昔、ネットはテレホーダイの時間にしていた頃、派遣で働いていた。
冬で、通勤時間は市内なのにバスと地下鉄を乗り継いで片道1時間20分くらい。
朝七時前に家を出なくてはならなくて、わたしには辛かった。でもどこの職場も、最初の三カ月くらいは新鮮でおもしろくて、早起きも苦にはならないんだけど、その後が……。
朝、バスでは座れなかったけど、地下鉄ではほとんど座れた。もう少し後の時間になるとものすごく混雑するようだった。
夜11時からテレホーダイの時間にネットを始め、2時過ぎちゃったよ、もう寝なくちゃと思いつつやめられず、4時過ぎてる、少しは寝なくちゃと思いながら、やめたいのにやめられないのって中毒なのかな、でもおもしろいんだもん……。
朝の通勤時間はわたしのまどろみの時間となった。
ある日、地下鉄に乗ると車内の広告がすべて松坂屋美術館の東山魁夷展のもので、二種類の絵で埋め尽くされていた。「白馬の森」と「緑響く」。すごく気持ちがよくなって、「ありがとう!! 松坂屋さん!!」と思った。しあわせなまどろみの時間だった。
その時の職場は、某有名大学内にある工事現場事務所のプレハブ。
今思うと、プレハブの割には大きかったと思う。二階建てで、一階は広い一室で、出入りしている下請け会社の荷物置き場兼休憩室。二階は階段登ってドアを開けると、わたしたちがいる事務所、六人分の机とファックス兼コピー機が置いてあり、台所とロッカーと、他に会議室があった。
一日一回は電気が落ちる。(たま~に落ちない日もあった。)電話かかってきて、保留にしている間に電気が落ちて、電話も切れる。わたしのせいじゃないよ~と電話の相手に念波を送る。わたし以外の人は外に出ていることが多くて、携帯も持っているので、そちらにかけて下さいということが多かったんだけれども。
外に簡易トイレが一つあって、週に一度はその掃除もしていた。最初に派遣会社の人に連れられて行った時に、お手洗いは向かいの建物のものを使ってもいいですよと言われたので(派遣会社の人に)わたしは、向かいの建物まで行っていた。
向かいの建物はそう大きくはなく、入り口を入り短い廊下の奥に階段があり、女子トイレは一階にはなく階段を上がるとすぐあった。女子トイレで一回か二回くらいは人に会った記憶はあるけど、それ以外に人を見ることはなかった。
一階の廊下には、国費留学生募集のポスターが貼ってあった。(たしか募集枠は一名。)
ある日、一階にあるドアが大きく開いていたので中に目をやると、狭い倉庫か荷物置き場のようで棚や床に雑然と、わたしにはよくわからない機器やケーブル(だったかな?)がいろいろと置かれていた。人はいなかった。
しばらくして、思い出した。あ――っ。ここは、前に雑誌で見た、プラズマの研究をしているという大気水圏科学研究所だ!! ここだ!!
わたしのプレハブの二階の席の前の窓からはその建物が真ん前に見え、たまにじーっと見つめていたのだが、ふつうの建物だった。
わたしの仕事の一つに、だいじょうぶなんだけれど一応念のためにと、毎日の核燃料保管施設への入場者名簿を作るというものがあって、核燃料保管施設ってどんな施設? どんな建物なんだろう??? と思ったけどわからなかった。工事中なのかもう出来上がっているのかもわからず、工事現場も立ち入り禁止になっているのでどこにあるのかもわたしにはわからなかった。
大学内は他にも工事をいろいろしていた時期だったのか、離れた所に他にも工事現場事務所のプレハブがあった。そこに泥棒が入ったそうで、気を付けるようにと言われた。
今思うと、犯人はきっと、そのプレハブに出入りしていた人の中にいるような気がする。
わたしの一カ月分のお給料以上のお金もあずかっていて、新聞の集金の人にお金を払ったり、仕事帰りにスーパーに買い物に行き、ついでだからいいけど時間外だよねと思いながら、コーヒーとかお茶とかお菓子とか洗剤とかを買っていた。
飲み物はコーヒーとお茶しか置いてなかったけど、冬だから風邪予防には紅茶の方がいいし、いろいろ選べると楽しいかなとわたしは思いアップルティーとかも買っておいたのだが誰も飲まないので、せっせとわたし一人が飲んでいた。なんか自分のために買ったみたいに見えるかもしれないけどちがうんだよ、と思った。
そこではコーヒー豆(挽いた粉)は冷凍庫で保管するようにということでその理由も説明され、それ以来、自宅でもコーヒー豆は冷凍庫で保管している。
ちょっとおどろいたのは、二階のドアを開けると正面の壁には絵がかかっていたのだけれど、その絵は絵画レンタルの会社と契約していて、月に一度、取り替えに来てくれることだった。
派遣会社の人に、この道がいちばん近いと思いますと教えられた駅から大学までの道は、大学の正門ではなく、裏(?)の小さな門から入る道のりで、その門からプレハブまでは畑がずっと続いていた。のどかな景色だった。冬で、そこで取れた大根だか白菜だったかをたくさん持って、留学生なのか外国人と話している人を帰りに見たことがある。
何年も前に、一緒に働いていた人が、
「うちのお嫁さんねぇ、派遣で事務に行ってたんだけど仕事がなくなって、お掃除してって言われて、掃除してるんだって」と言っていた。
いつだったか、なにで読んだのか忘れちゃったけど、こういう人がいた。
派遣で、銀行で働いています。支店長は一日中パソコンゲームで遊んでいて、社員は朝、外に出たきり帰ってこず、さぼっています。この銀行は派遣で持っているのに、そんな銀行に公的資金導入ってムカつく!!! と怒っていた。
冬で、通勤時間は市内なのにバスと地下鉄を乗り継いで片道1時間20分くらい。
朝七時前に家を出なくてはならなくて、わたしには辛かった。でもどこの職場も、最初の三カ月くらいは新鮮でおもしろくて、早起きも苦にはならないんだけど、その後が……。
朝、バスでは座れなかったけど、地下鉄ではほとんど座れた。もう少し後の時間になるとものすごく混雑するようだった。
夜11時からテレホーダイの時間にネットを始め、2時過ぎちゃったよ、もう寝なくちゃと思いつつやめられず、4時過ぎてる、少しは寝なくちゃと思いながら、やめたいのにやめられないのって中毒なのかな、でもおもしろいんだもん……。
朝の通勤時間はわたしのまどろみの時間となった。
ある日、地下鉄に乗ると車内の広告がすべて松坂屋美術館の東山魁夷展のもので、二種類の絵で埋め尽くされていた。「白馬の森」と「緑響く」。すごく気持ちがよくなって、「ありがとう!! 松坂屋さん!!」と思った。しあわせなまどろみの時間だった。
その時の職場は、某有名大学内にある工事現場事務所のプレハブ。
今思うと、プレハブの割には大きかったと思う。二階建てで、一階は広い一室で、出入りしている下請け会社の荷物置き場兼休憩室。二階は階段登ってドアを開けると、わたしたちがいる事務所、六人分の机とファックス兼コピー機が置いてあり、台所とロッカーと、他に会議室があった。
一日一回は電気が落ちる。(たま~に落ちない日もあった。)電話かかってきて、保留にしている間に電気が落ちて、電話も切れる。わたしのせいじゃないよ~と電話の相手に念波を送る。わたし以外の人は外に出ていることが多くて、携帯も持っているので、そちらにかけて下さいということが多かったんだけれども。
外に簡易トイレが一つあって、週に一度はその掃除もしていた。最初に派遣会社の人に連れられて行った時に、お手洗いは向かいの建物のものを使ってもいいですよと言われたので(派遣会社の人に)わたしは、向かいの建物まで行っていた。
向かいの建物はそう大きくはなく、入り口を入り短い廊下の奥に階段があり、女子トイレは一階にはなく階段を上がるとすぐあった。女子トイレで一回か二回くらいは人に会った記憶はあるけど、それ以外に人を見ることはなかった。
一階の廊下には、国費留学生募集のポスターが貼ってあった。(たしか募集枠は一名。)
ある日、一階にあるドアが大きく開いていたので中に目をやると、狭い倉庫か荷物置き場のようで棚や床に雑然と、わたしにはよくわからない機器やケーブル(だったかな?)がいろいろと置かれていた。人はいなかった。
しばらくして、思い出した。あ――っ。ここは、前に雑誌で見た、プラズマの研究をしているという大気水圏科学研究所だ!! ここだ!!
わたしのプレハブの二階の席の前の窓からはその建物が真ん前に見え、たまにじーっと見つめていたのだが、ふつうの建物だった。
わたしの仕事の一つに、だいじょうぶなんだけれど一応念のためにと、毎日の核燃料保管施設への入場者名簿を作るというものがあって、核燃料保管施設ってどんな施設? どんな建物なんだろう??? と思ったけどわからなかった。工事中なのかもう出来上がっているのかもわからず、工事現場も立ち入り禁止になっているのでどこにあるのかもわたしにはわからなかった。
大学内は他にも工事をいろいろしていた時期だったのか、離れた所に他にも工事現場事務所のプレハブがあった。そこに泥棒が入ったそうで、気を付けるようにと言われた。
今思うと、犯人はきっと、そのプレハブに出入りしていた人の中にいるような気がする。
わたしの一カ月分のお給料以上のお金もあずかっていて、新聞の集金の人にお金を払ったり、仕事帰りにスーパーに買い物に行き、ついでだからいいけど時間外だよねと思いながら、コーヒーとかお茶とかお菓子とか洗剤とかを買っていた。
飲み物はコーヒーとお茶しか置いてなかったけど、冬だから風邪予防には紅茶の方がいいし、いろいろ選べると楽しいかなとわたしは思いアップルティーとかも買っておいたのだが誰も飲まないので、せっせとわたし一人が飲んでいた。なんか自分のために買ったみたいに見えるかもしれないけどちがうんだよ、と思った。
そこではコーヒー豆(挽いた粉)は冷凍庫で保管するようにということでその理由も説明され、それ以来、自宅でもコーヒー豆は冷凍庫で保管している。
ちょっとおどろいたのは、二階のドアを開けると正面の壁には絵がかかっていたのだけれど、その絵は絵画レンタルの会社と契約していて、月に一度、取り替えに来てくれることだった。
派遣会社の人に、この道がいちばん近いと思いますと教えられた駅から大学までの道は、大学の正門ではなく、裏(?)の小さな門から入る道のりで、その門からプレハブまでは畑がずっと続いていた。のどかな景色だった。冬で、そこで取れた大根だか白菜だったかをたくさん持って、留学生なのか外国人と話している人を帰りに見たことがある。
何年も前に、一緒に働いていた人が、
「うちのお嫁さんねぇ、派遣で事務に行ってたんだけど仕事がなくなって、お掃除してって言われて、掃除してるんだって」と言っていた。
いつだったか、なにで読んだのか忘れちゃったけど、こういう人がいた。
派遣で、銀行で働いています。支店長は一日中パソコンゲームで遊んでいて、社員は朝、外に出たきり帰ってこず、さぼっています。この銀行は派遣で持っているのに、そんな銀行に公的資金導入ってムカつく!!! と怒っていた。