ピアニスラー

ゴールド・フィンガー、ハイパー・ピアニスト矢沢朋子のブログ

『ボヴァリー夫人とパン屋』

2015年10月01日 | 文化・芸術

桜坂劇場で今週の金曜日までの映画、『ボヴァリー夫人とパン屋』をようやく観てきました

フランスで4週連続1位の映画。さすが文化国家

 

『ボヴァリー夫人とパン屋』劇場予告編

 

去年やはり桜坂劇場で観た「危険なプロット」に次いで素晴らしい 

両方ともブルーレイを買います。レンタルじゃなく持ってたい

 

『ボヴァリー夫人とパン屋』は、アタマ何分か(何秒かな?)手ぶれ映像のような感じで、映像酔いしました。演出なんでしょうが、違う方法を考えたほうがいい。ウォン・カーウォイの映画は全然・気持ち悪くならないし、トリップしてる錯覚を起こすカメラワークだから。カメラマンの問題なのかな?

 

という点を除けば、これぞフレンチというオトナの映画でした

全てにおいてフレンチ。女優はイギリス人だけど、レティシア・カスタに瓜二つの・どう見てもフランス人にしか見えないコケティッシュな女優。フランス男性の理想の女性像。そして甘~いマスクの美青年。

 

なかなか激しいラブ・シーンがありながら、『ボヴァリー夫人』と『アンナ・カレーニナ』を読んでないヒトはフランス人ではない。というフレンチ特有のスノビズムがプンプンで、楽しかったです

 

『ボヴァリー夫人』は桐朋の高校2年の時の:「文学」の授業での課題だったんですよ(笑)。先生は女子生徒の憧れのハンサム教師で、卒業生(先輩)と結婚してたはず。何か悩みでもあったんでしょかね今にして思うと。

内容はほぼ・忘れてましたが映画は楽しめました。ちなみに『アンナ・カレーニナ』も読んだことあったっけかなもう1度、両方とも読んでみないとね!

と思ったわけですが、これはきっと・フランス国策映画に違いない。こうやって民度を上げていくんですよ。エロスと教養。そしてグルメ。

 

先日・畑仲間の集まりがあって:「畑でハブに噛まれたらどうするか?」という話をしていた時に、「まず、傷口を吸って毒を出すんですよ」「でも、お尻とか背中じゃ自分で吸えない。誰かに吸ってもらわないと」とかゆったら・・

「・・(ヤザワの噛まれたお尻を吸う)それはキツいですねー・・ そうだ!道具小屋に救急用のホースを置きましょう。そうすれば傷口から毒を吸い出せる」「だから背中やお尻だったら、やっぱり自分じゃ無理だってば『吸って~ 』『それはキツいな~ 』とかゆってるうちに死んじゃう

 

という仮想設定で大笑いした後だっただけに、予告編でもある「ハチに刺されたシーン」では吹き出して大笑いしてしまいました。

ま・ヒトのお尻なんか吸わなくていいように、ちゃんと草刈りしようよハブが棲んじゃうという話し合いだったんですけどね。

 

フランス男性の理想の女性像:レティシア・カスタやブリジッド・バルドーを彷彿とさせる、ぷるぷるグラマー系なのに、お腹も出てなくてウエストもくびれているという魔性の体型。ゲイのデザイナーが創る「クール」なファッションは似合わないので、衣装は・ちょい・ダサめのワンピース。そして髪型は無造作なアップやエアリーなセミ・ロング。どうやったらこんなにぐしゅぐしゅにアップヘアが出来るのかという計算された無造作なヘアスタイル。昔の映画:「イヴォンヌの香り」を思い出しちゃった。あの主人公も:これぞフランス女!というコケットさだった。パリジェンヌとは別人種のフランス女性。

 

「セクシー」とか「クール」なアメリカ女優より、「コケット」な女性を好むという独特な民族性(笑)。日本の「カワイイ」みたいなもんかな?

 

ファッションとかオシャレというのは、決してモテるためではなく、都市住人の階層服だということが分かる。そもそもゲイでないデザイナーって誰というファッション界で、フツーの男が好む女の服を作るデザイナーがいるわけがない。こんなフツーにダサくてエロいワンピースはもう映画の衣裳でしかないのだ。まあ売ってても目にも入らないだろうから見えてないのかな?

 

「ダイエット中なの。軽いパンはない?」とパン屋の爺さんが若い女性2人ほどに聞かれるのも、伝統的なフランスの食生活も変わりつつあるんだなーというのが分かります。そうよグルテン・フリーのパンを作って

 

音楽も:オネゲルとかプーランクの延長線上にある洒脱な現代音楽で(笑)、文化の香りがやはりプンプンとして良かったです

アンサンブル・アンテル・コンタンポランのフロラン・ボファールがピアノだったのも、クレジットで観て懐かしかった

もう最初のGaumont(東映。みたいな映画配給会社のマーク)のロゴみただけで、オデオンとかオペラとかシャンゼリゼの映画館を思い出しちゃって。グッとキてしまったわ。

 

こちらはここ5年~以上の中でのマイ・ベスト

映画「危険なプロット」予告

 

『ヴェニスに死す』の美少年に匹敵します

 

原題はDans la Maison(家の中)で、なんでそれが「危険なプロット」になるの しかも公式HPでのサスペンスもどきの意味不明な宣伝文

 

これは日本語でいうコメディ(仏語の「コメディ(芝居)」ではない。芝居仕立ての演出だけど)、「喜劇」なんだけど、そういえば映画館でも静まり返っていて笑っている人がいませんでした。

フランス人て真面目な顔してギャグかますのが粋だと思ってるからね

 

この映画も民度アップの国策映画なのかというインテリ臭がプンプンで、音楽も芸術音楽(軽音楽ではない)で、エロくてサイコーでした。

 

この「エロい」というのも、とてもソフィスティケートされていて、「こんな国で育った子どもは、大人になるのが楽しみだろうな~」というもの。やっぱり国策映画だな

 

ボヴァリー夫人とパン屋(原題:Gemma Bovery。でピンとこないヤツはフランス国籍剥奪。ということかね?笑)の音楽と、この「危険なプロット」の音楽も要チェック。

 

ブーレーズ系列のアカデミックでない、プーランク系列の現代音楽も脈々とフランスでは続いているということも分かって楽しかったです。

 

ブーレーズがアメリカでいえばミルトン・バビットみたいで(ブーレーズは憤死するだろうけど:笑)、東海岸の現代音楽(ジョン・アダムス)のようなものがプーランク系列という感じかな~

 

仕事柄どうしてもアカデミック系の情報に偏りがちなので、こういう映画音楽を聞けて良かったです

 

 

 

 

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