赤いキティちゃんの自転車

昔話。
小学１年生になって、自転車を買ってくれるというので、家族で自転車屋さんへ歩いて出向いた。
田舎の、昔からある古くて暗い、広くもない店の中に、赤いキティちゃんの自転車はあった。
赤いキティちゃんの自転車はキャラクターものだからか、他の自転車より高かったようで、
「こっちにしなさい」と母親は言ったのだけれど、
「これがいい、これじゃなきゃヤダ」とか言って、買ってもらった。
キティちゃんの自転車に、補助輪はついていなかった。
まだ補助輪のない自転車には乗れなかったので、わたしは引いて帰り始めた。
乗れなかったけど、引いて歩いているだけでわたしはとてもうれしかったし、満足していた。
しかし、恐怖の大魔王（母親）が
「乗って帰れ、練習しながら乗って行け」と、言うので、しかたなく自転車に乗り、
「ちゃんと持っててよ」って頼んだのに、
「持ってる」と答えたくせに、
自転車をこいだわたしは、脇のあぜ道を落ちて田んぼの中に自転車ごと入っていた。
田植えの時期で、苗が植えてあり、赤いキティちゃんの自転車もわたしもどろどろになった。
泥だらけになったかわいいわたしの赤いキティちゃんを引いて、歩いて家まで帰った。
とってもかなしかった。
家につくと、泥にまみれた、ちょっとくすんだ雨蛙色のワンピースを着替えた。

夏の思い出 ゴーカート

小学２年か３年の夏休み（だったと思う）、従兄弟たちだったか隣に住む姉妹だったか忘れたけど、わたしを含め子ども４人と大人たちとで、遊園地みたいなところへ行き、ゴーカートに乗った。
そのゴーカートのコースは、真中に凸のレールが１本あり、それをゴーカートがまたいでいるので、ハンドル操作が右や左に行き過ぎても、道から外れることはない。
１周してきて、降りようとしたら、係のお兄さんが前の方で「ここまで来てね」と言ったので、乗った場所まで進み、そこで降りた。
ゴーカートに乗ったわたしは、とても楽しかったので（たぶんね、もうすっかり忘れちゃったけど）、もう一度、乗ることにした。
もう１周してきて、降りる位置は乗るところと同じだとわかっていたので、なんの迷いもなくそのままのスピードで進み、前のゴーカートはわたしが最初に降りようとしたところで止まったので、わたしはそこに激突した。
くちびるのあたりがあざになってはれて、１週間はその顔で過ごした。
ゴーカートから降りた後、みんなでアイスを食べたけど、そんな気分じゃなかった。
棒アイスを食べるときはいつも（当たるかも！？）とウキウキしながら食べていたけど、その時はアイスなんて食べたくないと思いながら、しかたなく食べていた。棒が見え始めて、あれ？　と思い、食べ終わってちゃんと見ると「当たり」だった。
ちっともうれしくなかった。当たりの棒はあげた。