チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

ドイツ・フランスの旅(3): B級グルメに星3つ

2004年12月26日 02時09分15秒 | 番外編
そう、B級グルメファミリーの我々がその日ストラスブールで予約していたのは、ミシュランの3つ星レストラン、その名も「ビュールイーゼル」(Buerehiesel) だったのです。「一生の思い出にぜひ」という妻の強い希望で実現した、分不相応な贅沢ランチです。

ビュールイーゼルは、ストラスブールの旧市街から少し外れた公園オランジェリーの中にあるレストラン。メインの部屋は、写真でもおわかりいただけるとおり(上の写真は Buerehiesel のホームページから拝借。自分で撮るのを忘れたので)、ガラス越しに公園が望めるようになっています。

いかにストラスブールとはいえ、3つ星レストランに小学生連れでディナーをしに行くのは気が引けたので、ランチにお邪魔することにしました。予めチューリヒからメールで予約を入れると、すぐにちゃんとした返事が。お子様には、子ども用コースもご用意できますとのこと。午後1時にテーブルを予約して、ホテルからタクシーで参上いたしました。

入口すぐのロビーでコートなどを預け(預かってくれるようなレストラン自体久しぶり!)、通されたテーブルは、メインの部屋の隅っこ。隅にあるほうが写真も撮りやすいし、子どものことで気を使うこともないということで、我々にはありがたい場所でした。

ご存知の通り、ストラスブールを含むアルザス地方は、歴史の経緯から、また場所的にも、ドイツ語が比較的よく通じます。多少はフランス語が話せる自分も、料理の説明をペラペラとやられてはたまったものでないので、チューリヒ在住者であることを盾に、ドイツ語が話せる人にはドイツ語を使ってもらうことにしました。若い給仕のお兄さんに、フランス語しかできない人がいましたが、後の人たちは、ソムリエも給仕の人も、ドイツ語で応対してくれました。相手に、自分の言語を使うよう(ドイツ語は「自分の」言語じゃないけど)強いるのは気が引けるものですが、今日はまぁいいでしょう、お客なんだし。

その日食べたコースは次の通り。

帆立貝の薄切り、セロリとトリュフ油のクリーム
ラビオリ、カエルの脚を焼いたもの、チャービル(香味野菜)
スズキの蒸し焼き、カキのタルタル、リースリングで煮詰めたクリーム
カモのフォアグラ、キャベツ包み、ブイヨンスープ茹で
鹿の腿肉ロースト、赤ワインソース、秋の野菜と森のきのこ、クネプル(団子)添え
チーズ(ワゴンサービス)
パイナップルをヴァニラ味で焼いた後に冷やしたもの、生姜風味、パイナップルのシャーベット、レモン味のサブレ

これで148ユーロ。フォアグラとチーズを除くこともでき、それだと126ユーロ。どうしますか、と尋ねられたので、せっかくここまで来たんだし、いいでしょう、全部いきましょうと答えました。決して決して安くはありませんが、2食分だと思えば少しは気が落ち着きます(それでも高いけど)。実際、この日は夕食などとても食べる気にはなりませんでした。

アペリティフと一緒に運ばれてきたのはこれです。鰯のカナペや春巻きなどが並んでいます。一つずつ説明されたのですが、忘れてしまいました。ちなみに、アペリティフは Muscat。


本格的な料理の一番手として出てきたのは、帆立貝の薄切りだったのですが、またやってしまいました。おおかた食べてしまってから、写真を撮っていないことに気がついた。すみません、残骸の写真です。



次は、ラビオリとカエルの脚。ここに出てきたのと同じようなものが少しずつ子ども用にも出てきたのですが、娘はカエルが気に入ったようで、親の分までパクパクと食べていました。



続いては、スズキの蒸し焼きです。上にちょこっとカキが乗っていて、贅沢な感じでした。(しかし、これがその後で妻にたたることになろうとは……。)



フォアグラは、キャベツで包んで、少しスパイスの効いたブイヨンスープで味付け。このあたりまで来ると、かなりお腹がふくれてきました。しかし、手が止まることはありません。



ワインは、ソムリエのおじさんの提案にしたがって、リースリングとピノ・ノワールをそれぞれハーフで頼んでいました。次の鹿腿肉ローストが実にピノ・ノワールとよく合って、最早満腹中枢も麻痺したようです。



子どもたちに出された「メイン」は、鶏胸肉にヌードルを付け合せたもの。子ども用とはいえ、なかなかの味だった(そうです。子どもによれば)。



この後は、ワゴンに何種類ものチーズ(「チーズ」というと、雪印プロセスチーズみたいなのを思い出しますから、「フロマージュ」と言うべきなんでしょう、やっぱり)が運ばれてきます。残念ながら写真なしですが、3種類ほど選んで、おいしくいただきました。すでに相当量を食べていながら、まだこんなものがお腹に入るということ自体、どこかおかしいような気もします。実際、B級グルメの我々には過分なご馳走です。

デザートは、パイナップルをヴァニラ味でロースト(?)してから冷やしたもの、そしてパイナップルのシャーベット。なお、料理の名前は、もらってきたメニューのフランス語を適当に訳しているので、おかしいかもしれません。



ここまで来ると、さすがにもうお腹には何も入りません。1時スタートの「昼食」が終ったのは4時近く。会計を済ませ、タクシーを呼んでもらって、ホテルへと真っ直ぐに戻りました。食事の後で、ストラスブールのクリスマス市を見物するというプランも実はあったのですが、もはやそんな気になるはずもありません。

味はもちろん、店のサービスも実に素晴らしい、さすがはミシュラン3つ星だけある、と(1回しか行ったことがないのに)納得してしまうひとときでした。ホテルに戻った我々はただただ、実に身の丈に合わない、しかし感動的なときを思い出しつつ、ベッドにひっくり返ったのです。

しかし、身の丈に合わないことはするものではありません。その夜、妻は突然気分が悪くなり、大変な目に遭いました。どうやらカキに「やられた」ようです。カモメはカモメ、B級グルメにはB級の店がお似合い、ということなのでしょうか。

懲りない我々はしかし、次の目的地コルマールで「ロジ・ド・フランス」登録、3つ竈マークのホテルに投宿したのです。おいしいレストランを併設しているホテルを示すこのしるし、果たしてどんな宿と料理に出合うのでしょうか。(続く)