩画同様、正面を向いている。つまり、作品を観ている人と向き合っている。または、画家とモデルという関係からは、少年はマネその人に視線を向けて対面している。
 モデルの少年は、マネの息子とも、義理の息子とも、また、義弟とも言われているが、メトロポリタン美術館ではある場合には義理の息子とも、また別の場合にはマネの息子とも表現している。
 しかし、この少年、レオン・コエラ=レーンホフは、マネのきわめて重要な作品にマネの家族の誰よりも多く登場しており、この事実はかなり興味深い。
 そうしたスペイン絵画の影響を受けたマネの作品の中でも油彩画の「剣を持つ少年」は最初期のものであり、しかもこれを元にした版画作品も多い。
 すなわち版画作品は、よく知られているものだけでも、左向きのものが第1作(最初のプレート)から第3作までの3種類があり、右向きのものが少なくとも1種類ある。
 このうち、左向きの第3作には、4つのステートがあることが確認されており、茨城県近代美術館の版画は、第3作(3番目のプレート)の第1ステートとされているものである。
 ステートとは同じプレートに画像や技法の追加・修正などが行われる場合に発生するものであり、第1作、第2作では最初のステートのみが知られている。
 なお、第1ステートの作品を「初版」と表現すると、プレートやフランス語のプランシュに「版」の意味があるので、やや紛らわしくなるかもしれない。従ってステートは、和訳しないで、そのままステートと表記されることが多い。(続く)
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