ボッチはつまらなくなると、仕事部屋にやってくる。ボッチにとってカヤは要注意対象ではなくなっているようだけど、「ゴロニャン」ができない甘えることが下手なボッチはまっすぐに「仲良くしよう」と言えないらしい。
「あっ、こっち向いてる!」
そおっと、横をすり抜けてみる。
行ったり来たりしてみるのだけど、
「なんでいつも無反応なのかしら。つまらない……」
黒犬たちの生前もボッチは、自分の水皿があるのに犬
たちの水を一緒に飲んでいたので、時々こうしてカヤ
の水皿の水を飲んではカヤの反応を見ている。
ボッチもカヤにかまってもらいたいのだ。だって自分の何倍も大きいのに何をしても怒らない黒犬たちに囲まれて、冬になればみんな一緒に布団に転がったりして、ボッチも和んでいたんだもの。私の寝る場所を確保するのも大変だった、賑やかで温かな夜を数えきれないほど過ごしてきたのだもの。
黒い塊がいない淋しさを味わってきたのはボッチも同じ。みんながいなくなった初めての冬。部屋の中はしら~っと寒々しいから、ボッチだってカヤの近くでうずくまってみたいのだよね。