乳飲み子を抱きしめしまま溺れたる若き母をみつ昼のうつつに
長谷川櫂 『震災歌集』 (2011.04)
俳人である長谷川氏が、震災の短歌を書いた。
津波にさらわれて、自分が助かろうとするときは、無我夢中に両手を開き、何かを掴もうとする。実際にあの大きな津波にさらわれて生き残った人の話を聞くと、何かにつかまって助かったと聞く。
しかし、この若い母親はそれが出来なかった。自分が何かにつかまると言うことは、乳飲み子と別れることを意味する。
むしろ、この子と別れたくない、この子を守らなければという愛が、「抱きしめしまま」溺れてしまった。
親子の愛は、すばらしい。
忘れられない歌です。