これが私の生きる道

こむずかしいことやきれいごとは
書いてありません。
読みやすさを心がけて書いています。
読んでみてください!!

川上未映子「ヘヴン」

2009年11月22日 20時09分43秒 | 読書
川上未映子は作家では今まで自分が見てきた中で
一番美形だと思います。
印象が椎名林檎とどうしてもかぶります。
でもこの小説は別にそれとダブるようなことはありませんでした。

大まかに言うと中学校の「いじめ」の話です。
物語の全編を通して陰惨ないじめのシーンが幾度となく登場します。
この部分が全く受け付けない人もいるかと思います。
自分も気持ちが暗くなりました。
いじめられたこともいじめたこともなく
このようないじめも実際に見たこともないけれど
そのシーンが手に取るように想像できました。

でも全体の流れとしては案外淡々としています。
いじめっ子たちに復讐することもないし
最後も歯がゆさを残したまま消えるように終わっていきます。
でも所々ひっかかるところが多い作品でした。
そのひっかかりに答えてくれることもないんですけど。

おそらく読者の多くの人が印象に残る登場人物は「コジマ」という、
語り手の「ぼく」と同様いじめを受けている女子生徒でしょう。
自分はこの「コジマ」には共感できなかった一人です。
離婚した父親とのしるしの為に、汚れた靴を履いて
髪を身体も洗わないということですが
それは周りからすれば不快に感じるし
学校という共用の場で迷惑を掛けるという意味では暴力的でもあります。
もちろんだからといっていじめていいというわけではありませんが
実際にいたら結構困ってしまう人ではあると思います。

印象に残ったのは「ぼく」が「コジマ」に対して
お互いいじめられている「同胞」的な気持ちから
「性愛」的な気持ちを抱くシーンです。
きわどい描写なので詳しくは書けませんが
こういう葛藤は誰にでも経験があるのではないでしょうか。
好きになることは反面、汚していくことにも通ずる側面があるのかもしれません。

筆者に文才があることに気付くのはたやすいことだと思います。
思うにこれは天性のものではないでしょうか。
ストーリーを考えることは何とかなるかもしれませんが
それを文章で表すさいにその人の雰囲気や技術が如実に現れます。
静かな文章で、救いようがない内容なのに
読み心地のいい不思議な感覚です。
次回作も期待して待ちたいと思います。

blogram投票ボタン

投票ボタン

blogram投票ボタン